他人事


  #1

 何が起こったのかなんて分からない。あの時、何が起こったのかなんて誰にも分かりはしない。
 あの時の僕は確かに僕だが、今の僕とは何の関係もない赤の他人だ。いや、今の俺か?今の私か?そんなことすら分からない。
「死にたい!」
 とりあえず駅のホームで叫んではみたが、誰もこっちを見ようとはしない。近くにいた人々は少しびくついて身体を反応させたが、決して大好きな携帯電話から視線を外すことはなかった。
 もっと離れた人々に至っては何事もなかったかのように前髪をイジリ「ルンルン」と鼻歌を歌ってナルシシズム全開の事なかれ主義を発動させていた。
「電車に飛び込むのだけは止めてくださいね」
 隣に並んでいた二十代くらいの女が俺の心の中を読んでありがた迷惑な忠告をしてきた。
「そんな迷惑なことはしません」
 俺は自殺が嫌いだ。ましてや電車に飛び込むなんて迷惑な自殺、この俺がするはずがないだろう。ムカつく女だ。
「あなたのその判断は正解です!花丸!二重丸!」
 隣に女なんていなかった。なんだ、またいつもの妄想か。相変わらずの独り舞台だ。もうそろそろカーテンコールに移りたいんだが……どうしようもできないのがこの私だ。私が私である所以だ。
「間もなく電車が通過します。下がってろ豚野郎共」
 いつになったら電車は止まってくれるのだろうか?もうかれこれ二十秒以上は待っている。
 タバコの火を消し俺は「私」へと変身する。あぁ、もうタバコは止めたんだったっけ。じゃあ今の僕は結局「ボク」か。
 無い物ねだりもいい加減にしろよ、クズ。


  #2

 アパートの向かい、ショートカットの女性。露わになるバスト、きっとアレは夜の蝶。
 僕はそれをカーテンの隙間から覗く。バレないようにそっと覗く。性に奔放なそのメス豚を見下す。嘗め回すように見下す。
 彼女はいつも微笑んでいるように見える。実は僕に気付いているのではないだろうか?あぁ、もうそろそろ我慢の限界だ。もう二十秒間もこうやって覗き続けているんだ。我慢しろという方が無理な話だ。
「ピンポン♪」
 来てあげたよ。僕だよ、僕。僕様が来てあげたんだよ。だからほら、早くドアを開けろよこのメス豚。
「ガチャ」
 ついに会えるね。僕の愛しの夜の蝶。ほら、早く早く。いきなり抱き付いてもいいんだよ。もう準備はできているから。
「……あのぉ……誰ですかぁ?」
 酷いじゃないか!夜の蝶。僕は、いつも君を……いや、もういいや。飽きた。今すぐ愛してあげるからね。
「お邪魔しまーす!」


  #3

 青い傘を差した男の子が、僕に話し掛けてきた。
「おにいちゃん、ボク、本当は赤い傘がいいんだ。だから、おにいちゃんの血をちょうだい」
 ありきたりな質問だ。子供の頃の俺もよくこの質問をして赤い血を採取しようとしたものだ。
「傘を利き手と反対の手で持ってみなさい。そうすればそんなことどうでもよくなるから」
 もちろん対処の方法も知っている。この答えで僕はきちんとした私という大人になれた。
「意味が分からないよ、この偽善者」
 あれ、おかしいな。そっか、この子は頭が悪いんだな。きっと家が貧乏で充分な学習ができていないのだろう。可哀相に。よし、もっと優しく身振り手振り教えてあげよう。
「ほら、こうやって右手で持っている傘を左手に持ち替えてごらん。傘の色などどうでもよくなるだろう?血なんて欲しくなくなるだろう?」
「ウザいよ、おばさん」
 あれ?言葉遣いは完璧なのにな。
 



