岡林リョウ

疲れたひと。

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サブスクホスピタルと犬

裏保険証は5万円で買えるらしい。 頭にアルファベット「G」がつく病院を無制限利用可能となるらしい。 月額も5万円。薬剤費も含まれるという。 但しおくすり手帳には記載できない。そのあたりが合法サービスなのかどうか微妙なところだ。 検査も無料となるが、調子に乗ってレントゲンを浴びまくり、健康を大きく害しても保険は降りない。 そもそも保険会社は裏保険証保持者の契約を無効とする権利があるのだそうだ。 動物にも裏保険証があると聞く。そこまでくるとサブスクサービスといっていいだろう。犬

    • びらんになっている

      はやくくすりをつけたほうがいいですよ 琵琶法師の歌を聞いていたらこんな時間に 頭から足まですべてが青いレースの服を着て、 下着はグンゼなんですよ(すけて見える) きっとオシャレは伝染病なんです くすりをつけたからオシャレはもう来ないですね あなたまるでいのししのようです 鼻先が赤くびらんになっていますから 私はハリガネムシの背中に載って水面を走ってゆくから もうニ度と会えませんね 一期一会はとても日常 さようなら二度と合わない人

      • +3

        ゴールデンウィークの散歩の記録2021

        • 峠の辻|岡林リョウ @ryookabayashi #note https://note.com/ryookabayashi/n/ne8e8cdffa699

        サブスクホスピタルと犬

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        • 未来(ない)日記
          26本

        記事

          悲しみの連鎖が変な方に往くよ

          交差点で無上の悲しみに襲われる。雫が垂直に滴れて地面に黒い染みを創る。周りに気付かれまいと左瞼だけそっと指先で押さえる。でも右目から倍の涙が溢れてくる。前髪を整えるふりをして右手で押さえる。鼻の両の穴から止めどもない流れが顎までつたう。まるで花粉症だ、いっそ顔の上半分を両手のひらで押さえる。すると額の奥にある知らない袋・・・ピンク色の・・・に出口を失った水の全てが集まってきて、一斉に喉の奥に繋がる管をこじ開けると、私が考える間もなく上唇を押上げ下唇をへし曲げ前歯を薙ぎ倒し、大

          悲しみの連鎖が変な方に往くよ

          幽霊

          下宿屋の左を曲がって路地のつきあたりに小さな池がある。溜池の名残だ。緑泥に淀んだ水面には周囲の白壁がぼんやりと映し出され、かすかに月影が光る。前々からこの池がなんとなく気になっていて、つまり好きだった。思い出の香りがする。 深酒をして終いの電車を降りふと歩きたくなった。下宿屋を中心としてぐるりをぶらぶらする。三日月の輝きが瞳孔に突き刺さって俯く。飲みすぎてしまった、と販売機の前で小銭をまさぐる。缶を額に当て、足取りは弧を描く。通りすがりの男が嫌な顔をしたので、悪態を突こうと

          人面の桃

          こんな夢を見た。 梢の間からほとほと落ちる実がある。二つのくぼみの底は闇で、その下には二つの小さな孔と、横一文字の筋がある。どくろだ。 ぶん、と黒々としたものが飛んで宵闇の気配を左右に分ける。かぶと虫は熟液のしたたる腐交じりの香りの実にへばりつき、スカラベのようにごろごろと転がしながらよく見ると沢山のどくろを転がす沢山のかぶと虫がいて、一斉に自分を目指して足を蹴る。白々とした月光が桃をきらきらと照らし上げ黒い足は激しく動きまわる。虫は私の足首を腐った実で埋めてゆく。もうど

          ネクロマンサー

          疲れて倒れこんだまま転た寝をしてしまった。 ・・・右手に泥塗れの洒落首、左手に電極を持っている。電極はパソコンの裏の大きなプラグにつながっている。古風なフォルムのブラウン管を見つめていると、ざらざらした人の顔のようなものが浮かんでくる。 顎のないしゃれこうべから引き出された遠い記憶が画面の上で形をなそうとしているのだ。 私は審神者らしい。 画面から痩せた男がしきりに何かを訴えている。 骸骨の枯れた脳の破片から少しずつ染み出して、記憶が頭蓋に流れ込んでくる。 いつの

          ネクロマンサー

          ロールシャッハ

          2000/9/6(水) この形は何に見えますか。 センセーが開いた紙には、三色の絵の具が潰れている。 シンゴー。 は? 信号。 えー・・・。 なぜ? アカ、アオ、キイロ、だから。 センセーは眉間に皺を寄せて見せる。一旦閉じて、再び開く。 ばさばさばさ! 紙の間から羽音が飛び出た。まんまるの目の前で、原色が羽ばたく。 南の鳥は私の頭をかすめて、壁の穴を目指す。追って穴を覗くとジャングル があって、 赤い花、黄緑色の大きな葉っぱが次から次へと押し寄せてきて、土の香り、 得体の知れ

