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文学フリマ東京38@作品感想 『ワンルームよりも狭い部屋で』

文学フリマ最初の感想は
大森薫さんの『ワンルームよりも狭い部屋で』だ。

『ワンルームよりも狭い部屋で』

大森さんとはnoteでフォローさせて頂いていたので、今回出展されていることも知っていた。どんな作品で表現されているのか興味があったので、作品を購入させていただくことは決めていたけれど、僕が買うより先に、大森さんが僕のブースに足を運んでくださって、僕の作った本の「文学フリマ最初の購入者」となってくださったのだ。

それが嬉しくて、自分も早く大森さんの作品を買いたくて、たまらない気持ちになって。折を見てブースを友人に任せて、販売されていた2冊ともを購入させていただいた。

本を読むことは、ことばを拾うこと。

表紙はご実家で撮影されたもので、文章もすべてが「借り物じゃない」ところに、すごく惹かれました。

そしてその表現から、書き手の人柄が伝わってくる。柔らかくて、ユーモアがあって、ちゃんと自分の言葉で表現されていて、確かに響く物語があって。とても読みやすくて、途中から小説を読んでいるような気持ちになった。それはそれぞれの章ごとに、風景が浮かぶような文章で描かれているからかな、と。

僕はいつも本を読むとき、黄色のマーカーを用意する。気になった言葉にはマーカーをして、また読み返したときに自分に刺さった言葉を思い返すために。今回もたくさんマーカーを引いた。そして気になったページは、恐縮ながら折り目をつけさせてもらった。また、僕の心がこの本を呼んだときに、ちゃんと戻れるように。

マーカーもたくさん引いた

こうして書き手の言葉や想いに触れて、共感し、想いを受け取る。
言葉を拾う時間は、なんて幸せなんだろう。
改めて実感した、素敵なひと時だった。

『もう無理となんとかなるを繰り返すシーソーもしくはブランコみたいだ』

そして、こちらの短歌集『もう無理となんとかなるを繰り返すシーソーもしくはブランコみたいだ』も、読ませていただいた。

自分のユーモアの足りなさを痛感するセンス。
こういう言葉を自分には編めないので、どこか「羨ましいな」とも思う。

短歌を自分でも挑戦していた時期があったけれど、やっぱり書けないなぁと思っていて。僕には、僕の表現があると今は思えるのだけれど。
そして、この71首の短歌は素敵だ。やっぱり、日常が見え、感情に触れられる。
クスッと笑えてしまうところや、命について考えさせられたり、大切に編まれた表現を、静かに読む時間。素敵な時間を作っていただき、本当に感謝です。


どちらのあとがきにも書かれていた共通のこと。
それは「自分にしか書けないことを」という想い。

これは今回、自分が本を作ったときにも、何度も考え、思ったことだった。誰かと比べることなんて、いくらでもできて、上には上がいて、そうでないこともある。憧れることも悪くはないけれど、せっかく表現をするのであれば、何かに寄せることなく「自分なら、どんな表現をするだろう」ということを突き詰めて、表現したい。

きっと本がカタチになるまでに、楽しさだけではない葛藤もあったんだろうな、と。僕もそうだったし、そういう瞬間があとがきを読んでいてリンクして、他人事ではなく、この言葉たちを大切にしたいなと、思った。

すべての本にリスペクトをしているし、それぞれの表現だと思う。
けれど、この大森さんが表現した本は、大森さんの手から今回買わせていただかなかったら、一生出会えなかった表現だ。文学フリマで出会えて、よかった。

僕はそういう出会いが好きだし、そういう出会いを大切にしたいし、まだ触れられていない、アナタの表現に触れたいと想う。

今回の大森さんの作品に出会えて、またそういう想いが強くなったし
自分の作品がそういう表現となって、誰かの手に渡ったら、いいなぁと思う。

素敵な2冊をありがとうございました。
また読み返します。

そして大森さんの次の作品が生まれるのなら
その作品に出会えることも、楽しみにしたい。

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