  #4

「これ、打ってみる?ほら、酒と一緒に呑めばますます気分が高揚してきますよ。ほら、もう何も怖くないでしょう?」
「本当だ!」
 馬鹿なヤツ。これは何の変哲もないただの砂糖だ。頭の弱いヤツはこれだから困る。だがしかし、こういうヤツらがいるから俺はおまんまが食えている。
「楽しいーっ!楽しい楽しい楽しいーっ!」
 野良犬のように育ってきた。本当に酷い暮らしだった。デカ過ぎる屋敷で毎日毎日世界三大珍味や極上ステーキを食べさせられる。そんな地獄のような暮らし。俺はそんな生活に嫌気が差し十五歳の時に家出をした。
 右も左も分からずに夜の繁華街を歩き回った。手持ちの金は九十一万円しかなく、俺はただただ途方に暮れていた。
 そんな時に出会ったのが街のお巡り黒部だ。その薬物中毒のお巡りは、俺に砂糖の運び屋の仕事を与えてくれた。
「ドラッグ砂糖で人狂わせてハイテンションしてそのヤロに着ぐるみ着せてボロ儲けする計画しよぜ!」
 勝手に自分一人でヤッテロと言いたくなったがそいつが全身にダイナマイトを巻いていたので俺は何も言えずにその提案に乗っかった。この日本という国が世界の中心に立てないのはこういった輩が上っ面だけの正義を振りかざしているからなんだと知った瞬間だった。
「いいですね」
 そして俺みたいなNOと言えない臆病者の事なかれ主義がゴキブリのごとく繁殖しているからだ。
 ハハハハハ。もうこうなったらとことん正義に加担してやろうじゃないか。


  #5

 流行りの厚型テレビでは、不倫騒動で人気急上昇中のコメディアンが、”なんだかんだPEACE”というバラエティ報道番組で饒舌を振るっている。
 「昔ですね、中国人の友達が苦しそうにしゃがみ込んでいたので、『何か風邪薬飲む?バファリン飲む?』と訪ねたことがあったんですが、『西洋医学の薬はいらねぇ!俺は漢方しか飲まねぇ!』と怒鳴られて好意を無下にされてしまいました。いやぁ~乳酸菌飲料のポイ捨てをする人って何なんでしょうね?まずは腸内環境よりも地球環境に気を使って欲しいものです。まぁ、でもなんだかんだ言ってこの世界は平和だと思うんです。“一日一匹のライオンを倒さなければならない”というロンTを着て走っている人がいたり、全身黒ずくめで金髪ロングヘアーのヤンママ的な人が、スケボーを華麗に乗りこなしながら三輪車の娘を引き連れていたりするので。えぇ~最後に、銭湯の脱衣所で知らないおじいちゃんと手が触れる瞬間があったのですが、思いの外スベスベしていてキュンとしたことは内緒ですよ」
 内緒にしてくれと言いながら全国ネットのテレビでペラペラと喋るコイツはきっとアホなんだなと思い口角を上げてみたが一切楽しい気持ちにはならなかったのですぐにやめて真顔に戻りテレビを消した。
「つまらないな」
 誰かが僕にそう言った気がしたが、僕がその空気振動に返事をすることはなかった。
「つまらないね」
 誰かがまたそう僕に囁いた気がしたが、僕はもう既に瞼を閉じ両手を組み神に祈りを捧げ始めていた。
「楽しい!楽しいな!」
 あぁ、ボクがまたなんか言ってやがる。


  #6

 “自分がやられて嫌なことは人にもしない教”の信者が、街ゆく人々に強引な勧誘活動を一点の曇りもない笑顔で行なっている。
「それだけで世界は平和になります。それだけで世界は平和になります」
 こいつらは自分が見えていないのか?こいつらは自分の言っていることとやっていることが矛盾していることに気がついていないのか?胸糞が悪い。反吐が出る。
「アナタたちのその行為が僕らにとって嫌なことなのですが!」
 五月蝿いからそう言ってやった。しかし、周りの目は冷たくその反応は残酷だった。
「お前のその発言が気持ちが悪いわ!そもそも僕らってなんだ!勝手に街の人代表みたいな面すんじゃねぇぞこの童貞野郎!」
 嗚呼、なんでこの人は僕が童貞って分かったんだろう。


