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米澤穂信『満願』/読書感想文

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入社2~3年目のころ。
通勤の満員電車の中で、よくミステリーを読んでいた。満員と言っても、本当にきつくなるのは、
品川とか上野とか大きな駅の直前で、それまでは立っていても、文庫本くらいなら読めるスペースはあった。

まだスマホは持っていなかったし、
電車に乗っている間中、メールをし続けなければならない相手もいない。

ミステリーって、
続きが読みたいから、朝寒くても布団から出られて、
現実の余計な事を考える暇もなく、物語に入り込んで、
満員電車でも、周りのことなんか一つも気にならなくて、
気付いたら目的地についている。そんな感じが好きだった。

もしかしたら、読みながら、
考察して、途中で犯人は誰かなとか、
こういうトリックがあるんじゃないか、
こういう展開を見せるんじゃないかとか、
考える人もいるかもしれない。
けれど、私はそういうタイプではなく、
気になったらその気持ちのまま、
とにかく続きをどんどん読んでしまう人間だった。

ただ、夜にはあまり読まなかったな。
仕事が忙しくって、帰ったらヘトヘトで、
化粧も落とさずに寝ていた頃だったからかもしれない。
朝、電車で読むのが習慣になっていた。


スマホの登場や、引っ越しを経て、
そんな偏った生活ともお別れをして、
しばらくミステリーというものとも距離を置いていた。

そして、最近また、ミステリーと再会して、
親交を徐々に深めている。


米澤穂信作品をはじめて読んだのは、
『ボトルネック』だったのだけど、その時の自分にはあまりはまらなかった。パラレルワールド×ミステリーという設定が、ミステリーからしばらく遠ざかっていた身としては、ハードルが高かったのかもしれない。物語にいまいち入り込み切れなかった。

そして、次に手に取ったのが、11月の課題図書とした『満願』だった。

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