うのの さあら

北海道生まれ、散文、ショートシナリオ、役者、表現者。月(ショートシナリオ)水(どこにも…

うのの さあら

北海道生まれ、散文、ショートシナリオ、役者、表現者。月(ショートシナリオ)水(どこにも載らない連載)・金(あたおか散文)更新しています。文化芸術教育支援センター第四回新人シナリオライター発掘プロジェクト 「4月1日物語」でオムニバスとして拙作「ありのままのこと」が選ばれ舞台化。

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    割とぬるぬる生きてきて急に思い立った「働かないと!」46歳、資格薄弱、職歴と情緒不安定女に活路はあるのか!

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雨なんか でぇっきれぇだ ほんの近く、目に見えるような場所までなのに俺のタクシーに乗りたがる あいつら俺のこと馬鹿にしてんのか なんだ、自慢か こんな距離に俺は…

31

2023冬

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不実

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貴方が摘んだ一輪の 優しい花を掠め取り 小袖に隠して来たけれど やれ枯れ果てて 朽ちていく 貴方の優しい眼差しを そのまま咲かせたあの花は 見る影もなく跡もなく…

虚雨

僕には夢と足がない 君には腕と明日がない 足しても引いても未来はなくて あるのはポツンと今ばかり けれどもうっかり今がある 今がある #あたおか散文

かき氷が起こす発作

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強度と硬度を生む粘膜

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蒸発する存在

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雨とピアノとタクシーと

雨とピアノとタクシーと

雨なんか
でぇっきれぇだ

ほんの近く、目に見えるような場所までなのに俺のタクシーに乗りたがる

あいつら俺のこと馬鹿にしてんのか
なんだ、自慢か
こんな距離に俺は金を出せるんだぜ、ってか

俺は俺のタクシーに乗る客がみんな
でぇっきれぇだ

特にこんな雨が降ってる日に
こんな場所を走るのは良くねぇんだ

ほら

「す!すいません!!ブルーノートまで!!」

ちっ!
乗車拒否すりゃ良か

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2023冬

2023冬

おい、どうしたんだよ、冬

え、俺?…俺、冬、なのかな…

お前が冬じゃなかったら誰が冬なんだよしっからしろよぉ〜今日何日だと思ってんだよ!

12月ももう半ば、あと10日もすればクリスマスも見えてくる

だろ?

なのに…

なのに?

寒く…ないだろ?

や、さむいよ?
……………ある程度は

ある程度って!

や、や、まぁ落ち着けって

ある程度じゃだめだろう!わかってたんだ、秋の頃から俺お

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不実

たった1日で良い

あなたの為に生きたいと願いながら

今日も一日圏外であることに安堵する

望まれない私から目を逸らし

ありもしない日を窓辺に飾る

私にしか触れないこの手に

虚しく儚い祝福を送る

愛してるもさようならも起こらない今日に

おめでとう
#あたおか散文

ラナンキュラス

貴方が摘んだ一輪の

優しい花を掠め取り

小袖に隠して来たけれど

やれ枯れ果てて

朽ちていく

貴方の優しい眼差しを

そのまま咲かせたあの花は

見る影もなく跡もなく

色も香りも

消えていく

あなたのように

この手から

ただ奪われて

消えていく

ただ攫われて

消えていく
#あたおか散文

虚雨

僕には夢と足がない

君には腕と明日がない

足しても引いても未来はなくて

あるのはポツンと今ばかり

けれどもうっかり今がある

今がある
#あたおか散文

かき氷が起こす発作

胸が割れそうなのです

そうですかしかし検査には何も出ませんねシンインセイでしょう

星ですか

は?とにかく心臓をナフタレンで保存して土に埋めれば冬虫夏草にでもなりましょう

それでどうなりますか

あなたの命の軽薄さで千年分の蝉が空に還りますよ

なるほどそれは結構
#あたおか散文

胃もたれを起こす渇望

よくあること

それは肉なのか

よくあること

それは頭なのか

よくあること

それは魂なのか

よくあること

あってはいけないよくのこと

ほしいほしいと

よくかいて

おおぞらむけて

亡者の如く

羽ばたけ

さよなら

微塵と散り去る
#あたおか散文

鎧に飲まれた生贄

玉座を追われた老人の

影を踏みつけ伸び上がる

いつか断たれる少女のうなじ

鮮烈な太陽の光

いつか降りつける雨を忘れ

不遜に笑う

ガラガラと鳴る足枷が始まりの鐘

凄惨を纏った細く白い腕

英雄を讃える歌が

最後の綱を切る

熱のない光
#あたおか散文

強度と硬度を生む粘膜

ろくろに粘土を置くように

窯にオキの火種をおくように

胸に氷の刃を置く

甘やかな痛みを与える儀式

神聖なる君の後をいく

悪魔に息を奪わせながら

いずれ倒れるその日まで

やはり茨の道を行く

切り刻まれて花が咲く

紅蓮の糸を紡ぐ旅
#あたおか散文 #妬きもの #糸の物語

蒸発する存在

声がキラキラと光だけを放ち

振動を失った

大男は私の左足をねじりあげると肩に担ぎ歩き出した

私の腕は地面をいざり

私の頬は砂を食む

照りつける太陽が涙を奪い

ただ揺らぐにも軽すぎる存在だけが確かであった
#あたおか散文 #魔女

凍える懺悔

オルゴール

ギリリと響くネジの音

そんな事で満足出来るならそれでいいんじゃない?

人魚が泳ぐ水深で

流す涙は泡となり

虹さえ作り哀れをよんだ

けれども音さえ届かない

この深海でただ一人

凍えて色も失って

這いずり回る獣の事は

見返り柳も知りゃしない

蓋し忘却の砦
#あたおか散文

鼻で笑われ

目で蔑まれ

耳には届かぬこの想い

あぁお願いです

それ以上

何も言ってはくださらないで

いくら醜い私でも

あんまり哀れに過ぎますものよ

月も見限る夜なれば

せめても闇に紛れましょう
#あたおか散文

うらしまたまこ

所詮

よせてはかえす波の戯言

真実なんてありゃしない

嘘と誠の間にねじ込んだ

なまぬるく滑らかな感触を

ただ盗み取り味わって

とどのつまりはどこへも行かず

こうして惚けているのです

柔らかな髪がすり抜けた指の間に

どんなに時間が過ぎようと

こうして惚けて待ち侘びる
#あたおか散文

消私

本はいい、私がどんな人間であろうと等しくその深い胸を開き抱きとめてくれる

猫はいい、私がどんな人間であろうと等しくその柔らかな肢体によって安堵という意味を教えてくれる

食事はいい、私がどんな人間であろうと等しく栄養を与え味わう楽しみを教えてくれる

あぁ、愛しき世界
#あたおか散文

廃品回収

廃品回収に出されたので

エレベーターで58階まで

ええ、そこに誰がいるのかはさっぱり

また、初めからです

やぁ、まぁ、それもまた楽しいものですよ

その為に捨てられたのですから

捨てられる為に生まれたのですから

さて、あなたはどちらまで?
#あたおか散文

赤いそら豆

消された存在の咆哮を聞いた

音なき咆哮を聞いた

眼差しから溢れる

諦めと

嘲笑と

絶望と

渇望と

憎悪と

慈しみと

受容を

私は聞いた

風に舞う蜘蛛の糸のように

消えゆく微笑みを

私は聞いた

正義に殺された断末魔を

私は、聞いた
#あたおか散文