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【小説】恋の幻想

親から貰ったと言われた言葉を武器に、私はアルバイトを続けた、お金が必要だった。

学校を出て自立するためにはお金を稼ぐ必要がある、親には内緒でお金を貯める必要が有った。

ゆっくりとそれでも確実に精神を病みながら、自立を目指して生活をしていった。

そこにアルバイトの同僚で声を掛けてくれる男性が居た、男の人は信頼できない、最初はそう思っていた。

「おはよう。」「おはようございます。」仕事としての挨拶から始まった。

親しくしたいと思っては無かったのに、私たちの距離は近づいてゆく、彼も自立の為にアルバイトをしていると話してくれた。

「俺さー、高校出たら自立したいんだよな、アルバイトの金はそのための資金なんだ。」話しかけてくる。

「そうなんですね、自立したいですよね。」こちらとは違って何だか呑気な感じだ。

「ねえ、何のためにバイトしているの?親が心配したりしないの?」何度も聞かれて、話すようになった。

「家は両親とも無関心で、家を出て働かなきゃいけないんだったら、自活しようと思って。」とだけ伝える。

「家を借りたりって保証人居るの知ってる?一人だと難しいよ。」と教えてくれる。

「知ってますけど、保証会社が有るって聞いているから、大丈夫だと思います。」少しばかり知識はある。

「だけどね、大変だと思うよ、俺と一緒に住まない、俺は大学行くつもりだから、親が保証してくれるんだよ。」転がり込むつもりは無い。

大学に行くのに自立と言って、自分から見ると全然自立には見えない、親に頼ってるのに自立と言える人なのだ。

だから優しいのかな、満たされた生活を自分の権利だと思っているのは、余裕に繋がっているのかもしれない。

この人も家に居る獣と同じで、この人も自分の欲望だけを満たそうとするかもしれない。

心配が付かず離れず憑りついていた、それでもこの人は暴力的ではなさそうだ、あの人とは違っているだろう。

期待は希望に成り、希望が信頼に成っていく、根底では信じきれなくとも、大丈夫だ、大丈夫と気持ちが囁く。

「そうだ、一緒に家を出て暮らさない?家に居るのが面倒になったんだ。」ある日突然に提案。

「大学に行くんじゃ無かったんですか?」慌てて聞いてみる、親が保証人だって話だったから。

「家から通える学校に行けって言ってるんだよ、だけど遠くの大学に行きたいから、出て行ってしまえば親も納得するだろ。」お気楽な感じだ。

「ちゃんと言った方が良いと思うけど。」と言ってみる。




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