竜泉寺成田

物書き志望のまま社会人になった。ショートショートをメインに小説を書いていたことがありま…

竜泉寺成田

物書き志望のまま社会人になった。ショートショートをメインに小説を書いていたことがあります。少し不思議で不気味な、時に暖かい世界をお届けできたらいいなあ。

マガジン

  • ショートショート

    一本完結のショートショートまとめです!大体5分くらいで読めるものばかりなので是非!

  • 決行

  • 目が光る

    連載小説です。(あらすじ)ある日、眩しくて目覚めた男。鏡を見ると、なんと目が電球になっていた。ある病気だと診断された男は専門家の女医を訪ね、同じ病気を持つものたちとともにその謎の病気の治療をしていくことになる。

  • エッセイ

    毎日どうでもいいことをうじうじ考えている人間っているんですね。そんな人がその日の気分でしたためた浮き沈み激しいエッセイ集です。

  • 独占禁止

    連載小説です。

最近の記事

  • 固定された記事

毎日投稿100日達成!

本日8月19日をもって、遂に毎日投稿も100日を達成することになる。3桁の大台である。 生まれながらの三日坊主であるこの私が、3日どころか3ヶ月をもゆうに超えて一つのことを継続できるなんて、始めた当初は思いもしなかった。 今日は折角なので、100日目の記念として、私がここまでやってきた上で獲得した、コツのようなものをお伝えしたいと思う。 みなさんもぜひ、これを読んで毎日投稿を続けてみてほしい。 ①毎日投稿を忘れないまず、大前提として「毎日投稿をしている」ということを忘

    • 映画「正欲」を見に行ったら、原作と解釈違いすぎて「うわあああ」ってなった

      先日、映画「正欲」を見に行きました。朝井リョウさん原作の小説の実写化で、僕は原作に完全にやられたのでワクワクしながら見に行ったのですが、なかなか許容できない改変が多く、全然フラットに見れませんでした。同じ朝井さん原作で神木隆之介さん主演の「桐島、部活やめるってよ」は、独自の改変をしつつかなりいい出来になっていたのもあって期待をしていただけに、かなりがっかり……。 以下、解釈違いだった点を書いていきますが、基本愚痴となっているので、この映画好きだよって人はお気をつけください。

      • 『未来断捨離』 #毎週ショートショートnote

        「あなたの未来、断捨離しませんか」 怪しげな看板をでかでかと掲げた怪しげな店が、市内の大通り沿いにできたのは最近のことだった。 そのうさんくさい雰囲気とは裏腹に、連日行列が止まないほどの大盛況を呼んでいるので、たまたま部活が早く終わった日に、滑り込みで行ってみることにした。 「お名前は」 「大河です、宍戸大河」 「大河様は高校2年生でいらっしゃいますね」 「はい」 「そろそろ受験も考える時期。悩みも多いことでしょう。志望校は決まっておられますか?」 「いや、ま

        • 人とうまく付き合うための手引き

          私が思うには、エゴイズム、というのは、芸術に昇華するほかないようです。これは実体験から来る主観的な想念ではあるんですが、しかし、ある種の有効性はもっているのではないかと思います。 私は生活上、よくみじめな気分に陥りますが、それらは皆エゴイズムを突き通そうとすることによって生じているのではないかと、最近、私の数々の憂鬱はそう集約されるような気がするのです。 例えば、友人間で意見の相違が生じた場合いかようにすればよいか。私はつい先日、自らが相手を屈伏させようとしているのではな

        • 固定された記事

        毎日投稿100日達成!

        マガジン

        • ショートショート
          43本
        • 決行
          8本
        • 目が光る
          16本
        • エッセイ
          17本
        • 独占禁止
          6本
        • 自動方面決定機
          6本

        記事

          東京都現代美術館『ライゾマティクス_マルティプレックス』に滑り込みしてきた!

          *画像は写真撮影が許可された場所で撮影したものです。 東京都現代美術館(MOT)で開催されていた『ライゾマティクス_マルティプレックス』が、6月22日まで延期されたことを聞きつけ、なんとか本日21日に滑り込むことができたので、レビューを書いていこうと思う。 ちなみに、筆者はライゾマ展と『マーク・アンダースの不在』のセットチケットを購入し、両方見てきたのだが、アンダース展については理解がまだ及んでいないので、日を改めて書くことにしたい。 と、ここまで書いて青ざめたのだが、

          東京都現代美術館『ライゾマティクス_マルティプレックス』に滑り込みしてきた!

          130日間の毎日投稿を振り返って(&10月の目標)

          あいさつみなさん、初めまして。竜泉寺成田です。どうして「初めまして」なのかといいますと、僕のことを知っている人などほとんどいないからというのはもちろんなのですが、こうして、等身大のままにまともに話すというのはTwitter以外では初めての試みになるからです。 僕は小説であっても、エッセイであっても、批評であっても、そのうちに本当の自分というものを出してはいけない、そうしてしまった途端にそこには文学性がなくなってしまうと思っている節があります。ですから、僕は「ある目標」を達成

          130日間の毎日投稿を振り返って(&10月の目標)

          【最終話】決行⑻

          それからも彩香とは連絡を取り続けた。二人とも普段通り振舞おうとしているけれど、嘘くさいやりとりが続く。お互いがお互いに踏み込めず、うわべだけのメッセージだけが虚しくたまっていく。太一は、以前はどのように接していたのかもうわからなくなっていた。 次第にメッセージを送り合う頻度も減っていき、一ヶ月前には毎日送りあっていたメッセージも、二日に一回、三日に一回とどんどん間隔が広くなっていった。 それでも、太一は彩香に会う約束を取り付けようと必死だった。次会うときは、またあの話をし

