りゅうこころ ryukokoro

作家・りゅうこころです。 この世から『消えてしまいたい』と思い詰めてしまう人が少しで…

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作家・りゅうこころです。 この世から『消えてしまいたい』と思い詰めてしまう人が少しでも減るように、これからも頑張ります!

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  • りゅうこころのブログ

    講演や会社講義、カウンセリングなどでよく訊かれる事を詳しく書いています。その他、なるべくタイムリーな話題にも触れていきたいと考えています。

  • 私がヘレンケラーを殺した

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うえすぎくんの そういうところ Season.7 青春の内側編 『第96話 父親の愛情』

第96話 父親の愛情 「どういうこと? なんで?」 「詳しいことはわからないけれど、高熱出して自分で病院行くって出て行ったら『入院です』って電話があって、ご両親お仕事で居ないからあかね先輩が手続きやら着替え持って行ったりやら動き回っていたって。帰ってきて着信履歴見て連絡くれたって言ってた」 「ただいまー。まあ、すごい! 玄関入った瞬間からピカピカだしお米も炊いてくれているし、柚子葉も琥珀も頑張ったわね」 「あら、本当! あっちもこっちも隅々まで目が行き届いているのを感

    • うえすぎくんの そういうところ Season.7 青春の内側編 『第95話 フンス!』

      第95話 フンス! 「早く終わらせるって……最初から三本取る算段、というより自信があったっていうの?」 「うん。ジジイがどうして元気な片腕だけを異常に鍛えさせたのかはわからないけれど、そのせいで今のたくみんはバランスがバラバラじゃん? だから一本目は潜りこんじゃえば投げられるって自信があった。二本目は警戒されちゃってあの長い腕に苦戦したけれど、掴んじゃえばね。三本目は力任せに振り回してくるってわかってたから、最初から寝技で行くつもりだった。技あり取られたのは余計だったけど

      • うえすぎくんの そういうところ Season.7 青春の内側編 『第94話 パジャマトーク』

        第94話 パジャマトーク 小さく頷いた後、緊張でカサついた唇を潤わせるようにオレンジジュースに口をつけた。 「たくみ君、道場に現れたと思ったらいきなり土下座して『姫嶋さんスマン!』って、なにごとかと思ったわよ。話を聞いてみて男の子同士だし、彼は熱血タイプだから『そういうのもあるんじゃない? 』って思ったけれど、そういえば。仲直りさせて握手させるまでは……って言ってたけれど、その先の展開はいつ考えたの?」 「それはーほら、話の流れじゃん! あたしも煮え切らない態度にイラッ

        • うえすぎくんの そういうところ Season.7 青春の内側編 『第93話 少女の涙』

          第93話 少女の涙 沈黙、そして凍結。 流れ出し、噴火しかけていた活火山が麓から一瞬にして凍り付いた。 はるか昔に巨大隕石が落下して途轍もない地殻変動が起こり、恐竜などの生物が絶滅して永久凍土に覆われたと授業で習った状態はこんな感じだったのだろうかと想像できてしまうくらい、動きも言葉もその全てが凍り付いた。 私たちの視界に写る唯一無二の可動は、ポタポタと瞳から頬そして顎を伝って流れ落ちる少女の涙。それは凍てついた洞窟の僅かな突起から流れ湧く命の根源であるかのように温か

        うえすぎくんの そういうところ Season.7 青春の内側編 『第96話 父親の愛情』

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          うえすぎくんの そういうところ Season.7 青春の内側編 『第92話 カオスな空間』

          第92話 カオスな空間 「この場で破門を言い渡されたくなかったら、道の精神に則り真剣に立ち会ってください。不要な手加減や無気力が見られた際には容赦なく止めます」 かなり厳しい条件を提示しているけれど、このままでは友情にまでヒビが入りかねないと判断しての決断であり、両者ともに恐らく互いの本気を知らないであろう危険を回避するための立ち合いでもある。とはいえコハクは明らかに体格で劣るし本来階級も違うのだから思いっきりぶつかれば良いし、たくみ君はその体格を生かして寝技に持ち込んで

