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【ベンチャー企業経営者/人事向け】人事制度を作るときに気を付けるべき3つのポイント

はじめまして。清家 良太(せいけ りょうた)と申します。
大学卒業後に人事としてキャリアをスタートして以来、自社の人事責任者または人事コンサルとして、さまざまな会社に携わってきました。

近頃は、ベンチャー経営者の方から人事全般についてご相談いただくことも増えているのですが、そのなかで「個人的には普通だと思っていたこと」を、「新たな気づき」として受け止めていただくことが意外と多いと感じています。
この記事は、そのなかでもまず「人事制度を作るときに気を付けるべきポイント」について纏めています。ちゃんとした経営者/人事の方からすると「当たり前では?」と思われることばかりかと思いますが、少しでも皆さんのご参考になれば幸いです。

【前提】
・この記事では、人事評価制度をメインに、他制度一般を対象にしています。

【この記事の想定読者】
・~300名規模までの、成長期ベンチャー企業の経営者/人事。
・現時点で人事制度がない、もしくは制度を改定しようと考えている、上記経営者/人事。
・事業部内で、人事・組織開発的役割を担っている責任者。

◆そもそも人事制度とは?
「人事制度とは、従業員一人一人の持つパフォーマンス力を最大化し、組織運営を更に安定したものへと導くための施策であり、組織のあり方そのものを細かく明文化したもの。」
(下記リンク参照)
https://bizhint.jp/keyword/42422

つまり人事制度とは、企業が実現したい社会・達成したい目標・ありたい組織としての姿などを実現するための、人事上のツールです。各社によって似ている部分はあるものの、全く同じ会社が無いように、全く同じ人事制度は存在し得ません。

その前提でお話させていただくと、私の経験上、ベンチャー企業経営者/人事が初めて人事制度を作るときに気を付けるべきポイントは下記の3つです。

1. 他社の制度を真似ようとすることなかれ
2. (1つの)人事制度に多くの成果を求めることなかれ
3. 制度「設計」に力を注ぎこみすることなかれ

ではなぜそう考えるのか、以下私見を述べさせていただきます。

1. 他社の制度を真似ようとすることなかれ

人事制度(特に人事評価制度)は、過去の変遷の中で、
「保有能力をマネジメントする時代」→「発揮能力(行動)をマネジメントする時代」→「役割の大きさや職務など『仕事』を基準にマネジメントする時代」を経て、今は「0ベースで自社独自の有り様を追求し、自社にもっとも相応しい基準を見極め人材マネジメントを行う時代」が来ています。
シンプルにまとめると、「先人たちが知恵を絞って試行錯誤を行い、失敗を繰り返し、その時々の流行というかメジャーな評価制度があったけど、今は正直『これが正解だ!』という型がなくなっている。自社にあった型を見つけるしか無い」ってことですね。ゆえに、人事の仕事は難易度が高く、面白い時代です。
また、各社ごとに経営戦略・人事戦略、フェーズや従業員数、カルチャーも異なります。そのため同じ目的で同じ制度を企画して実行しても、同じ成果を得ることは難しいのです。
制度そのものではなく、他社がどういった検討プロセスからその制度の企画に至り、その結果はどうであって、どのようにPDCAを回しているのか?を参考にすべきと私は考えます。

2.(1つの)人事制度に多くの成果を求めることなかれ

ベンチャーの成長期においては、人事・組織課題が乱発します。その中で人事制度はある種特効薬と思われているケースもあり、1つの人事制度に複数の課題解決を期待して企画しているケースを散見します。特に人事評価制度は、その期待値が高いケースが非常に多い。
私の経験上は、1つの人事制度に対しゴール設定は1つ、多くても3つまで。PDCAサイクルを回す中で、制度をブラッシュし、社内への浸透と波及効果の拡大を図ることが望ましいのではないかと思います。期待値の幅とゴール設定が広ければ広いほど、思い切った施策を実行することが難しくなり、結果として成果が出づらくなります。事業と同じく、どれだけ課題と施策を絞ることができるか?を重視いただくとよいかと考えます。

3.制度「設計」に力を注ぎこみすることなかれ

課題を絞り、さあいよいよ制度設計。いろいろなメンバーとブレストする中で様々な意見がでたり、進んだり戻ったりと楽しい時間でもあります。そして、やっとの思いで制度が完成。設計に力を注ぎすぎたあまり、運用はメンバーに任せたりなど、急に対応がおろそかになり、結局成果が出ない。こんなケース、とてもよく見かけます。
人事制度は、設計された瞬間に完璧なものなどはあり得ません。制度設計がフェーズ0、それを実行して生まれる課題を徹底して改善し、成果を出し、それが継続的かつ自然に望ましく運用される状態になり、はじめて成功と言えます。この運用が軌道に乗るまでに起こりがちなのが、企画者と違う人が運用するなどの中で、制度に込めた魂が失われること。企画者は必ず定着するまで責任をもつようにすべきと私は考えます。リソースの張り方としては、設計1割・運用9割くらいに振り切ってもよいのではないでしょうか。クイック&ダーティに作って、徹底して改善していくほうが、成功します。

最後にもう1点。上記を意識しつつ、この変化の大きい時代に人事施策を進めるうえで大切なことは、「人事こそ積極的にチャレンジして、それがダメだったら、また次トライします!と、人事が気軽に社員と対話できる信頼関係を作れているかどうか」だと、私は心から思います。

人はロジックではなく、ハートで動く。
それを真に理解して動ける経営者/人事であるために、これからも一緒に日々精進していきましょう。

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