オーケストラの楽器たち 木管楽器編 Part 2
前回からの続きです。
今回はクラリネット、ファゴットを紹介します。
1 クラリネット
クラリネットは木管楽器の中ではオーケストラの仲間入りした時期が遅い楽器です。この楽器が開発されたのが1700年頃だと推測され、古典派の時代になって徐々に使われ始めた楽器です。ハイドンは活動後期になってようやく本格的に使い始め(交響曲99~101、103、104番やオラトリオ『天地創造』、『四季』など)モーツァルトは交響曲31、35、39、40番やオペラ(『フィガロの結婚』『魔笛』など)、また独奏楽器としてクラリネット五重奏曲、クラリネット協奏曲などの作品を遺しています。これらもほとんどが活動後期の作品です。
ベートーヴェンの時代になってくると彼の交響曲ではすべての作品にクラリネットが使われ、この頃にはオーケストラ定席の楽器となりました。
現在クラリネットはB♭管とA管の二つの種類が使われており、前者は楽譜に書かれた音より長2度低い音が、後者は楽譜に書かれた音より短3度低い音が出ます。すなわち移調楽器です。
一般的にはフラット調の作品にはB♭管が、シャープ調の作品にはA管が使用されます。作品によってはB♭管とA管を持ち替えるものもあります。
吹奏楽においてはB♭管が使用されます。
音域は以下の通りです。
先程も述べましたが、クラリネットは移調楽器なので実際になっている音は以下の通りです。
クラリネットはシングルリードの楽器で、他にシングルリードの楽器はサックスがあります。
木管楽器の中では一番表情豊かな楽器で異なる音域でそれぞれ違った表情が現れます。音域にはそれぞれ名前が付いています。
高音になるにつれて甲高く鋭い音になります。
シベリウスの交響曲第1番の第1楽章冒頭では長いソロが与えられています。
他にはラフマニノフの交響曲第2番の第3楽章でクラリネットソロが活躍します(0:31~から)。
クラリネット族の楽器として他に使われるのはEsクラリネット(日本ではエスクラと呼ばれる)とバスクラリネット(バスクラ)です。
Esというのはドイツ語でE♭のことをさしており、いわゆるE♭管クラリネットのことをいいます。この楽器も移調楽器の一つで、楽譜に書かれた音より短3度高い音が鳴ります。通常のクラリネットよりも幾分か短いみためをしています。
通常のクラリネットに比べて甲高い音色が特徴で、作品によってはかなりおどけた印象をもちます。
ベルリオーズの幻想交響曲の第5楽章ではEsクラリネットが活躍する場面があります(46:15~から)。
バスクラリネットもB♭管の楽器で、B♭管クラリネットより1オクターヴ低い音がでます。楽器はかなり大きくなり、持って演奏することが難しくなるので、ストラップやエンドピン(楽器の底部にある床に立てて楽器を支えるもの)で固定して演奏します。
チャイコフスキーの『くるみ割り人形』より『金平糖の精の踊り』ではバスクラリネットが活躍する場面があります(0:16~)。
それぞれの音域は以下の通りです。
Esクラリネット、バスクラリネット両者ともにクラリネット奏者が持ち替えたり、独立したパートがあったりと作品により様々です。
他にはアルトクラリネット、コントラアルトクラリネット、コントラバスクラリネットなどがありこれらは使用頻度は低いです。
古楽器ではバセットホルンというものが存在し、モーツァルトの作品の中ではこの楽器を使用している作品がいくつかあります(レクイエムなど)。
2 ファゴット
ファゴット(バスーン)は木管楽器の中では低音域を担当しており、オーボエと同じダブルリードの楽器です。
ファゴットはフルート、オーボエと同じく移調楽器ではないので楽譜に書かれている音がそのまま出ます。古典派時代ではチェロ、コントラバスとともに低音域の旋律を奏でる役割で、独立したパートを持たない作品も多かったですが、やがて独立し個別の役割を与えられるようになりました。ある程度大きさのある楽器ですので演奏時はストラップを付けて演奏します。
歯切れのよい音が特徴でスタッカート(音を短く切る)は効果的です。基本的には低音を担当しますが、作品によっては高音を用いることがあり、その際はテノール記号を用いて記譜します。
音域は以下の通りです。
デュカスの『魔法使いの弟子』ではファゴットが活躍する場面があります。(2:10~から)
ファゴットの高音域を活かした作品はストラヴィンスキーの『春の祭典』です。冒頭のファゴットソロはかなり高い音域で演奏されています。(0:41~から)
ファゴット族の楽器で他にはコントラファゴットがあります。こちらは記載された音符よりも1オクターヴ低く音が出ますので、ピッコロ同様移高楽器の一つです。木管楽器の中で最低音を担う楽器です。
ファゴットよりも荒い音色が特徴的で、コントラバスと同じ音を出すことによって引き立たせることができます。こちらはかなり大きい楽器のためエンドピンとストラップを用いて楽器を支えます。
音域は以下の通りです。
ラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲ではコントラファゴットのソロがあります(0:46~から)。
こんにちでは中規模程度の編成以上でよくみられる楽器で、時代を経るにつれてオーケストラに欠かせない楽器となりました。
3 終わりに
今回で木管楽器の紹介は以上です。オーケストラあまり使われないサックスなどはまた別の機会にお話ししましょう。
次回は金管楽器を紹介していきます。
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