          うえすぎくんの そういうところ Season.7 青春の内側編 『第92話 カオスな空間』

          うえすぎくんの そういうところ Season.7 青春の内側編 『第91話 ちょっと待って』

          第91話 ちょっと待って 「そうだったのか。そんなの何も知らずに『好きです』なんて言ってごめん。それにりゅうせい、勝手に暴走して暴力振るって本当にすまなかった」 「たくみ君の気持ちは嬉しかったよ。ただ私にはその思いに応えることができなかったからこちらこそごめんね、さっき言ってくれたみたいにお友達としてこれからも仲良くしてくれたらもっと嬉しいな」 「お互い痛い思いしたんだし、仲直りして握手もしたんだから昼間の事はもういいじゃん。たくみにそんな風に思って貰えて僕は幸せだよ」

          うえすぎくんの そういうところ Season.7 青春の内側編 『第91話 ちょっと待って』

          うえすぎくんの そういうところ Season.7 青春の内側編 『第90話 これは命令だから』

          第90話 これは命令だから 誰にも見つからないようにトイレに駆け込み、制服の砂を払い落として顔を洗う。口をゆすぐと洗面台が真っ赤になったので、口の中を結構深く切っているっぽい。 (柚子葉ちゃんにこんな姿、絶対に見せられない。コハクちゃんが体調崩して姫嶋家にいるのは不幸中の幸いだったかも) 普段からカバンに入れてある使い捨てマスクを着けて何とか授業はやり過ごし、神谷さんには 「今日は頭が痛いので、部活お願いね」 伝えてそそくさと家に帰った。バッグを雑に床に置き、いつも

          うえすぎくんの そういうところ Season.7 青春の内側編 『第90話 これは命令だから』

          うえすぎくんの そういうところ Season.7 青春の内側編 『第89話 失望したわ』

          第89話 失望したわ 話しをしてくれた母上に頭を下げ、強い決意と信念を胸にシャワーを浴びる。顔に降りかかるお湯を感じながら『柚子葉ちゃんと結婚させてください』私の隣で両親に頭を下げている彼の姿を想像すると、つい嬉しくて口元が緩んでしまう。髪を洗いながら、体を拭きながら、髪を乾かしながら。同じところを何度も想像して緩んでみたり嬉しくて泣きそうになったりしながら、予備のスポーツドリンクを持って階段を昇る。 (アイスマクラもそろそろ交換しなきゃだろうし、クスリが効いてお粥くらい

          うえすぎくんの そういうところ Season.7 青春の内側編 『第89話 失望したわ』

          うえすぎくんの そういうところ Season.7 青春の内側編 『第88話 ファーストキス』

          第88話 ファーストキス 「まず最初に、恋をしている女の子は絶対的に強い。ただしこれは大きく二極化し、もの凄く強くなる場合と弱くなる場合があります。ここまで質問は?」 「はい……全く分かりません」 「素直でよろしい、では続けます。前者は恋心を力とするもので、私はこれを『女の恋心最強法』と勝手に名付けました。いい加減なものだと思うかもしれないけれど、目の前の人間が実践して本当に強くなったのだからやってみる価値は充分にあるとおもうわ」 母上が何を言おうとしているのか皆目見

          うえすぎくんの そういうところ Season.7 青春の内側編 『第88話 ファーストキス』

          うえすぎくんの そういうところ Season.7 青春の内側編 『第87話 女として未熟すぎます』

          第87話 女として未熟すぎます 「涙を拭いて鼻も噛みなさい。そうね……初恋の人でありながら今も尚ずっと変わらず、彼のお嫁さんになりたい。それが私の夢かな」 「ユヅハすごい、すごすぎるよ!」 「えへへ。でもこんな女の子、重いよね。それでもその時が来たらプロポーズしてもらえる様に頑張らないとね」 「プロポーズすべき時に出来ないようなら、あたしが思いっきりお尻をひっぱたいてやるよ! それはそうとさっきの話しだけど『自分がバドミントン辞めてアルバイトするから認めてあげてくださ

          うえすぎくんの そういうところ Season.7 青春の内側編 『第87話 女として未熟すぎます』

          うえすぎくんの そういうところ Season.7 青春の内側編 『第86話 嬉しくて涙が出ちゃった』

          第86話 嬉しくて涙が出ちゃった 「クチュン!」 ここのところ結構よく聞く、コハクちゃんのかわいらしいクシャミ。 「なんだか最近クシャミしているけれど、大丈夫?」 「うーん、ユヅハのところで貰っちゃったかも」 「お熱は?」 「計ってないからわかんない、クチュン」 前髪を持ち上げておでこ同士くっつけると、ほんのり温かい。 「お熱あると思うよ? 風邪薬飲んで学校お休みしたら?」 「大丈夫だよ。あたしが休んだらユヅハが『自分のせいで……』なんて言い出すのは目に見え

