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5歳児がはじめてアルバイトした話

三連休のあの日、僕は戦車を買いました。

あなたは戦車を買ったことがありますか?
僕は5歳の三連休の時に戦車を買ったことがあります。

買った戦車はドイツ軍のキングタイガー。

第二次世界大戦の戦線に投入された時点で、その重装甲および強力な主砲に対抗できる戦車は、事実上存在しなかったといわれる戦車の王様。

はい、おわかりのとおり僕は5歳のとき、プラモデルのキングタイガーを買ったのです。しかもアルバイトで稼いだお金で。

この記事を書いている今も三連休(24年2月11日)のため
今回は5歳の子供がどうやってプラモデル代を稼いだのかを
あの日の三連休を思い出しながら、お話ししたいと思います。

●あの日、宇宙人VS地球人の脳内戦争が勃発した


5歳の頃の僕は休みの度に戦争ごっこをするのが好きでした。
あの日も7つ歳が離れたお兄ちゃんの図鑑を何冊か引っ張り出して壁を作り、段ボールで天井を覆い、要塞を作成。その隙間にウルトラマンなどのおもちゃを配備し、目に見えない宇宙人の襲来を待っていました。

そして「ババーン!」「チュンチュン」などと、絶叫!「脳内戦争」が勃発したのです。

でもどう考えても地球人側が危ない(どう危ないかはうまく説明できないですが、、、)。

そんなとき思い出したのが、お兄ちゃんが言っていた「キングタイガー」というドイツ軍の最強戦車の存在でした。

僕が地球を守るためには、キングタイガーの力を借りるしかない。今すぐ、助けを求めなければ!!そして四畳半に広がった戦場をあとにして、僕は家を飛び出したのです。

●5歳児が考えたアルバイトとは?


とはいえ、僕は母子家庭の次男坊。お金なんて1円も持っていません。
でも当時(40年以上前)は子供とか関係なく、ものを買ってくれる仕組みが世間にはありました。

そんな仕組みの中で僕が目を付けたのは「空き瓶を売る」ことでした。

40年以上前は日本酒はもちろん、ジュースなどの飲料は、ビンで飲むのが主流でした。そしてそのビンをリサイクル習慣があり、酒屋さんに持ち込むと1本30円くらいで買い取ってくれたのです。そこで僕はビンを集めて酒屋で換金し、キングタイガーを買おうと思ったのです。

●大家さんとリアカー


最初に訪問したのは僕が住んでいるボロアパートの大家さんの家でした。

なぜなら大家さんは農家をしており、三連休の1日だけ農家をお休み。
いつも使っているリアカーを使わないことを知っていたからです。

どうせビンを集めるなら、たくさん集めて、いっぱいお金を稼ぎたい。
そう考え、僕は大家さんを訪ねたのです。

荷物を運ぶ定番のリアカー

●大家さんの心を動かした変な理由


「ピンポーン」。
呼び鈴を押し、大家さんを待つ僕。

たまの休みのため、パジャマ姿で大家さん(80歳過ぎのおばあちゃん)が出てきました。

作戦通りと思いきや、子供の僕はなんて言ってリアカーを借りれば良いか、急にわからなくなってしまいました。

怪訝な表情の大家さん。まごまごする僕、、、。

1分ほどの沈黙のあと、僕は思い切って言いました。
「地球人が負けそうだからリアカーを貸してください」

大家さんの表情は不思議そのもの。
でも「今日だけならいいよ」とあっさりOKをもらえました。

●いよいよビンの回収へ


こうしてリアカーを借りられた僕はビンの回収に出発しました。

当時の家庭は、今でもそうですが家の中にビンがあったら、とても邪魔。そのためどこの家庭でもビンは玄関の外に保管しておくことが多かった。

そこで僕はリアカーを引きながら近所を歩き回り、空き瓶を見つけてはチャイムを押し、「ビンをください」とお願いして回ったのです。

でも元々ビンは現金になるもの。いくら小さい子供がビンを欲しいと言っても簡単にもらうことはできませんでした。

そこで考えたのが「隣の〇〇さんからもいただきました」という一言。

悪気があった訳ではないのですが、今、考えるととんでもなく嫌なガキ。
いわゆるライバル心をたきつけてビンを集めて行ったのです。

●リアカー隊、結成!


そんな5歳児のリアカービン集めですが、40年以上前とは言え、普通の光景ではありませんでした。そのため近所の友達が何人か面白そうに寄ってきました。

それはまるでパレードのよう。5歳児が引っ張るリアカーのうしろに子供たちがぞろぞろと歩いています。

するとなぜか「おーい!」と遠くから声かけてくれる人が現れ、こちらから声をかけなくてもビンをくれる人たちが現れたのです。

まさに人が人を呼び、ついにはリアカーいっぱいのビンが集まりました。
こうして集まった友達にリアカーを押してもらい、無事に酒屋さんにビンを運んだのです。

●酒屋さんに言われたこと


リアカーと子供とたくさんのビン、、、。
酒屋さんは目を丸くして言いました。
「今回はビンを買い取るけど、もう二度とやっちゃいけないよ」

自分が大人になったからわかりますが、やはり5歳児がお金を自分で稼ぐのは少し早すぎました。

でもこれで地球の平和は守られます。早速、友達とお金を山分けして、意気揚々とキングタイガーを購入して帰宅したのですが、「馬鹿なことをするんじゃない!」と母親にど叱られました(笑)。

でもこれで地球の平和は守られたのです。

●大人になって気づいたこと


三連休になると思い出すのがこの話です。
実は最近さらに大人になって気づいたことがあります。

それは5歳児の僕は「行動経済学」を無意識に使っていたということです。

行動経済学とは「論理」や「情熱」とは関係なく、なぜか人を動かしてしまう力のこと。

・小さなハエが小便器に描いてあると、なぜかそこに狙いを定めてしまう
・レストランを選ぶときは、食べログの点数が高い店を選びがち
・買い物をするとき、いつも同じブランドの商品を手に取る

このように私たちの行動は、思いも寄らない何かに影響をされています。

僕が戦車を買った時の話で言えば、3つの行動経済学が使われていました。

①ビコーズ・バリエーション
 無意味な「だって」という理由でも誘導されてしまう。
 →「地球人が負けそうだからリアカーを貸してください」と頼んだ
②バンドワゴン効果
 迷ったら、他人に倣おうとする
 →「隣の〇〇さんからもいただきました」と言いながらビンを集めた
③フォーカシング効果
 注目を引くと対象に対して感情が動く
 →パレードのように友人がリアカーのうしろを歩く

世の中には知っておくと得する知識があるのだと、三連休の度に思い起こします。

あなたも地球を救いたくなったら「行動経済学」を学ぶことをおススメします。

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後田良輔(うしろだりょうすけ)|ビジネス書作家
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