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2019年に読んだ中で心に残った小説あれこれ

読んだ本の情報や感想を記録しておけるウェブサイト「読書メーター」を8年ほど続けています。
そちらでいつの頃からか年末が近付いてくると、その年に読んだ本の中で個人的に良かったものを紹介できる「おすすめランキング」なるページを作成できるようになっていました。
「おすすめランキングと書いてはいるけど特に勧める意図はなく、その年に初めて読んだ本の中でとても心動かされたもの」ぐらいの気持ちで毎年ランキングを考えてはいるのですが、これが結構いろんな気付きがあって面白くてですね。年始に読んで惚れ惚れした本を年末に振り返ってやっぱり特別だと思ったり、その逆にそれほどでもなかったなと時間が経って冷静になったあたまで考えたり。年始には存在すら知らなかった作家の本ばかり選んでしまっていた、なんて事もあって。
数年前の初読時は気付けなかったけど再読したら素晴らしかった!という本もあります。その年に初めて読んだ本から選ぶというマイルールに反するので、例外としてそういった一冊を加えたのは過去に一度だけなのですが。
そんでもってせっかくnoteのアカウントを再稼動し始めたので、おすすめランキングという取っ掛かりから本の話をしようかなと。ここぞとばかりに。これを読んでくれているあなたとの共読本があれば嬉しいです。

◎町田康『権現の踊り子』講談社文庫
声に出して読みたくなる書名の正体は、表題作を含む全6話収録の短編集。
町田さんの作品は人間のどうしようもなさとか、掴みどころが無いまま終わってしまったり落ちるところまで落ちてしまったりの展開だったりをキレッキレの語彙や語感や比喩のセンスで読むことに恍惚とするのが楽しいみたいなところがあるんですけど、本作はそういう楽しみ方を経て突きつけられる様々な結末に胸打たれる一冊なんです。『逆水戸』なんてうくくと読める可笑しみに満ちてるのに、よくよく考えると足をすくわれる怖さもあって。あなたがあなたであることを否定された時、あなたはそれをどうやって覆すのか。
収録作全部好きだけど、なかでも『ふくみ笑い』は特別な存在です。狂っているのは世界ではなく自分なのかもしれない、という疑問が過ってしまう。正気だというのに。
ところで2019年のおすすめランキングは204冊読んだ中から24冊を選んだんですが、24冊のうち4冊が町田康さんの著作でした。ハマりたおして手当たり次第に読んだからね。

◎中村文則『掏摸』河出文庫
180頁ぐらいの短い物語の中に、純文学とエンタメ双方の要素を取り入れて一作の物語を成立させている様に惚れ惚れした印象がとても強い。現実には卑劣な犯罪だと理解している掏摸という行為を目の当たりにしながらも、無駄のない描写や緊迫感の表現がお見事で。美しいものを見た時のような読後感だった。

◎三島由紀夫『花ざかりの森・憂国』新潮文庫
表題作にもなっている『憂国』の凄絶さが忘れられなくて選んだ。誰もが絶対的に一度しかできない死の瞬間を五感で疑似体験する、そんな生命への反逆めいた事を可能にするのも作家の凄さだと思う。そして世界に二人きり。

◎岸本佐知子 編訳『居心地の悪い部屋』河出文庫
「読了後にモヤモヤする」事を基準に選ばれたという海外作家の短編アンソロジー。伏線回収の妙とか結末の爽快さといった明快さに惹かれるのと同じあたまで、読み終わってもなお物語世界の余韻が纏わりつくようなスッキリしない物語にも惹きつけられる。そこに矛盾は無く文学を前にする体験の興味深さということ。わたしはホラー系の展開はどちらかというと苦手なんですが、はっきりそう呼べる作品は一作しか無かったような。思わず笑ってしまう作品もあって面白かった。げに恐ろしきは人間。

◎トルーマン・カポーティ『誕生日の子どもたち』文春文庫
村上春樹さんの翻訳で読みたかったので文春文庫を選びました。カポーティって人間の無垢と残酷のどちらもを書くのがとてもうまい作家です。表題作と『クリスマスの思い出』が好きすぎて甲乙付け難い。生きる以上は時は過ぎる、だけど五感すべてで覚えている。何度でも思い出すよ。

◎J・M・クッツェー『恥辱』ハヤカワepi文庫
最高の文体で最低の物語を読むという体験をした一冊。細部まで飾り立てられた煌びやかさよりは無駄を排したシンプルの極地に美を感じるという傾向は特に文体に対して顕著で、余計なものが全然無い、すべてが必要な言葉で構成されている美しい文章だと読み進めながら感じたんです。美しい景色を眺めるように文章を読む事そのものに歓びが満ちるほどだったのだけど、その美しい文章でひとりの男性の恥辱と転落の物語を読むという体験に脳がバグりそうだった。初読み作家さんの小説に衝撃を受ける、という喜ばしい出会いも嬉しかったな。著者もすごいし訳者の鴻巣友季子さんもお見事です。

以上です。
小説以外も含めた24冊のリンクを貼りたかったのだけど、他のウェブサイトへのリンクを挿入できるのはPC版のみの機能みたいですね。無念。もっとnoteと仲良くなりたい。
2020年も心躍るひとときを期待しつつ濫読を貫いて行きたい所存。お互い良い本に出会えるといいですね。

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ありがとうございます💌
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写真を撮ることが好きでした。今は濫読の日々。つれづれなるまま書き綴ることは昔も今も変わらず好きです。※ここに掲載する写真は全て自分で撮影したものです。/読書メーター:https://bookmeter.com/users/155781

コメント3件

本の背表紙を写真で紹介されると好みが一目でわかっていいですね。ご紹介くださった本、読んでみたくなりました。
コメントありがとうございます!!こういう事ができるから紙の本の存在感が好きです。機会があればぜひ!
フォローありがとうございます😊
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