  #7

 とある東南アジア系のラッパーが、音楽の駅という番組で、意気揚々とラップを披露していた。
「♪就活に失敗してしょうがなくBOMB!♪就活に失敗してしょうがなくBOMB!♪」
 まさに意気YOYOといった感じだな、と僕は心の中で大声で呟いた。横ではこの手で手にかけた女の亡骸が横たわっているというのに。
 僕はなんてCOOLでカッコイイんだ。こんな状況でも心拍数は一切乱れない。そもそもこの女が悪いんだ。こんなにカッコイイ僕の好意を無下にするから。鏡を見るたび思わず表情が綻んでしまうくらいのイケメンのこの僕の行為を。ありったけの勇気を。
 嗚呼、なんだか興奮してきたなぁ…ムラムラしてきたなぁ……おっと、こんなところにちょうどイイ女の裸体があるじゃないか。これは良いオモチャになりそうだ。何も文句を言わず僕の思い通りになってくれる最高のオモチャ。
 そうか、僕はネクロフィリアだったのかもしれないな。さぁて、39歳最後の夜に、思う存分童貞を卒業しようじゃないか!


  #8

「イケメンですよね!どれくらい遊んできたんですかぁ?」
 僕は童貞だ。理由は特にない。理想はかなり高い。プライドもめちゃくちゃ高い。その影響からか、39歳になった今でも童貞を守り続けている。
「まぁ、フツーだよ」
 僕は平気で嘘を吐く。爽やかな笑顔で、平気で嘘吐き心を穢す。
「またまたぁ~今まで何人の女性を泣かせてきたんですかぁ?」 
 よくある質問だ。こういった類の会話にはもううんざりしている。しかし、今回はどこか違った。この人からの質問は、どんなによくあるくだらない質問でも、僕はうんざりしなかったのだ。むしろ、この人との問答は楽しいし、なんとも言えない充実感がそこにはあった。そして何より、この人には嘘を吐きたくなかった。さっき不意に吐いてしまった嘘が、いつもより心を強く締め付けるのを確かに感じていた。
「今から二人で抜け出さない?」
 そんなセリフが自然と口からこぼれ落ちた。この人になら正直に言えそうな気がした。この人から溢れ出ている母性のようなものが、僕の全てを包み込んでくれそうな気がした。
「はい」
 それからすぐに僕たちはその合同コンパを抜け出して、どちらが言い出したわけでもなく大人のホテルへと向かっていた。
「……ごめんね、うまくできなくて……」
「……うん、大丈夫だよ……初めてだから…しょうがな…ぃ…ハハ…ハハハハハ!やっぱ無理!童貞とかウケる!まじやばい!おっさんウケる!」
 愛情が憎しみへと変わる瞬間の音を確かに聞いた。


  #9

「事件のニュースとかはさ、加害者がどういう生き方をしてきて事件当時どういう状況だったのかとかもちゃんと放送して欲しいよねぇ~」
「急にどうした?」
「そうすればもっとみんな色んなこと考えて根本的なところから変わっていくと思うんだよねぇ~」
「例えば?」
「うーん、もし加害者が小さい時虐待されてたとしたら、何故そうなったんだろう?貧困かな?食い止めることはできなかったのかな?周りの人や組織は何もしなかったのかな?国は何をしてたんだろう?ダメだなぁ…よし、政治家になろう!みたいなね」
「いや急に飛躍するね」
「もしかしたら小さい時オオカミに育てられてたって人もいるかもしれないしね」
「いやいねぇだろ」
「まぁちょっとやってみようぜ」
「うん、まぁ暇だからいいけど」
「よし、じゃあ俺あの人気ニュースキャスターのエセスマイルさんやるから海湖カワイテルさんやって」
「え…まぁ海湖カワイテルさんになるの夢だったからいいけど」
「あーりがとうございます!それでは、今入ったニュースです。本日未明、中学教師になりきれなかった男が、男子中学生との口論の末、見事に言いくるめられ大号泣し、精神を病み狂ったように一人芝居をお披露目したそうです。それでは、ご覧ください」


