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好きな短編のタイトルを並べて理想のアンソロジーの目次を作る(海外作家編)

ヘッダ写真はフランツ・カフカの短編集『禿鷹』(国書刊行会)です。



4月に読んだ本の話をするnoteを書いたり、掃除をしたり、上記のカフカ短編集を読んだりなど。
おうち大好き人間としての土曜日を過ごしていた時のこと。

カフカの短編集は上記の『禿鷹』『雑種』(理論社)・『カフカ短編集』(岩波文庫)と全部で3冊持っているんですが、それぞれ収録作がちょっとずつ違ってまして。
全体的には『禿鷹』が一番好きだけど、でもこれにはカフカの短編で一番好きな『掟の門』が入ってないんだよな~~~なんて事を考えた時。
じゃあ私が選ぶなら収録作どうする?
という妄想のネタを思いついたわけです。

その流れで岸本佐知子さん編訳の海外作家アンソロジー『居心地の悪い部屋』(河出文庫)の存在を思い出し。
ひとりの作家に限らず、ただただ自分が好きな短編小説を並べた理想のアンソロジーの収録作を考えるなら??と思い立って、自室の本棚にある本の作品のみという縛りで選り抜き、メモをとり、読後感などを踏まえた収録順まで含めて真剣に考えた結果を書いてみました!

最初はもう少し数が多かったんですが、『居心地の悪い部屋』に倣って全12話に絞りました。
noteの目次機能、こういう使い方をするのに丁度良いね。




01. フランツ・カフカ『掟の門』

カフカ短篇集/池内紀 編訳(岩波文庫)
このnoteを書くきっかけでもある作品。この岩波文庫版でもトップバッターに収録されていて、そのせいか先陣を切る印象がとてもつよいです。初めて読んだ時、2ページ目のある一文に寒気がした。


02. サマセット・モーム『詩人』

モーム短篇選(下)/行方昭夫 編訳(岩波文庫)
2020年後半に読んだ中で心に残った10冊のうちの一冊にも入れた文庫ですが、その理由はひとえにこの作品が大好きだからです。いわゆる推しと呼べる存在をもつ人はみんな読むといい。


03. ミヒャエル・エンデ『ミスライムのカタコンベ』

自由の牢獄/田村都志夫 訳(岩波現代文庫)
表題作にするかさんざん悩んでこっちにした。希望と絶望は背中合わせでどっちから見るかの違いでしかないのか。


04. ジェイムズ・サーバー『ダム決壊の日』

傍迷惑な人々 サーバー短篇集/芹澤恵 訳(光文社古典新訳文庫)
これを書くために久々に引っ張り出して読み返したら、最初の一文でいきなり声出して笑ってしまった。外で読むのは危険と言えるかもしれないファニーな物語。


05. バリー・ユアグロー『時禱書より』

一人の男が飛行機から飛び降りる/柴田元幸 訳(新潮文庫)
149話収録の掌編集。『三舞台サーカス』も好きでどっちにするかとても迷ったけど、読む度に素晴らしさにうわああああっと声が出るのを抑える必要があるこちらにしました。1ページに満たない文章に美しさが満ちている…。


06. チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ『明日は遠すぎて』

なにかが首のまわりに/くぼたのぞみ 訳(河出文庫)
ナイジェリア出身の著者による短編集。遠い国に住む市井の人々の営みの様子が、距離を超えて届くってのが文学のすごいところ。慣習とか固定観念とかに押し潰されそうになるけど知る必要があること。他の収録作もすごいよ。


07. サマセット・モーム『ジェイン』

ジゴロとジゴレット モーム傑作選/金原瑞人 訳(新潮文庫)
岸本佐知子さんが『居心地の悪い部屋』で、お一人だけ二作選出していた方がいたのが印象的だったのでまねっこしました。この一冊はほんと他の作品も素晴らしいので推したいです。モームさんが書く人間のリアリティよ。


08. ケイト・アトキンソン『時空の亀裂』

世界が終わるわけではなく/青木純子 訳(東京創元社)
何気に連作短編の様相を呈するので一冊まるっと読むのがおすすめではあるんですが、中でもこの作品が好きなんですよ。ただネタバレにならないように内容を説明するのがとても難しいお話でもある。深くは語らずお口ミッフィー。


09. ルシア・ベルリン『苦しみの殿堂』

掃除婦のための手引き書/岸本佐知子 訳(講談社)
経験を糧に小説を書く作家だったようです。通読するといかに波乱万丈な生涯を過ごされてきたかが伝わってくる。中でもこの作品の読後感はちょっと代え難いものがあった。淡々と語られる中に湛えられた、深い感情の揺らぎが胸を打つ。


10. J・D・サリンジャー『最後の休暇の最後の日』

このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる / ハプワース16、1924年/金原瑞人 訳(新潮モダン・クラシックス)
あちこちで書いてますが、海外作家ではサリンジャーが一番好きなのです。『ナイン・ストーリーズ』が最高の一冊だと思っているけれど、だからこそ思い入れが強すぎて一話だけ抜き出すという事が出来ず、2018年に新訳版として発売されたこちらから選びました。これを書ける人だから好きなんだ、と確信できた作品でもあるし読む度に泣けてしまう。悲しみではなく、うつくしいものを目にした時の涙。


11. F・スコット・フィツジェラルド『バビロン再訪』

フィツジェラルド短編集/野崎孝 訳(新潮文庫)
サリンジャーの『ナイン・ストーリーズ』を新訳で読んだ時、訳でこんなに印象が変わるのか!と多大なる衝撃を受け。旧訳を担当された野崎孝さんが翻訳した作品をもっと読みたいと思って手にした一冊でした。そういう経緯もあって思い入れがある一冊なのです。『氷の宮殿』も好き。


12. トルーマン・カポーティ『クリスマスの思い出』

ティファニーで朝食を/村上春樹 訳(新潮文庫)
これはたぶん、読んだ事がある人なら一番最後にもってきた理由を分かってくれると思います。ここまで挙げてきた中でも特別な作品。




以上です。
現時点で本棚に入っている作品の中から選んだので、例えば恋人から借りて読んだセラハッティン・デミルタシュフェルディナント・フォン・シーラッハ、すでに手放してしまっているレイ・ブラッドベリなどの作品は入ってなかったりします。
読書メーターの記録を頼りに考えるとしたら、また違った作品たちが並ぶことになりそうだし今回以上に悩むことになるんだろうなぁ。
(それでも最後をカポーティの『クリスマスの思い出』にする点は変更なさそうですが)

いずれ国内作家でも選んでみたいですが、
・夏目漱石『夢十夜』は十話全部まとめてひとつの短編と呼ぶべきか?
・夢野久作『少女地獄』は三作ひっくるめてカウントするかそれとも一番好きな『何んでも無い』を一作とするか??

などの疑問が出てきたので考えるのを先送りしました。わはは。

わたし自身考えててすごく楽しかったんですが、あなたの読書のきっかけになればとても嬉しいです!



★2022/2/12追記
国内作家編も作りました!



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