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自由律俳句 #293

【1パックの重みに感謝を】


2023年、初夏。
卵は高級食材と化した。
キャビアと鶏卵はもはや同義語である。

ある日、
奥さんが卵を探しに行くと旅立つ準備をしている。
きっとスーパーの卵売り場は戦場なのだろう。

私はその背中を見送ることしかできない。
どうか卵を見つけて無事に帰宅することを願うだけである。

いいや、卵はもういい、いいんだ。
その戦場から無事に帰宅してくれれば良い。

私は風呂場の掃除をしたいから一緒に行けない。
お風呂用の洗剤がそろそろ無くなると思うから、
詰め替え用のやつを買ってきてほしいと伝え、
卵売り場を目指して旅立つその姿を見送った。

送り出した小さな背中が大きく見える。

数時間後、

「ただいまー」
帰宅した奥さんのエコバッグの中には、
純白に輝く1つの卵パックがある。
「卵だー!」私は思わず叫んだ。

聞くと、数店舗のスーパーを巡ったそうだ。
何も置かれていない卵売り場。
その光景は、虚無そのものだったろうが、
時間帯によれば購入できるんだとか。
なんということでしょう。

さすが、奥さん。
いや戦士よ!
とりあえず今日はもう休んでほしい。
私たちは、冷蔵庫にその1パックの戦利品を大切に収蔵した。
もう食べるのがもったいない。
ここぞという時に食べようと思った。
そう、そして賞味期限という現実が近付いてくるのであった。

To be continued…

次回、自由律俳句#294【久しぶりのTKG】
絶対読んでくれよな!(アニメの次回予告風にしてみました)


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