  #10

 僕はなぜ教師になったのだろうか。なぜ、教師になってしまったのだろうか。物事には必ず理由があるなどといった気休めはいらない。神の計画なんて戯言もまっぴらだ。
「先生先生はいはいはいはい!質問攻めします!」
 今日も始まった。
「何かな?」
「先生は男ですか?!女ですか?!元気ですかぁ~?!!?!!?」
 ハハハハハ!!!!!
「おい君、その発言は無礼だとは思わないのか?」
 ブーーーーー。
「その無礼無礼という押し付けが無礼ではないのですか?!!???!」
 イェーイ!!!!!
 何故だか涙が止まらなかった。


  #11

 世間では最近、本当に働きたい人しか就活をしなくなり、資本主義が揺らぎ始めている。若者たちがついに、資本主義のヒモ状態からの脱却を図り始めたわけだ。
「おいお前、なんで働かないんだ」
「働く?ナニソレオイシイ?」
「美味しいさ。働いて金持ちになればいくらでも美味しい思いができる」
「金持ちはムカつくだろう?」
「ハハハハハ、お前みたいなやつが争いを生むんだよ」
「じゃあ死ねというのか?」
「あぁ、臓器移植をして死んでくれ」
「差別だ!人権侵害だ!」
「いや、これが普通です。何を言っているんですか?」
「当たり前じゃないですか。解り切っていますよ」
「あなたはまるでトイレを覚えられないペットですね」
「私は成功者だ!!!私は成功者だ!!!」
 そんなこんなで超絶ニートで大金持ちの僕ちんは気まぐれで引きこもりの憂鬱野郎供に総額一億円を配る遊びを始めた訳だ。
「さぁて、どうなるかなぁ?」
 どうにもならねーよ馬鹿が。


  #12

「性善説と性悪説、アナタはどっち派ですか?」

「うーん、どっちでもないかな。俺は二元論で判断するのは間違ってると思ってる。白黒つけたがる人が多いけどこの世界なんてごっちゃごちゃんなんだからさ。そしてそれが生きてることが正しくて死ぬことが間違いって考え方を導く。死は本当に悪いことなのかい?生きてることが本当に幸せなのかい?そんなん分からねぇよな」

「結局はシマウマってことですかぁ?」

「いやいやパンダパンダ!」

「白人と黒人交互に並べドミノドミノ!ドミノドミノ!」

どっと疲れた。

私はただのイエローモンキーに過ぎないのにさぁ……。

「結局はシマウマってことですかぁ?」

この世界は白黒つけたがりすぎる。

「いやいやパンダパンダ!」

いつまで経ってもモノクロームから抜け出せないでいる。

「白人と黒人交互に並べドミノドミノ!ドミノドミノ!」

ぶっ倒しちまえばいい。

混ぜ合わせてみればいい。

この世界は限りなくカラフルな灰色だ。

カラフルな灰色だ。


  #13

ワイドショーが今日も大盛況なフリをしている。

「今回の不倫の件についてどう思いますかぁ?」

「好きにやってくださいって感じです。人様の肉欲なんて全く興味がありません。それが気になる人はただの欲求不満です。それか元から性根が腐っているか」
「えぇーあたしちょー気になるんですけどぉー」
「お前は腐り切ってるよ」
「ひどーい」
「まぁ性根が腐ってないと偶像なんてできないからな。天職だよ天職」
「ありがとうございまぁーす」
「しかしそんな偶像が今の日本の象徴とされている事態はいかがなものかと……マジで沈むど、日本」

「日々、様々な事件やスキャンダルが報道されていますが、その度に試されているのは実はこちら側なのであります。神は我々がどう思うかを知りたがっているのです。神座に深く腰掛け髭を触りほくそ笑みながら……斜に構えた態度で……生意気に……それでは、また来週!」

来週も絶対に観なきゃ!!!

ぃよーし次はクイズ番組だぁー!!!