          うえすぎくんの そういうところ Season.7 青春の内側編 『第86話 嬉しくて涙が出ちゃった』

          うえすぎくんの そういうところ Season.6 次への一歩編 『第85話 色ボケジジイ!』

          第85話 色ボケジジイ! 互いに腹ばいになり右手同士を座布団の上で組み合って、周囲には男女問わずヤンヤヤンヤの大歓声。 なんじゃこりゃ…… 「よし、準備できた。ユヅハ、いつでもいいよ」 「それでは始めます。用意、はじめ!」 始まりの合図とともに開いている左手は強く拳を握り、師範の手を握り潰さんが如く全力で左に体を傾ける。一瞬にして額に浮き上がる汗が自分の必死さを物語っているが、周囲は先ほどまでの大歓声はどこへやら、まるで別の場所に来たかのように一転静まりかえった。

          うえすぎくんの そういうところ Season.6 次への一歩編 『第85話 色ボケジジイ!』

          うえすぎくんの そういうところ Season.6 次への一歩編 『第84話 身のほどを教えてやる』

          第84話 身のほどを教えてやる 「ふむ、スピードは足らんが今までの中で一番ええ柔道だ。左腕が使えない間、ワシが言ったとおりちゃんとトレーニングしてきたようだな。はーん」 「はい。朝昼晩三セット、一日も休んでいません」 「休んだか休んどらんかは動きを見りゃわかる。二年生に対してつまらん感情が無いのはええことじゃが、ちょっとオーバーワークじゃな。はーん」 「いえ、自分はまだまだ足りないと思っております」 「口で言ってもわからんな、直接教えてやるからワシを投げてみ。はーん

          うえすぎくんの そういうところ Season.6 次への一歩編 『第84話 身のほどを教えてやる』

          うえすぎくんの そういうところ Season.6 次への一歩編 『第83話 地獄絵図』

          第83話 地獄絵図 すっかり通い慣れた道をいつもと同じ時間に同じ景色を見ながら兄妹仲良く歩く。駅の改札を出て学校まで約三百メートルの間にユヅハやたくみんと合流して一緒に校門をくぐるのが最近の流れになっている。 昨日はあれから彼女の熱も上がらず、両師匠が帰宅されたタイミングで我々も失礼しようとしたところ『沢山のお土産があるから』とのことで母ちゃんまで迎えに行ってもらえて楽しい時間を過ごした感じ。道場を構えていると外泊なんてなかなか出来ないからつい嬉しくなってしまうのはわかる

          うえすぎくんの そういうところ Season.6 次への一歩編 『第83話 地獄絵図』

          うえすぎくんの そういうところ Season.6 次への一歩編 『第82話 ピンポンダッシュ』

          第82話 ピンポンダッシュ 「これって、もしかして。たくみ君? それともりゅうくん?」 ドアノブに掛けてあったビニール袋を片手に首をかしげている。 「とりあえずこっちは女子二人だし、風邪ひいているんだから中に入ろう」 厳重に施錠してキッチンテーブルの上で袋を開く。中身は厚切り食パンとハム、ヨーグルト、低脂肪牛乳、バナナなどなど。この時間にスーパーが開いているとは考えにくいので、まだ日が高い時間に買い揃えてくれたものだと考察できる。それにしても引っ掛かるのは『なぜこの時

          うえすぎくんの そういうところ Season.6 次への一歩編 『第82話 ピンポンダッシュ』

          うえすぎくんの そういうところ Season.6 次への一歩編 『第81話 王子様からのプレゼント』

          第81話 王子様からのプレゼント 「眠れないの?」 「お昼間にぐっすり寝かせてもらったからね。気にしなくていいからコハクは眠ってね」 「うん……ねえ、ユヅハ。そっちのお布団に行ってもいい?」 「風邪、うつっちゃうかもよ?」 「あたしは大丈夫だよ。ダメ?」 「いいよ」 時計はまだ八時半。寝るにはかなり早いけれど、自分が女子高生デビューする時に泊まりに来てくれた楽しい時間を思い出して、お話がしたかったのだ。まだ高熱で苦しんでいる様ならさすがにこんなことは言い出さない

          うえすぎくんの そういうところ Season.6 次への一歩編 『第81話 王子様からのプレゼント』