子どもと美術館に行きたいっ! ~ミロコマチコ『いきものたちはわたしのかがみ』展
子どもと美術館。
ママ歴7年が経過しても、未だハードルが高く感じます。
静かに美術作品を眺めることなんて、わが子にできるのだろうか・・・
キャーキャー家中走り回っている、7歳と5歳を見て思います。
今回行きたかったのは、ミロコマチコさんの『いきものたちはわたしのかがみ』展でした。
ミロコマチコさんは、絵画も描かれますが、絵本作家としても有名です。『オオカミがとぶひ』はデビュー作でありながら、絵本大賞を受賞されています。
ダイナミックで生命力溢れる、いきものの絵。
きっと、スマホの小さい画面で見ている以上に、実物はすごいんだろうなぁ。見てみたいなぁ。
と、母の思いは募ります。
1.母の皮算用
「美術館に子供と行く」と考えるとハードルが高いけれど、今回の作品は、いきものが中心。
子供達も、動物園の延長で、
アートを楽しめる機会かもしれない。
絵本作家というのも、子供達にとって親しみやすい絵かもしれない。
それに、横須賀美術館であれば、目の前が海で景色はいいし、広い芝生スペースもあって、飽きたら走り回ることできる。
夫も飽きたら、シートをひいて昼寝することもできる。ちょうど、明日は暖かそうだ。
そんな皮算用をして、
「明日、美術館に行くよ!!」
「びじゅつかん??」
目を丸くする子供と夫を連れ、横須賀美術館に向かいました。
2.横須賀美術館は、こんなにステキ
海と空の境目にある美術館、
と私は思っています。
横に横に広がる建物、ガラスの透明感が、
海と空のイメージと重なります。
屋上も、美術館前の芝生も、広くて開放感があります。
お弁当を食べたり、
凧をあげたり、
走り回ったり、
船が行き交うのをぼーっと眺めたり。
それぞれが自由に時間を過ごせる感じが、
とてもステキです。
3.いざ美術館内へ。子どもたちの反応やいかに
チケット売り場の周りには、立体作品が見られます。
こちらは写真撮影が可能でした。
正面から見ると、絵本のよう。
横から見ると、彫刻のカモシカ。ミロコマチコさんの作品全体もそうですが、眼の鋭さが、野生の獣。生きている。
ぜひ色々な角度から。
展示スペースに入ります。
まず現れるのは、1章近作のライブペインティングの作品群です。
子供たちは、普段見ない大きなキャンバス、
そこに描かれた力強い動物たちに圧倒されたようでした。
静かに近づいて、すぐ触れてしまいそうな距離で筆圧を観察していました。
このスペースの展示は、囲いや、なんならガラス付きの額縁もありません。すぐそこがキャンバス。なんの遮りもなく、直にその絵を観察することができるのです。
近づいたり離れたりして、
「これはなんの動物だろう」
「身体の中にいっぱいいきものがいるよ!ヘビでしょ。魚かな?馬もいる!」
と、子供同士、真剣に話し合っていました。
それから、ミロコさんが昔読んでいた絵本というコーナーもあって。
本当にミロコさんが読んでいた古い本が10冊ほど飾られていました。
『じごくのそうべえ』や『おばけのバーバパパ』は家にある!、それから保育園で読んでいた本もある!ととても嬉しそうにしていました。
2章は装画・ディレクション。
本や雑誌の表紙、伊勢丹や無印良品とコラボしたホリデーシーズン限定の紙袋、箱などが並んでいました。
先ほどの魂で描かれたような絵画とはまた違い、シンプルで、比較的身近な絵が多いスペースでした。
雑誌『味の手帖』の表紙は、美味しそうなものが並んでいます。タッチは変わらずダイナミックで、それが食べ物の瑞々しさみたいなものを際立たせているように感じます。
「スイカはすごく種が多いね」
「私はプリンが食べたいな」
「お母さんは、餃子だな」
そんな、本当に何気ない会話を楽しみました。