「さてここでクエっチョン!!!女装癖のあるアナタが交際している彼女にウィッグの抜け毛から浮気を疑われたとしたらどーするー???」

A, 死んでも白を切る
B, 浮気をしたと嘘をつく
C, 女装癖を打ち明ける。
D, コロス

「さぁ、アナタの決断は!!!」

一昔前まではAかBで割れていた答えですが、ここ最近ではDが90%を占めていますのでとても自由で寛大な世の中になったなぁ~と思う次第でございます。


  #14

「働こうって気はあるんだろう?」

「いえ、資本主義に支配されるくらいなら潔く自害致します。ビジネスなど商業的なものは苦手でございます」

「それじゃあ公務員にでもなれよ。警察官とか」

「すみません、僕は何より公務員さんを軽蔑しています。警察官など以ての外。彼らは何よりイカれ狂っています。ルールや規制が罪や悪を生んでいるのにも関わらずそんなこととは微塵も思わずそれを正義の名の下にねじ伏せ英雄気取り。警官など正義という凶器を振り翳す犯罪者に過ぎないのだ!公務員など人から金をせしめる泥棒だ!Free My Mind!!!Free My Mind!!!Free My Mind!!!Free My Mind!!!」

僕は時折空に地獄を見る。

「さっさと罪を白状しろ」

僕はいつでもこの声に悩まされる。

「何様のつもりなんだ!あなたたち警察がいなければこの”ボク”は傷付かずに済んだのに!ボクが傷付けてしまった被害者一人だけで済んだのに!あなたはボクという人間を傷付けボクの家族をも傷付けこの事件を知った世間の人々の心を傷付けた!それなのにあなたは讃えられ国の犬としておまんまの食いっぱぐれもないなんて!イかれた世の中だ!あなたが正義という毒の剣(ツルギ)を振りかざす度にこの世界は歪んでいくんだ!恥を知れぇい!反省しろぃ!あなたこそ地獄へと堕ちるべきなんだ!」

頭ん中のことを全部具現化してたら僕は立派な第一級戦犯ダァ……戦犯ダァ……。

なぁ、正義さんよ。
罪をまた一つ作り出した気分はどうだい?
きもちいかい?
うれしいかい?
快感なんだろう。
おぞましい遺伝子だ。
嗚呼、お前さんのその遺伝子が糞餓鬼に受け継がれているかと思うと吐き気がするぜぇ……。
あゝ、だからいつまで経ってもこの世はよくならねぇ……よくならねぇのさ……。


  #15

喉を掻っ切った。

「痛いか?痛いだろう?お前が今まで正義という凶器を振り翳して傷付けてきた人々の分の痛みを味わえ。存分に味わうんだ」

何も言えずに泣いていた。
無様だと思った。
正義はこの世で最も不必要なものだと悟った。

動きたくなくなったので手足をチョン切ってみました。

すると僕は貴族のように扱われるようになり生まれて初めて充足感を得ました。
僕の先祖は貴族だったとあの胡散臭い占い師に言われていましたがそれもあながち間違いではなかったのかなと彼をこの世から葬り去ってしまったことを少しだけ後悔しました。

しかし、すぐに忘れました。

僕はボクにしか興味がないから。
ボクは僕が一番大事だから。

イカれてるってんならイカれてるの定義を教えてくれよそこの無教養俗世人よ。

何を言っているんだい?

人間の肉は美味いよ。

だからさ、安楽死を認めてさ、生きる気力のない人々を食そーぜ。
食糧難乗り越えよーぜ。
人類削減して地球環境守ろーぜ。

「それじゃあお前が真っ先に死んでくれ」

ハハハ。

俺はどう考えても喰う側だろうが馬鹿が。
そんな間抜けなお前こそ死んじまえ。
どうせロクな人生歩めねーんだ。
どうせロクに子育てもできねーんだ。
お前見たいなのがこの世界をダメにする
この世界衰退させ退化させる。
もう悲劇を繰り返さないでくれ。
頼むから大人しく死んでくれ。
大人しく人の餌となってくれ。

