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【小説】SNSの悪夢

「ここだとプライバシーはちょっと保てませんが、それでも宜しいんですか?」顔を覗き込んで聞いてくるのは、何処かで見た記憶が有るからかも知れない。

自分が俳優として売れているとは考えていなかったが、こちらを見る表情から知っているのを感じる。

「気にしてませんよ、それよりも防犯が心配だ、男1人だからあんまり問題も起こらないだろうけど。」何気なく口から出た。

出たというよりも、吐息の様に吐いた、吐いたその言葉が力を持つ訳では無い、独り言のように浮かんで消える物だ。

「防犯としましては、窓に補助の鍵も有りますし、カメラも設置してあります、玄関も2重の鍵ですので。」気にしているのだろう、申し訳なさそうな言葉だ。

「良いですよ、きっと問題ないでしょうから、でもこの感じでこの値段高すぎません?」ケチの部分が顔を出して、不動産屋に対応する。

一瞬困った顔になって、その後平静を装っている、おいおい、顔に出て居るぞ。

「そうですねー、上に聞いてみないと、分りませんが、ここは古いですしね。」口ごもっている。

上司に聞いてみないとは本当のところなのだろう、会社は下の物に決裁権を持たさない、問題が出たら何とかしろと言うだろうけどな。

きっと安くしても良いんだろう、でも即安くしますとは言えないんだろうな、こんな対応が一番面白い。

これまで携わった仕事が無駄なく自分に格納されているのを感じて、何をするのも無駄じゃ無かったんだな、そう考えていた。

「今日は帰って、今住んでいる所を片付けます、そうだ、そっちも売りたいんですけど、それも得意ですか?」言葉に目を輝かせている、君に頼むとは言っていないのだが、期待値が大きいのだ。

「我が社はどちらの不動産でも取り扱います。」そうだろうね、知ってるけど言ってみただけだ。

それにしても、何だか不安な担当者だ、だけど面倒だから売り買いを両方頼むのも、簡単に済むかもしれないな、そう考えて答えておいた。

「また連絡します。」

「有難う御座います、連絡お待ちしています。」何だか仕事に慣れていない感じだな。

家に帰っても仕方が無いので、このマンションを見ている振りして、向かいの動きを見ていた。

昼間はそれほど人の出入りはない、マンションだからきっと近所付き合いも無いんだろうな、誰かに聞いても知らないだろうし、きっと不審者扱いになる。

長時間かけて調べていく必要が有るんだな、こんな時に探偵とかはどうやって調べているんだろう。


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