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読書感想文 『死んだ山田と教室』

【死んだ山田と教室】


第65回メフィスト賞受賞


夏休みが終わる直前、人気者の山田が死んだ。その山田は教室のスピーカーに憑依したようだ。



スピーカーから聞こえる山田とクラスメートたちの会話は思わず笑ってしまうものが多く、その場面を外で読んでなくてよかったと心から思った。くだらない面白さほどシンプルに面白い。


各章毎に月日は流れていき、成長することのない山田と、徐々に卒業とその先の進路へ向かっていく同級生との隔たりは心痛むところも多い。それだけでなく、普段意識はあるけれど姿が見えないからって、色々言われている山田の気持ちを思うと、人に対するネガティブな発言は慎まなければと改めて思う。



一方で、その時点でいくら楽しい時間を一緒に過ごしていても、互いに成長していき別々の道を歩んでいくと関わりが薄れていく。それは当たり前で明るいことではないけれど、それ自体を共有出来る相手が身近にいるなら、それだけで素晴らしい事だと思い出させてくれる。


ラストは山田がどうスピーカーから成仏(死んで)していくのかという場面になるが、ここはそれまでのくだらなさを一蹴するような場面で読みどころ。


笑って、苦しんで、愚痴って、言い訳して、喧嘩して、諸々全部やるのが青春で全部やれるのが青春のよさだなーと思った。



もし、読者に二年E組在籍の人がいるのなら(今後なったら)、是非あの『合言葉』を言って山田が答えてくれるのか試してみてほしい。



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