          【最終話】決行⑻

          決行⑺

          二週間は信じられないほど早く過ぎた。自分が何をしていたのかも思い出せないほど、どうでもいい毎日だった気がする。それでも太一はしっかりと「決行」について調べてきたし、今日は集合時間の十分前にはオブジェの前についていた。 彩香は珍しく、集合時間ぴったりにきた。「珍しいね。どうしたの?」と聞くと、彩香は「何となくかな。」とだけ答えた。 二人はまたいつものカフェに入って窓際のテーブル席に座った。太一はブラックコーヒーを頼むと、彩香も同じのを一つ頼む。いつもはここでミルクとガムシロ

          決行⑹

          次第に彩香も太一に色々プライベートな質問をしてくるようになった。そこで、太一がバンドをやっているということを話すと、そこから話が広がりお互いの好きなアーティストの話になった。 太一は「Emocional」という日本のロックバンドがひどく好きだった。彼らの作る曲は、想いが直接胸に響き、ノスタルジックな感傷がさわさわと呼び起こされて、いてもたってもいられなくなり、思わず夜道を駆け出したくなるような、そんな美しく泥臭い曲だった。 太一は、一瞬仕事中であることも忘れ、「Emoci

          決行⑸

          待ち合わせ場所の、昂理駅西口前の奇妙な形をしたオブジェの前に着くと、白いワンピースにベージュのカーディガンを羽織って、麦わら帽子を被った女が空を見上げて佇んでいた。それから、はっとしたかのように周りをキョロキョロ見回し、こちらに気づくと女はぷくりと頬を膨らませた。 「今何時だと思う?」「十三時十五分だな。」 「今日の集合時間は何時?」「十三時だな。」 「何か、言うことは?」「自己ベスト更新だな。我ながら頑張ったと思うよ。足がパンパンだ。決め手は三丁目の床屋のコーナーを…

          決行⑷

          太一の視線の先では、未だに漆黒が列をなしている。 さっきまで滝のように吹き出していた汗も、季節外れの冷気に当てられてすっかり乾いていた。 時計を見ると、もう十時を回っている。少し休み過ぎたようだ。冷えて硬直した筋肉をほぐしながらゆっくりと立ち上がり、空になったペットボトルを自販機の横のゴミ箱に投げ込む。 今時珍しいバケツタイプのゴミ箱に律儀に貼られた白いテープには大きく「ペットボトル」と書かれていたが、中を覗いてみるとカンやビンだけでなく、コンビニ弁当やタバコの吸い殻、

          決行⑶

          「決行」。 彼らは一体何を「決行」したのか。その目的や彼らの主張はこの記事からは読み取れない。 太一はあの日のことを思い出していた。 彼らの顔に張り付いた嘘くさい笑み。とめどなく口から流れ出る、御経のように平坦でヒステリックな叫び声。そのどれもが人間的なエネルギーを持っていなかった。 一見何かとても意味のあることを愚民に教唆しているかのような口ぶりでも、それらは彼らの内部から生成されたものではないような気がした。まるで彼ら自身は何かの媒体に過ぎず、アンプのように何者か

          決行⑵

          当時大学生だった太一は、「決行」の前日、いつも通り友人たちと酒を飲んで一晩を明かし、翌日は一限をサボって、いつも通りダニだらけの床で雑魚寝をしていた。 太一が異常な寒さを感じて目を覚ましたのは、昼の二時のことですっかり三限も終わっていた。昨日の深酒がたたったのか、薄着で布団もかけずに寝たのが悪かったのか、全身に悪寒が走り、割れるほど頭が痛かった。 ぼさぼさの頭をかきむしりながら立ち上がり、シンクに置きっ放しになっていたぬるい麦茶を、もう二日は洗っていないコップについでぐい

          決行⑴

          むせかえるような湿気でべたついた皮膚がシャツに張り付いている。 少し走り過ぎてしまった。一度疲れを意識すると、途端身体が重くなったように感じる。前に進むのを拒もうとする脚にむち打ち、向かいの歩道のベンチまで歩を進める。 隣の自販機で炭酸を買って、ベンチに腰を下ろし、相模太一は決まった間隔で色を変え続ける信号機をただぼうっと見つめていた。 今日はランニングにはもってこいの気候だった。 季節は夏だというのに、今朝は半袖では底冷えするほど冷え込んでいて、太一は衣替えでタンス

          目が光る(16)

          (1)はこちら 前の話はこちら その瞬間、彼の頭に恐ろしい妄想が浮かんだ。もしかしすると、もう全員集まってグラウンドに行っているのかもしれない。そうなれば、遅刻した僕は......もう終わりだ。 全身から血の気が引いていく。急いでグラウンドに行こうと思っても、足が動かない。遅れて着いた時のヤツらの冷ややかな顔を想像すると、いっそ窓から飛び降りてしまいたいくらいだった。 彼はなんとか教室に入り、席についた。そうして、しばらくボーッと黒板を眺めていた。練習に行く気なんか、

          目が光る(16)

          【ショートショート】列車

          列車を待っていた。 ふと周りを見渡すと、どういうわけか、私の周りにだけ人が並んでいない。 へんな偶然もあるものだなあ、とさほど気にも留めなかったが、時間が経つにつれて異常な事態が進行していることに気がついた。 時は夕方にして、丁度くたびれたサラリーマンたちの帰宅ラッシュにさしかかろうとしているが故、乗客らしき者たちは、少なくともこのホームには大勢いるというのに、私が作り上げた列(らしきもの)には誰1人として並んでいないのである。 徐々に不安が増していく。 最初は私が

          【ショートショート】列車