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悲しみの連鎖が変な方に往くよ

交差点で無上の悲しみに襲われる。雫が垂直に滴れて地面に黒い染みを創る。周りに気付かれまいと左瞼だけそっと指先で押さえる。でも右目から倍の涙が溢れてくる。前髪を整えるふりをして右手で押さえる。鼻の両の穴から止めどもない流れが顎までつたう。まるで花粉症だ、いっそ顔の上半分を両手のひらで押さえる。すると額の奥にある知らない袋・・・ピンク色の・・・に出口を失った水の全てが集まってきて、一斉に喉の奥に繋がる管をこじ開けると、私が考える間もなく上唇を押上げ下唇をへし曲げ前歯を薙ぎ倒し、大きな音をたててアスファルトに降り注いだ。これでは渋谷のマーライオンと呼ばれてしまう。信号は未だ青に成らない。灰色の人波が周囲五十センチの間をあけて陽炎のように揺らいでいる。地面には水溜まりが拡がって、マレーシアの国の形を形成してゆく。ああクアラルンプールに逃げたい。

そこで目が醒めた。(2008)

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