大自然が先生

先日、室内がかなり暑かったのでベランダに出て、日の当たっていない側に立って私は休憩していた。
時は夕方。色々な鳥たちがにぎやかにお互いを呼び合い、ねぐらに向かっていく様子がわかる。
肌をなでる涼しい風の心地よさを感じながら、多様な鳥たちの大合唱に耳を傾けていると、ふいに強烈な違和感が押し寄せてきた。

知らなすぎるのではないか。

昔に比べると身近な鳥たちの鳴き声を聞き分けられるようになった私だが、まだまだ彼らの生活や生態を十分には知らない。
すぐそばで暮らしを営んでいるのに。

こんなに近くにいるのに、こんなにわかっていないなんて、異常じゃないか。
言葉にするならばそんな、圧倒的な違和感が押し寄せてきた。

人生の関心事の大きな変化【提供される型の娯楽に関心がなくなると】

ぱーんと張り詰めたその違和感、ある種の気づきの訪れの中で、私は鳥たちの姿を見つめ、鳴き声をより一層注意して聞きながら考えた。

地球の自然界について、知らないことがまだまだある。
私の寿命が尽きる前にどれだけのことを知ることができるのだろう。

——この思いには、私個人の以下のような背景も関わっている。

私はもう長いこと、一般的な(主に娯楽と意図して提供される型の)エンターテインメントの多くに興味がなくなっていた。テレビや映画、小説などの読み物、特にフィクションの作品にすっかり関心がなくなった。
たとえそれらに接しても、以前ほど面白いと感じなくなったのだ。

なぜそうなったかには、私自身のスピリチュアリティーの目覚めと、その後長い年月をかけて起きた「ものの見方の根本的変化」が関係している。
ブログでも何度かその話題にふれてきたので、そのうち2つの記事リンクを載せておこう。
「現実という創作」
「エネルギー量の割り振りと関心、情報選択の話。生物たちと私のユートピア」

noteでは昨年、同テーマに内在する普遍的な要素に的を絞ることで、あなた自身の人生に適用できる内容を記事にした。
「現実というフィクション。Life is a Movie!」

人間は、意外に多くの時間を娯楽にあてている。
私は毎日そんなに暇じゃないよという人であっても、息抜きやちょっとした気分転換に、何らかのエンターテインメントを追っていることがあるのではないだろうか。

もちろん人それぞれ、何を自分の娯楽と思うかは異なる。

私がここで言いたいのは、「娯楽であることを意図して、提供される型」のエンターテインメントに自分の興味が向かなくなったということで、娯楽という要素を否定したり排除したりしているわけではない。

それはともかく、自分がそうした関心を失ってわかったのは、
「それらの娯楽をなくすと案外、多くの時間が空白になるものだ」
ということなのだ。
空き時間があっても、以前と同じようなエンターテインメントに食指が動かない。気持ちが向かない。だから、空白ができる。

となると、その分、一体何に関心が向くのだろうか。

私の場合は、「自然界」だった。
そしてそこに興味を持てば持つほど、いかに自然のことを「知らないか」をつくづくと理解するのだった。

何もそれは地球規模の、あるいは住居からずっと離れた遠方の自然のことを指して言っているのではない。
自分の暮らしている「ここ」の周囲の自然についてすら、たいして理解していないとわかってしまったのだった。

だからこそ、真摯に思うのだ。
私の寿命が尽きる前に、自然界について一体どれだけのことを理解できるのだろうかと。
この地球に暮らすという貴重な機会の中で、地球の自然をどれだけ、「自分自身の体験を伴って」理解できるのだろう。

スズメの励まし

そうした思いに満たされ、霊感に打たれたようになっていた私は、ベランダでじっとしながら、こう決心していた。

(昔そうしていたように)いくら本で文字を追っても、もう得るものはないとしっかり自覚しよう。私にとって、書から学ぶ時期は終わったのだ。
これからは、大自然が私の先生だ。
本当にそうしなければならない。今、目の前にある自然から学ぼう。
身近で暮らしている鳥たちや虫たち、植物たち、様々な生物のことをもっと知ろう。彼らから教えてもらおう。

——すると……遠くからひらりと、一羽のスズメがこちらに向かって飛んできた。

都市部などで、人間に餌を播かれて集まってくることに慣れた一部のスズメを除き、野生のスズメはけっこう警戒心が強い。
かなりそばまで近づいても大丈夫なこともあるが、スズメの方からあえて餌などを持たない人間に大接近することは意外と珍しい。

ところがこのとき、前述の思いで心をいっぱいにしていた私のすぐそばに、ひどく良いタイミングでスズメが止まったのだった。
冬期のふっくりと丸いシルエットではなく、すらりと初夏仕様の姿のスズメで、巣立ち雛(今春生まれて巣立ったばかりの雛)でもなく、成鳥だ。

ずいぶん近くに来るなぁと思ったが、何かこのあたりに用事があるのだろうと思い、スズメを驚かせないよう、直視しないことにした。
すると今度は、スズメはさらにもっと私の近くにやってきて止まったのだ。こちらをじっと見ている。

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