残された場所。

1週間程の彼女宅への連泊(もはや同棲)は、父の強制送還命令により終わってしまった。昨晩、一人暮らしをする彼女の家から実家に帰宅した。

僕の家庭は、父・母・僕・妹の四人家族だ。しかし、僕以外──すなわち全員──の態度が冷たい。母は「大学生の癖に彼女の家に泊まるなんて」と元々お泊まり自体不満を抱いていて、父は息子が連泊することに不快感と苛立ちを露にしていた。恐らく僕のいない間に妹を含めた3人で愚痴大会を開催していたのだろう、妹も従来の態度ではなく、僕への当たりがキツい。そう、家庭内に居場所を失ったのだ。

別に両親に対して元々好印象を抱いていたわけじゃない。母親は過剰な神経質(もはや強迫的)と頻繁に激昂する上に、人に謝罪ができずネチネチグチグチするような性格である。当然母には友人がほぼいない。
父親は稼いだ金を酒・タバコ・タクシー・パチンコに費やす浪費癖の激しい人だ。毎晩必ず深夜1時頃まで飲み歩き、タクシーで帰宅する。寝坊したらこれまたタクシーを配車して出勤する。50代後半だというのに住居は未だに賃貸で、銀行口座に貯金はない。ちなみに、深酔いして帰ってくると、寝ている家族を叩き起すように大声で罵倒する。「お前の子供だからお前が育てろ」と母に宣言し、育児放棄をしてきた人間でデリカシーみたいなものが欠如した人間である。

帰宅して1日経ったが、今日も家族の当たりはキツい。特に母親。顔は見なければ目も合わせず、無言と無視を決め込んでいる。更には、洗面所で入浴後にドライヤーで髪を乾かしている母を横目に見ながら、僕がそばのトイレで用を足したが、トイレから出た時には母の姿はなかった。手を洗い自室に戻ると、""避難していた""母はまた洗面所に戻った。完全に避けられているのだ。

繰り返すが、そもそも家族に対して好印象を抱いていないので、今更そのように邪険に扱われたところで、「あ、そうですか」という感想と不快感しか抱かず、こちらから歩み寄って仲直りするつもりは毛頭ない。さっさと大学を卒業して就職したら真っ先に荷物をまとめて実家を去りたいと思うし、絶縁したいとすら思っている。居心地の悪さを感じながらも、馴れ合うつもりは決してない。むしろ血縁関係があること自体を呪いたくなる。

ところで今日は、精神科の診察があった。カウンセリングと主治医による診察があった。僕は強迫性障害であり、今は「彼女に対して不誠実を働いたのではないか」という不安を抱えて生活を送っている。極端な例を持ち出すと、「彼女以外の女子を可愛い/綺麗と思っただけで、罪の意識を感じる」など。今日はカウンセリングでそこら辺のことを取り扱った。

例えば、「昼ごはんはマックにする?モスバーガーにする?」と彼女に尋ねられた時、僕は次のような思考をする。
""彼女は選択肢を2つ提示してくれているが、実はほんの少し気持ちがモスバーガーに寄っていて、今日はどちらかというとモスでご飯を食べたい気分かもしれない。そこで僕が反対の選択肢《マック》を選んでしまったら不愉快にさせてしまうかもしれない""
こう考えた結果、僕は「どっちでもいいよ、(彼女)の食べたい方選んで」と答える。

その話をした時に、カウンセラーが反応した。
「幼い頃に、選択肢関連で理不尽に叱られたことがありますか?」
と僕に訊いてきた。思い当たる節はある。
「例えば食事の際、料理を盛り付けるため皿を出そうとする時、似たような2種類の皿があって、どちらを使うか母に訊くと、母は『こっちに決まってるでしょうが!!』と激怒するようなことがたくさんありました」
そう僕は答えた。

母はmy ruleや拘りが極めて多く、母以外の3人はその拘り(言ってしまえば神経質さ)について理解に苦しんできた。カウンセラー曰く、「強迫的思考の傾向は元々素質として君に引き継がれているんでしょう。そこへ火に油を注ぐように、幼い頃からずっと理不尽に激怒され恐怖心を植え付けられたから、今の性格ができあがってしまったんだと思います」。

納得である。
母は僕の可能性を否定し続けてきた。何かチャレンジしようとしても「お前には無理だ」と頭ごなしに何度も何度も否定してきた。だから自己肯定感が著しく損なわれている。そして、母が理不尽に激昂を繰り返すことで恐怖心を植え付けられた僕は、「人に嫌われたくない」「人に好かれたい」という人の顔色を常に窺う八方美人になった。
元々の素質として継承された強迫的思考傾向に、自己肯定感の欠如と八方美人に恐怖心でファイナル・アンサー。母親の教育は""世紀の大成功を成し遂げた""のである。

つまり、僕が今、強迫性障害で苦しんでいる原因を辿ると全て母親にあったのだ。加えて、""父の育児放棄""。父が全く関与しないことで、母親の影響をストレートに受けることになってしまった。母だけでなく、父もギルティーだ。

親の金で親の失敗が明るみなったのは何とも皮肉な話である。
僕は早く実家を""捨てたい""。血縁関係があること自体、呪いたくなる気持ちをきっと理解して頂けると思う。僕の7年間の苦しみ(さらには闘病生活7年間に収まらず、一生矯正されることのない自分の性格や思考パターンによる苦しみ)をもたらした毒親2人を、僕は生涯憎むだろう。

早く実家を出て彼女のもとに逃げたい。避難したい。匿ってほしい。

早く彼女と結ばれたい。

今の僕は、彼女によってしか癒されず、彼女のそばでしか安堵できない。彼女のそばにしか居場所はない。

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