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7665日の物語 27

営業の世界では「未達は悪者・達成は正義」なのだ。ここまで目標達成して

なおかつ大きく上回ったら、管理職で本社に戻ってこい!といわれても何ら

おかしくない。でも。。。僕はそれが嫌だった。まだ若いし東京という町に

ある本社で落ち着くような人間ではない。現場で「どうしたらいい?」とい

う仲間と一緒に周って成績が取れた時の達成感や、お客様とのつながりの方

が大事で、「管理職なんて年取ってからなればいいや」って思っていたの

で、勤務期間が少なかったので退職金は殆どないが、営業成績歩合が2000万

ほど貰えたのですぐやめた。「いやー、楽しんだ!」という感じだ。

僕は地元に戻り、師匠の家にお金は全部渡した。現金だったのでびっくりし

ていたが、営業で得た正当な報酬なので「お礼に」と受け取って貰った。

そういえば師匠が「ケンタッキーの日」を作っていて、みんな嬉しそうに食

べていたなぁ・・・というのを思い出し、今度はケンタッキー・フライドチ

キンで働いてみる事にした。僕は外回りの営業経験者である。「どうしたら

お客さんをもっと呼び込めるだろう」とか「なんでバイトさんはこんなにす

ぐ辞めちゃうんだろう」などと毎日働きながら考えていた。これらの問題が

クリア出来たらすっごい売れるだろうなー!売れたら面白いだろうなー!っ

て思いながら働いていた。「クリスマスにはケンタッキー!」というフレー

ズがある。確かにクリスマス前から年末年始にかけて地獄のような忙しさ

だ。でもなんか、、、平凡だ。 だって50メートル先にあるマクドナルドで

はいつも行列が出来ている。社員というのは「スタッフ」に始まり、「副店

長」「店長」「エリアマネージャー」「マネージャー」と昇っていくのだ

が、僕が2番目に配属された田舎の、古く綺麗とは言えない店舗ではアルバ

イトさんもパートさんも少なく、社員もすぐに辞めてしまう様な店舗だっ

た。当然大赤字で潰れてしまうんじゃないか?という感じである。一日にお

客さんも数人しか来ないし、『なんでから揚げに骨が入っとるんだ!』とお

叱りをうけるような地域だった。幸い田舎だけに競合店(マクドナルドとか

ロッテリアとか)は無かったので、「これ、うまくやれば人気店になるんじ

ゃないか?」と考えてサンタの衣装着て田舎道を歩いてみたり、お店の前に

あるケンタッキーおじさん(カーネル・ハーランド・サンダース)の横で一

緒に固まって宣伝してみたりしてみた。僕のお店はその田舎では知らない人

がいないくらい有名になった。売り上げも急上昇!僕は「スタッフ」から

「副店長」を飛び越えてその店の「店長」となった。飛び級昇進だ。これは

嬉しいし楽しい(笑)今までよりも、もっと好きに出来るのだ。クリス明日

前になると「真空パックの鶏もも肉」が各店舗何本!とノルマとして課せら

れる。

僕の県には38店舗ケンタッキー・フライドチキンがあったが、どの店舗も売

れなくて困っていた。そりゃそうだ、アツアツのケンタッキーチキンが食べ

たいのであって、お客さんは「真空パックの鶏もも肉」には見向きもしな

い。今は幾らか知らないが、当時は1本1200円と結構な金額した。そんなも

のを(そんなものと言っては申し訳ないが・・)お店運営とは別にノルマと

して何百本とあるのである。多くの店長が売れ残ってしまうので自腹で購入

し、その後どうしていたかは知らないが・・・という状況だった。これだっ

て売れば売上である。「どうしたら売れるか」を考え、僕は年末のご挨拶用

の贈答品として先ずはアルバイトさんやパートさんに薦めてみた。この「真

空パックの鶏もも肉」はいうなれば「鶏のハム」である。ケンタッキープレ

ゼンツ「鶏のハム!」と銘打ってみたところ、売れすぎて足りなくなり、他

の店舗から貰わなければ間に合わなくなってしまった。ここでも年間売り上

げを3倍にし、僕は自分の県で1番売り上げのある忙しいお店に配属となっ

た。ここで成果を上げられれば次は「エリアマネージャー」である。そう、

ここが道場から近い、50メートル先にマクドナルドがある、県で一番売り上

げのある店なのだ。僕が1番最初に配属された店舗である。あの時は何もで

きなかった。でも今は店長だ、ある程度何でもできる。しかもよくよく調べ

てみると、「売れるお店」とはいえ、日本のケンタッキー・フライドチキン

の中でも1番ではない!!35番目くらい。これは僕の営業本能に火をつける

には十分だった。先ずは日本で1番売れるケンタッキーのお店を作る事が第1

目標。その為には地域で1番愛されるお店を作る事。人が作って人が売って

人が買ってくれて喜んでくれる。それならばまず愛されることが1番だと考

えた。僕は出来る限りの手段を使ってアルバイトさん・パートさんを募集し

て集めた。多い時は150人くらいいただろうか。そしてことごとく褒めた。

『今の接客すばらしい!!、お客様また絶対に来てくれるよ!』

『今のお辞儀キレイだったねー!お客様から見たらあのお辞儀は美しい!

最高だよー、ありがとうー!!』

『うちのお店のカウンターにいる皆さんの笑顔の素敵な事!!こんな笑顔で

いらっしゃいませ!!って迎えられたら、絶対また来たくなるよねー!!』

『君の作ってくれるフライドチキン、なんでこんなに美味しいの?それ、

みんなに教えてあげてくれないかな(笑)』

『君、商品パックするのすごく早くて綺麗!間違えないしすごいよ!僕に

そのテクニック教えてくれないかな?』

などなど。



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