ちなみに息子とは、このエリアの途中で別れました。
娘はじっくり作品を見て会話しながら楽しみたい派。
息子はさっさと次のが見たい!そして終わったら外で船を見たい!という感じだったので、私と娘、夫と息子で別れました。
3章は、絵本の原画。
部屋に入ると、
これまでほぼ絵だけだった視界に、
大きな文字が飛び込んできました。
「びるびるびるびるびる!」
「ドクルジン!」
「ぱぐんっ!」
「何これ面白い〜!あはははは!」
とにかく目に入った言葉を全て声に出してみたい!欲求が抑えられない様子の娘です。
それも無理はない。見たことほない面白い言葉が並んでいるのですから。この絵本の原画エリアは、子供達の世界という感じで、声に出すことが許される雰囲気がありました。(静かに楽しんでいらっしゃる方もいるので、本当は良くないのですが。)
それから、絵を一つ一つよく見て、
「この言葉は、この絵の様子かな?」と想像していました。絵も実に独創的。これまでに見たどんな絵本とも違いました。
ミロコマチコさんの絵本を読んだことはない娘ですが、その世界観に魅了されたようでした。
4章は、山形ビエンナーレで発表された立体作品。
トンネルのように通り抜ける立体作品。
宙に浮く赤い球や骨、足元の水辺に咲く花。
「見て!赤い球1個1個に目があるよ!なんだか怖い〜!!」
「ひゃー、これは骨?骨だよね。」
「花の中にも、もっと小さな花が描いてあるの。なんでかなぁ」
一番正面にある鋭い目つきの大きな動物より、
小さな命の一つ一つが気になる様子でした。
まだまだ生まれて、自然のど真ん中!みたいな場所で過ごしたことのない娘にとって、この作品の世界に「生命と自然への畏怖」みたいなものを感じているのかな。と思いました。
最後5章は、新作の展示でした。こちらは写真撮影が可能でした。
作品はより神秘的に、
いきものそのものを描いている、というよりは、
その内なる何かや、
いきものがすむこの海、この森、そのもの。
そんな作品になっているような気がしました。
ちょっとここは難しいかな?
と思いましたが、ここまでの作品を見てきて、「自分なりの楽しみ方」を見つけたようです。
「この粒々は海の泡かなぁ。それとも、お魚のウロコかなぁ?」
「色んな色があってすごくキレイ!海の中ってこんななのかなぁ」
ここでも、作品を順にじっくり見て必ず感想を言っていました。
見たことのない海の中の世界や、ミロコマチコさんが住む奄美大島に、思いを馳せている様子でした。
4.鑑賞を終えて
外で遊んでいた息子や夫と合流しました。
「3回も見たよ!」
息子は超スピードで、展覧会を3周したようでした。
「色んなお船が通るんだよ!」
建物前に広がる芝生からは、
タンカーやヨット、豪華客船まで様々な船が見えました。乗り物好きの息子は、嬉しそう。
海や船を眺めながら、持ってきた敷物を広げて、
お弁当を食べました。
そして最後に、ミュージアムショップで、
「1人一枚好きなポストカードを買って帰ろう!」
と、それぞれがお気に入りの作品を選びました。
これはワクワクする瞬間です。
子供達はどんな絵を選ぶんだろう?
私は『緑と猫』、娘は青い『しらないいきもの4』、息子は伊勢丹コラボのメインビジュアル熊とトナカイの絵です。
それなんだ!と、母としては少しびっくりしたチョイス。
普段、写真のように見たままを丁寧に描く娘が、抽象的な青だけで描かれたいきものを選んだこと。
ダイナミックで枠にとらわれない絵を描く息子が、カチッとした動物の絵を選んだこと。
それぞれが、小さな胸の内に、感じたことのない思いを巡らせた展覧会鑑賞だったのかな。
連れてきてよかったな。
と思ったのでした。
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