          ロールシャッハ

          弱い握手

          滅多に握手などしない。 ここ1年で恐らく3,4回ほどしかしなかったろう。 その中に、弱い握手のかたが何人かいて、 その身を案じたりもしていた。 うまく言葉が見つからない。 しかし音はあくまでアグレッシブで、ひたすら求道的なまでに強く、揺さぶるように、囁くようにひびき、 その音があの弱い手から紡ぎだされていたその、余程の気力と、 意思と、 うまく言葉が見つからない。 何かとても、極端な世界を行き来しているな。 ああいうかたがたにとってみれば、私など微温湯暮らし

          ねむたい時間

          「あなたの時計です」 ぼくは枕元に置かれた「肉塊」を見た。白い網目状の繊維がうす桃色の地膚を覆い、巡る小さな肉管が紅い液体を循環させて、どくり、どくりと動いている。 「・・・過労ですね。暫く外に出しておいた方が良いでしょう」 医師は一瞥もせず立ち去った。付き添いの上司が無表情にその後を追う。 人間は誰でも同じ時間の中に生きていると思ったら大間違いだ。君には君、ぼくにはぼくの時計があって、それぞれの時間を生きていくために、それぞれの時を刻み続ける。 夜鐘が死を告げるま

          ねむたい時間

          束の間の幻影

          ・・・何かの影だ。 隣人が騒いでいる。駄目だったのだ。 影は私の前に座り、一言告げて、消えた。 柱時計の長針が、音をたて動く。狭い壁に夕影が、窓辺の人形を映し出す。 私は微動だにせず横たわっている。 そのうち啜り泣きが聞こえてきた。何か犬の遠吠えの様な、恨み言をいう女の様な、様々な音影が漫ろ歩いて鼓膜に触れては去ってゆく。 伝言を伝えに行こうか、行かまいか。 今行くのはまずい。 際限無く暗い光彩が窓外に吹きすさぶ。野分の季節だ。からからという風の音を聞くうちに

          束の間の幻影

          刹那的快楽のための断章

          人間が本当に知覚できる「死」は自分についてのみだ なぜなら人間は一度しか死なないのだから。 (1999/9記) *** 必要とされない気軽さについて 誰にもあてにされない自由さ。 誰にも相手にされない自由さ。 (1999/9記) *** 酒に酔って人を殴るのはサイアクだとゆうが 酒に酔わずとも人を殴れる者のほうが恐ろしい (1999/9記) *** このアスファルトの下には 無数の草の芽が。 突き破れない石板に当たり ひん曲がったまま もやしのように渦巻く無数の草

          刹那的快楽のための断章

          ブルックナーと私

          もう肉の塊といった呈の裸の老人が、右横を向いて座っていた。灰色のパンツだけを着した姿で、大きな木椅子に腰掛けている。その姿は滑稽というより、神秘的に映った。私が入ってきても何の反応も示さない。側に立つ弟子が厳しい視線を向けてくる。そちらを見ないようにしながら、声を掛けた。 「んん」 肯きもせず口も動かず、太い首より僅かに張り出した喉仏だけが揺れた。深い瞳は窓外を見詰めている。室内には、爛々と輝く丸眼鏡の小男と、緩やかに揺れる燭台の炎だけが暗く佇んでいる。 出窓より外は芝

          ブルックナーと私

          木偶人魚

          盗まれた骨(コツ)について話していると左前の質屋が入ってきてこれを買ってくれないかという。朱塗りの盆で小さく文字がひとつだけ、端っこのほうに彫ってある。「蛸」、作者の銘だというがしら無い。だいたい作者の銘なら裏側にでも彫るものだろうと言ってひっくり返してみるとちょうど逆側に小さく「蛇」と彫ってある。これは何だと尋ねるが客がもってきたものだからと言って答えない。質屋はべつに買ってもらわいでもいいといったふうでどかりと座り込み話を始める。 「・・・その女ってのが信心ぶかくて、い

          インド人の骨

          学生のころ、形質人類学の授業をとっていた。人骨を組み立てる実習があり、ふるびた枯れ枝のような茶色い骨を、足甲の細かいところまできちんと組み合わせてゆく。全て時間という浄水できれいに洗われて、血管跡のひとつも残らない様だから怖がったり気にしたりする学生もいなかった。私は只、出来上がった人骨の予想外の「小ささ」に胸が縮まる感じがした。自分もこんな姿になってしまうのだろうか。授業はつつがなく終了した。 すっかり忘れてサークルの練習にいそしんだあと、飯を食いに行った。行き付けの蕎麦

          インド人の骨