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学歴及京都コンプレックスⅠ

さて、突然であるが「学歴及京都コンプレックス」というものをご存知であろうか。その名の通り「学歴」並びに「京都」という古都に対するコンプレックスである。それを持ち合わせているのは、片田舎に限り「名門」を名乗れる国立大学に通う一学生である。

彼は、自宅から0.7km範囲内に幼稚園から高校までが存在し、そしてそれらが学歴となった。田舎にしては、その通学距離はとても恵まれている。中学では片道7kmを自転車で通う者、高校では隣市から電車で、市内であっても20km先からバスで通っている者もいた。その中で、0.7kmという通学路は非常に恵まれたものだ。しかし、それは彼の世界を非常に狭めた。田舎の帰り道、同じ方向の友人もおらず、当たり前だが通学路に寄るべきものもなかった。楽しくバスでしゃべることも、帰りの駅でスイーツを買うことも、川土手を自転車で二人乗りするなんて夢のまた夢であった。そういった楽しそうな登下校の様子をSNSで見つけては何とも切ない気持ちになるのが常であった。友人に連れ立ち遠回りをしてコンビニや本屋に寄ることはあったが、それでも帰宅しようと思えば、同じ方向に帰る友人らと別れ、彼自身は来た道を戻る羽目になるだけであった。

さて、幼稚園から高校までを近距離射程に収める彼の家は、残念なことに大学までもその圏内に収めていた。蛇足だが刑務所もその圏内であった。そんな状況下で考え付くのはただ一つ。「いい加減ここから出たい!私は県外へ行きたい!」

話の時系列を少し戻そう。

彼は、幼少期より京都へ幾度となく足を運んでいた。両親ともに京都の大学の出であったため、京都旅行が多かったのである。さらに彼自身日本史に興味を持っていたこともあり、京都の歴史的遺産や寺社仏閣を好んで回っていた。今考えれば恐ろしいほど気持ち悪い小中学生である。おとなしくジャンプ読んでDSしてろと言いたい。
更に彼は本の虫であった。そんな中で出会った万城目学という人の小説が彼の京都観を大きく変える。「鴨川ホルモー」というわけのわからん(褒めてる)小説を読んだ彼は阿呆にもこう思った。
「なるほど、京都へ行けばあほで楽しくて女の子とつるめる学生になれるのか」「あと、ホルモーしてみたい」

なかなかに阿保である。しかもそれは希望しか見えてない故の阿保である。救いようがない。さらに、万城目学氏だけでなく森見登美彦氏も彼の京都観を大きく変貌させた。そしてそれ以上に「京都での大学生ライフ」という淡く美しく希望に満ち溢れた幻想を抱かしてくた。小説世界を鵜呑みにすというそれはまさしく阿保の骨頂であったが、そんなこともおかまいなしに彼は京都の大学を受けるべく、その心構えだけは日々強靭なものにしていった。無論勉強などしていない。妄想のみを繰り広げ、様々な知識人と渡り合うため日々読書音楽鑑賞等々を欠かさず嗜み、その造詣を深めていったのである。嘘である。ただ趣味に没頭していただけだ。

さてそんな彼も気づけば高校3年生。真面目に進路を考える時期である。「現実」という壁と乱闘するに至るが、結局京都の私大を第1希望にすることにした。そしてすべり止めとして「まぁ一応受けといてやるか」などというよくわからないスタンスで、0.7km圏内の国立大学も受験票を出したのである。

この国立大学に志願を出したのにはいくつか理由がある。まず、「考えるのめんどくさいから一番近いところでいいや。」という全国のまじめな受験生に大変申し訳ない理由。(あんなに県外に出たいと言っていたのにコレである。) 次に、いわゆる自称進学校に通っていた故に「国公立も受けとけ」という悪徳教師達からの圧力。そして当時好いとうた方がその大学へ推薦で行くことが決まっていたということ。不純100パーセント故に純粋とも受け止められるこの理由達。お恥ずかしい限りである。

続。


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