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創作【掌編・ショートショート】

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こちらのマガジンには4000字以内のショートショート・掌編小説を収録しています。
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2020年9月の記事一覧

葬儀がもうすぐ終わる【ショートショート(約1600字)】

葬儀がもうすぐ終わる【ショートショート(約1600字)】

 喪服の黒が横に列を成している。

 俺もその列の中にいて、後は骨になるだけのひとりの女性を入れた棺から目を離せずにいた。そんなに頻繁に顔を合わせてきた関係ではないが、大人数の中にいてもひと際目立つ顔立ちが印象的なその女性の顔はしっかりと思い浮かべることができた。

 最初に彼女の死に顔を見たのが俺で、その美しさを残したままの死体に惹かれ、まだ生きているのではないか、と疑ってしまうほどだった。

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アパートの一室にて【ショートショート(約1000字)】

アパートの一室にて【ショートショート(約1000字)】

 暖房のついていないひんやりとしたアパートの一室で、青年の顔をつたって、汗がとめどなく流れる。

 何度も拭った茶色のパーカーにはまだその名残りがあった。

 外の景色をさえぎるカーテンは閉じ切っておらず、すこしだけ開いたカーテンに目を向けた青年は軽く眉間にしわを寄せながら、足を早めてその淡黄色の布を掴んだ。その時、視界に入った雲はねずみ色だったが、雨はすでに止んでいた。

 青年はカーテンを閉め

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白雪の消える日【「彼女がいなくなる日」増補改稿版】(約2000字)

白雪の消える日【「彼女がいなくなる日」増補改稿版】(約2000字)

 会社帰りのうす暗くなったひと気のない通りで、ぼくの住む街に例年よりすこし遅めの冬が訪れたことを、目の前で舞う小さな雪の粒が報せてくれた。

 ぼくの着ているジャンパーに落ちた白い粒は、払う間もなく視界から消えていく。

 雪国で生活する者にとっては、降った、と表現するほどの雪でもないが、冷たい風と合わさって秋から冬への移り変わりを実感する。四季の変化は自身の受ける印象、主観に従うべきだ、というあ

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小説は、書けますか?【ショートショート(約2000字)】

 何気なく窓のほうに目を向けると、もう外は夜の景色が広がっていた。俺は、ひとつ息を吐いてパソコンの画面に目を戻す。書きかけの小説原稿は完成間近だけど、締め切りに間に合うかどうかは微妙なところだ。

 そもそもこんな小説どうせ相手にされるわけないんだから……。

 諦めの感情が頭をもたげそうになるが、だめだ、と首を横に振って気持ちを奮い立たせる。俺は文章を打ち始めようと、キーボードに指を置くが、まっ

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船を待つ【ショートショート(約3200字)】

船を待つ【ショートショート(約3200字)】

 青年がひとり流れ着いた場所は無人島でした。

「ここはどこだ……」

 目を覚ました青年は、開口一番、辺りを見回しながらそう呟きましたが、それに返ってくる人の言葉はひとつもなく、青年の耳に届くのは寄せては返す波の音だけでした。

 意識を取り戻したばかりの思考はまだ混濁していて、青年は自分が天国か地獄にいるもの、と勘違いしていました。生きていることのほうが不思議に思えるほど、意識を失う直前の青年

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