日本ミツバチが庭に来ていた【アニマルコミュニケーションと虫】

天気のいい日、ちょっと花でも見て来ようかなと庭に出ると、このごろの私はたいてい花以上にそれを訪れている蜂につかまってしまう。蜂の仕事風景に見とれるのだ。
今春、何よりも私の心にヒットした虫はクマバチだったが、今はクマバチの好きな花が終わり、気軽に観察できるのはミツバチだ。

★蜂について書いたこれまでの記事はこちら★
「生物への愛とエネルギー、蜂さん、自然との調和」
「蜂が開いてくれた扉・夢は現実のラフスケッチ」

ミツバチは一度訪れると、長く滞在してくれる。とても熱心に、花をいくつも回って蜜を吸うからだ(つつましい庭の中の、ひとつの鉢植え内に咲く花々であっても、小さな体のミツバチはその花の上を次々丁寧に移動する。その姿を見ていると、応援しながらミツバチ目線を擬似体験している気持ちになる)。

おかげで格好の観察の機会ができるのだが、動き回る蜂を見つめるのは、本やネットの写真を眺めるのと大きく違う。
「ここ、もっとよく見たい!」と思っても、そうはいかないことがある。

なにせ、写真ではあれだけメスとオスの区別が明確だったクマバチですら、花の蜜を吸っているときには判別しづらいと実感したくらいだ(メス特有の行動、オス特有の行動でわかる場合でなく、どちらも行う吸蜜のとき)。
すっぽりと顔を花にうずめているので、移動の際にチラッとしか顔と全身は確かめられないし、飛び回っていると羽が陽光にキラキラと反射する。
吸蜜中にそっと近寄っても風が強く吹いていて、クマバチごと花房が激しくゆらゆら揺れていたりした。違う花の上ならもっと見やすい可能性があるのだが、春の家の庭では案外、細かい観察ができなかったのだった。
しかも庭を訪れるクマバチは地を歩いたり止まっていたりすることはなく、忙しく花から花へ移動し、用事が済むとたちまち空高く舞い上がって飛び去ってしまうのだった。

それに比べるとミツバチは、かなり見やすい。蜜を吸っている間はゆっくり観察できる。
蜂の邪魔をしない距離を保って、目をじっと凝らしてうろうろ、舞台の陰にいる黒衣さんのように、低くかがんだり蜂のいる裏側に回ったりと姿勢を変えながら観察する。

そうやって眺めていた結果、家の庭を現在訪れているミツバチは、日本ミツバチであるようだとわかった。

観察が楽しくなる予備知識。日本ミツバチと西洋ミツバチの違い

「蜂が開いてくれた扉……」の記事で書いた通り、日本ミツバチは在来種で、アジア全域に分布している東洋ミツバチの亜種だそうだ。生息の北限は青森県で、北海道では生息していないらしい。
一方、現在養蜂の主流になっている西洋ミツバチは、明治時代に日本に輸入された外来種。スーパーなどで流通している一般的な蜂蜜は、西洋ミツバチからとったものだ。

日本ミツバチは野生で、西洋ミツバチは家畜、と表現されることもある。

日本ミツバチの養蜂は、周辺の環境も含めて日本ミツバチが巣箱を気に入り、住み続けてくれさえすれば手がかからない一面があるようだ(気に入らないといなくなってしまう)。とれる蜂蜜の量は、西洋ミツバチに比べるとずっと少なく、希少品となる。
西洋ミツバチの養蜂は、在来種ではないので日本の気候や外敵に対して弱く病虫害が発生しやすいため、人間による管理が必須なようだ。だが、蜂蜜は沢山とれる。

パッと見は「ミツバチ」ということでよく似ている2種だが、生態はかなり異なるのだ。
ここでは違いの一部を紹介しているにすぎないので、興味を持った方はぜひ自分でも調べてみてほしい。たくさんの情報がネット上にもあるし、知れば知るほど面白いよ。

さて、花を訪れたミツバチだけを見て、日本ミツバチか西洋ミツバチか見分けるのは少し難しい。
巣を見ずにどちらの種かを見分けるためには、正確には後翅(後ろ羽、前翅と一体となって動いている)の支脈を見なければわからない。
捕獲しない限りそこまで確認することは難しいので、私は他の要素から日本ミツバチだろうと結論した。
他の要素とは、外見の以下の違いだ。

■日本ミツバチ……体は黒っぽく、全体的に暗い色。西洋ミツバチよりもやや小ぶり。
■西洋ミツバチ……体は黄色またはオレンジ色っぽい。日本ミツバチよりやや大きい。

体の色は季節によって変わったり、西洋ミツバチにも黒っぽい種類がいたりするらしいが、特に胸に近い腹部の色を見ると判断しやすいそうだ。
私はここのところ二種の写真をよーーーく見ていたので、目の前のミツバチをじっくり観察した結果、
「よっぽど西洋ミツバチの中にそっくりさんがいない限り、これはかなりの確率で日本ミツバチだな」
と結論づけることにした。

加えて、これまで自分の見たことのあるミツバチの記憶を辿ると、ハーブ園やバラ園などの施設、それから都内のちょっとしたガーデン風スポットなどで、もっとオレンジ色がかった体の大きいミツバチを見ていた覚えがあった。
それに比べると現在家の庭で目撃しているミツバチは小さく、色も全体的に「地味」なのだ。

日本ミツバチと西洋ミツバチの違いを最近になって理解した私は、こうして身近にいる蜂についての知識を増やし、それぞれの生態を思い描けるようになってきたことがとてもうれしい。

<豆知識。日本ミツバチ、西洋ミツバチ、それぞれのすごい技>

ここで、私が感心した日本ミツバチ・西洋ミツバチそれぞれの「必殺技」についてふれておこう。

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