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目が光る

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連載小説です。(あらすじ)ある日、眩しくて目覚めた男。鏡を見ると、なんと目が電球になっていた。ある病気だと診断された男は専門家の女医を訪ね、同じ病気を持つものたちとともにその謎の…
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2020年9月の記事一覧

目が光る(16)

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その瞬間、彼の頭に恐ろしい妄想が浮かんだ。もしかしすると、もう全員集まってグラウンドに行っているのかもしれない。そうなれば、遅刻した僕は......もう終わりだ。

全身から血の気が引いていく。急いでグラウンドに行こうと思っても、足が動かない。遅れて着いた時のヤツらの冷ややかな顔を想像すると、いっそ窓から飛び降りてしまいたいくらいだった。

彼はなんとか教室に入

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目が光る(15)

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「ハァ......ハァ......」

ようやく修行場の前に着いた彼は、膝に手を置いて休んでいた。少し走っただけなのに、息が上がってしまう。

こんなに体力がなかっただろうか。確かに、最近運動不足だったかもしれない。思えば、ベルトの上に乗る下腹が学生の頃より多い気がする。

「運動......しないとな......」

乱れた息を整え、彼は扉を開いた。修行場の奥

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目が光る(14)

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少年はしばらく口をあんぐりと開けたまま放心していたが、急に我に返ったようにかぶりを振って、勢いよくカーテンを閉めようとした。

「ちょ、ちょっと待ってくれないか」

思わず彼は声をかけた。そのあまりの怯えぶりに、何だか少し傷ついた気がしたのである。自分はそんなにも怖いだろうか。

少年はカーテンを引く手を途中で止めて、カーテンの端から恐る恐る顔を覗かせている。そ

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目が光る(13)

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目が覚めたのは、医務室だった。白い天井、白いカーテンに、白い掛け布団。白いシーツに、白い枕、そして、白い床。何もかもが不気味なくらいに色がないこの空間は、一瞬彼岸かと錯覚するほどだった。

身体を起こすと、まだ少しめまいが残っている。彼は目を瞑って頭を休ませようとしたが、意識を失った原因を思い出し、寸前でとどまった。

「慣れないものだ。暗闇が恋しいな。」

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