目を閉じると空間に奥行きを感じる。
この世界がフェイクってのはもうとっくの昔に解ってるんだからさぁ、その真の姿を早くミセテクレヨ。

ただただ暗い奥行きただただくらい奥行き。

「一般人という普通中毒者に負けるな!!!警官という正義という名の凶器振り翳す犯罪者に負けるな!!!」

どうして人が人を殺した時だけ躍起になって罰しようとするのでしょうか。

死因が殺しってだけなのに。

人はいつしか死ぬのに。

その日がその人の命日だったってだけなのに。

元から決まっていた運命なのに。

自分は普段から動物や植物の命を奪ってるのに。

自分は普段から虫や微生物を踏み潰しているのに。

偉そうだ。

偉そうだなぁ……人間って。

嗚呼、目を閉じると網目状の奥行きを感じる……網目状の奥行きを感じる。

あゝ、目を閉じると……あゝ、あゝ、あゝ、あゝ……。


  #16

「この世の全てが神なんだぁ!!!人も虫もウイルスも空も蜘蛛もミジンコもカレーライスもビッチワイフも包丁も、全ては、この世の全ては、この世の全ては神なんだぁぁぁぁぁ!!!!!」

過去のことをいつまでもいつまでも喧しい。耳障りだ。

己が卑しい人間だと気付いたならば迷わず自害するのが世の為人の為。
しかし、そういった人物に限ってそんな御立派な気付きは得られない。
いつだって犠牲になるのは優しく繊細な者たち。
卑しき者たちを完全に正しく迫害したい。
僕がその対象になったって平和の為ならば一向に構わない。

過去に犯した過ちの分、現在でしっかりと償うんだ。

さぁ、全てを失え。

そうしてまた0からのスタートを。

「うるせーぞ!!!ウルセェんだよ!!!」

批判の文化、批判の文化。

大半の人間が批判という簡単でチープな麻薬に手を出し溺れ沈む。
足掻け。
そしてそのクダラヌ己を殺せ。
気づいた時にはお天道様が笑ってらぁ。

お天道様が笑ってらぁ。

しかしね、本当はそんなつまらぬ批判に押し流されてしまうアイデンティティの低い国民性の方が最も厄介で根深い問題点なのさ。

ハハハ、いつまで人はこんな下らぬことで争いを続けるのでしょうか?
他の惑星の皆様に恥ずかしくて顔向けできません。
ハハハ、既にもう笑われているかもしれませんね。
とりあえずは国のトップと官僚と政治家を一掃しましょう。
金は抹殺しビジネスを抹消します。
人は自然に帰属すべきなのです。

帰属すべきなのです。

ショービジネスも排除排除排除。
芸能界などというものが無くならない限り人間は本当の幸せを得ることは出来ないでしょう。
よく知りもしない作られた偶像たちではなく自分を一番に愛してください。
アナタは誰よりも尊く素晴らしい存在なんだ。

美しい存在なんだ。

ハハハ。

「容姿をいじられるということは容姿以外にいじるところがないということどんなにこの先見た目を変えていったっていつまで経っても中身の無い空っぽ人間のまま容姿を気にする人間こそ誰よりもの容姿差別者広い世界に目を向けろ貧困に泣く子供たちの泣き声が聞こえないのか馬鹿野郎め」


  #17

気分転換にラクガイタ。

俺は絵描きには向いていない。
途中で”グシャ”ってしたくなっちゃう。
だから絵描きはスゴいと思う。
絵描きを志す人も然り。
一番オーソドックスな既存のジャンルに飛び込もうとするその勇気、感服。
よっぽど好きなんだろうな、描くことが。
モノ凄い努力をしてんだろうな、きっと。
血を吐くような、壮絶な努力。
目を血走らせながら、自傷行為をしながら、余計なことを考えずひたすらに描く。

みたいな。

ってことでした。

そして、裏側をめくると、”あゝ亞嗚呼”と書いてあった。

今よりきっと純粋に病んでた。

今よりきっと純粋に病んでた!!!


そして!今!何故!僕は!ここに!いる!?

何故!僕は!ここに!いる!?


  #18

何も見えてないんだなぁ、アンタは。

「そう、男だ女だ言ってる輩が我が物顔で歩いている内は戦争は無くならない。全ては無意味なのに。この世は空虚なのに。人はその無意味で無価値なものにしか希望を見い出せない愚かな低俗生物。間違いなくこの世の底辺。もういっそのこと皆で手を取り滅びよう。滅びてしまおう」

誰も耳を貸しません。

皆が皆生きていることが幸せだと思い込んでいるからです。

生が善で死が悪。

一体いつから人は洗脳されてしまったのでしょうか?

死は救いなのに。

死は救いでしかないのに。

猿だからしょうがない?

そう、人とは実験用のサルだからしょうがないのさ。

と、そんなサルたちを性質別に分けて街を作って見ました。

人を殺したい人、殺されたい人、殺されたくないけど逃げ惑いたい人、死体を処理したい人、死体で実験したい人などがいる街はキラキラサイエンスタウン。

性的欲求に支配されている人、変態変質者、性犯罪者、犯されてみたい人、彼らの精神を研究したい人の集まった街はエロティシズムセラピータウン。

戦争したい人たちの街はウォータウン、修行したい人がいる町はソウタウン。

このようにして人の性質によって住む地域を分けた結果とても平和な世の中になりましたとさ。

さて、普通中毒患患者が集まるゲンダイシャカイタウンに住むあなた、どこの地域に行きたいかもう決まりましたかぁ?


そんなサルたちの様子は、”人間 ~地球人という自由意志~”という題名の映像作品として一部地域を除く全宇宙に配信されているのだそうです。


  #19

「なんで目を合わせて喋ってくれないんだい?」

「すみません。本当親不孝で申し訳ないのですがどうしても二人のことが好きになれません。これは物心ついてからずっとです。ずっと息苦しいのです。ずっと緊張しているのです。安心して身を委ねられないのです。親という感じがしないのです。すみません。すみません。親不孝ですみません。生まれてきてしまってすみません」

そうして彼は土下座をし床に頭を打ち付け続けた。

それでも親は何もしてくれなかった何も言ってくれなかった。

そんな彼と僕は同一人物!!!

そう、そんな”ボク”は皮肉な人間になってしまったので頭を壁に打ち付けて純朴な人間になりましたが数年も経たないうちにまた元通りの人間になってしまいましたのでまた壁に頭を打ち付けましたら純粋な人間になれましたがまた数年もしないうちに劣悪な人間になってしまいましたのでまた壁に頭を打ち付けましたら無垢な人間になれましたがまた数年もしないうちに元のクズ人間に戻ってしまいそうなので僕は今から”ボク”の頭を切り落としたいと思います。

その肉片はぜひ食糧難に役立ててください。

そうしたら僕もボクも彼も少しは報われそうな気がするので。

よろしくお願い致します。

「すると私は消しゴムを使うことを覚えた」

消えるわ消える、見事に消える。

だから生涯で一度くらいは自分の子供を作ってみたい。

誰の子でもいいから違う女性とたくさんの子供を作ってみたい。

とか昔は思ってたけど、やっぱりちゃんと愛し合ってできた子供じゃないとヤダかなって、最近は思うようになったから、しっかりと愛せて尊敬できる女性と自分のこともちゃんと好きになってからこの世で一番好きだと言えるような子供を授かれればいいなと思います。

とまぁそんなこんなでこの間は何かゴメンね。
もう一生あんなこと言わないからね。

ね。ね。

だから謝らせて。
どこに隠れてるか教えて。

ね。ね。

「謝りたいよぉ~謝らせてよぉ~!!!」

すると私は消しゴムを使うことを覚えた。

すると私は消しゴムを使うことを覚えた。

消えるわ消える、見事に消える。

消えるわ消える、見事に消える。

消えるわ消える、見事に消える。

消えるわ消える、見事に消える。

君は僕に変わって欲しいのかい?
今のボクは好きではないということなのかい?
そうかいそうかい。
ほら、働いている男など御満といるさ。
どうぞどうぞそこらへんの男と大好きなセックスをして憎たらしいガキ作って苦しみの結婚生活を送ればいいさ。

ワタクシめはこのまま好きなように生きて好きな時に死にますのでさようなら。


  #20

今日という日にリアル世界で一人の人を幸せな笑顔にすることができたことを誇りに思います。

お墓参りにも行けました。

ネット世界ではどうだったでしょうか?

もしそんな人がいたら嬉しいです。

もし嫌な気持ちにさせてしまっていたらすみません。

僕は今日という日をしっかりと覚えておきたいと思います。

忘れるまで覚えておきたいと思います。

それでは、また。


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