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第17回田辺・弁慶映画祭(前編)

田辺・弁慶映画祭とは

コンペティション部門にて受賞の沖田修一監督(大ファンです)今泉力哉監督(第4回 市民審査賞)が、その後商業映画デビューを果たすなど活躍していらっしゃり、若手映画監督の登竜門として注目されています。今回「ロマンチック金銭感覚」はコンペティション部門で応募し、188作品のうちの8作品の中に選ばれ、入選することができたため、念願の映画祭へと向かったのでした。田辺・弁慶映画祭の評判はすこぶる良くて、自主映画を撮り始めたのが2011年だったのですが、自主映画監督やスタッフ陣からの情報でいつも一番行ってみたい憧れの映画祭でした。実は緑茶は本年以外も、監督や企画から携わった作品は必ず提出していましたが、今まで引っかかることができませんでした。それもあって初めての入選!ダンスしちゃうくらい嬉しかった!!地球から別の惑星まで飛ぶ勢いでした。

和歌山紀伊田辺市

11月10日から開催の映画祭に備えて11月9日に和歌山紀伊田辺市に着き、散歩してまず驚いたのは駅前にある味光路。約200m四方のエリアに、居酒屋、バー、スナックが200軒近く集まる和歌山県随一の飲食店街。
率直な感想は「何?ここ?三軒茶屋?しょんべん横丁?ゴールデン街?」
聞いてくださいよ。私の「好き」が凝縮した町だったんです!散歩しながら2軒をハシゴ。これは止まらないなと直感が悟り、明日に備えて早めにホテルに到着。本命の映画祭前に潰れてはなりません。

生まれて初めて食べたウツボの唐揚げ。美味しすぎた・・・・

次の日、初日が始まりました。(11月10日)

タイムテーブルでは驚きのスケジュール!こんなに一日映画を観ることはなかなか無いですが、ライバルでもあり同志の作品を観ないわけにはいきません。4本続けて全部鑑賞。作品と作品の間の休憩が6分ほどだったため。勉強と試練のような時間で、「決められた6分間」という名の精神と時の部屋にいるかのようでした。「あなたは6分間、完璧に休めますか?」というキャッチコピーから始まる予告編(妄想)が頭の中で流れていました。いかに休むかが作品をコンディションよく楽しむ鍵となります。
そんなことを考えたり作品に浸っているとあっという間にオープニングパーティが行われ、マグロの解体ショーも行われ、お寿司とお刺身好きの私にとっては天国のような時間が・・・・そこからはもうなんとも濃厚な時間。映画祭が久しぶりだった私にとって、真の映画好きの方々がここまでいらっしゃるとは!と驚きつつ様々な方々とお話しできてかなり楽しかった。1日目と2日目と上映作品が分かれていたので、私たちの作品はまだ皆さまに観てもらうことができず、とにかく観た作品の話をして盛り上がりました。

2日目、ロマ金上映の日(11月11日)

2日目はとうとう私たちの作品の上映です。やはり大きなスクリーンで観てもらうのも観るのも最初は緊張いたしました。上映後のトークでは緊張のあまりいつもより声が低く、感情のないロボットのような喋り方になってしまいました。観てくださった方からいろいろな質問をいただきましたが、今まで映画館で上映された作品のトークイベントでも質問を受けることがそこまでなかったため、質問者が数々と手を挙げてくださる現象に驚きを隠せませんでした。今回も残りのコンペティション作品全てを鑑賞!驚いたのは今回の最後の上映だった「99%いつも曇り」圧巻でした。もう最初から涙腺が崩壊気味でした。不器用な主人公の人生が描かれていきますが、生活のリアルさが素晴らしい。その上でキャラクターの特徴や性格がわかる演出や脚本も最高で、特に主人公の瑚海みどりさんと二階堂智さんのお芝居があまりにも良くて、何度涙をこぼしたことか。こぼしたというより滝のように涙が溢れ、終わった頃にはお風呂上がりのように肌がツルツルになっていました。あまり書くとネタバレになってしまいそうなので、観た方がいたらお話しましょう。
その後、また飲み会が開かれ、ようやく私たちの作品の意見が聞けることとなりました。時間の許す限り、映画監督人、俳優、実行委員の方、さまざまな方とお話することができました。めちゃめちゃ幸せでした。

3日目、審査発表の日(11月12日)

いよいよ審査の発表です。今回は他の監督たちとも仲良くなった分、少しいつもと違う空気が漂っているように感じ、ああ、コンペティションだったんだと再確認しました。舞台に登壇する前、それぞれが緊張しているように見えました。私自身ももちろん緊張していましたが、事前に佐伯くんとももし賞がもらえなくても「皆さまに観てもらえて楽しんでもらえてこんな場所に呼んで貰えて本当に光栄だった。だから落ち込むことはない。」とお互い言い聞かせていました。ちなみに私があまりにも心配症なので、佐伯くんに「あなたの図太い肝っ玉を私にください。」と頼んだところ、全力で口角を上げ、漫画のような三角の口の形を作って小刻みに動く壊れたピノキオのような振る舞いで心の中のタフ佐伯をジェスチャーで私の心に送ってくれました。(※すみません分かりづらくて伝わらないと思います。映画を観た方には少しは伝わるでしょうか。)
壊れたピノキオの動作が気に入ったので、「それはなんですか?」と聞くと「ハッピーな猫にゃよ」と返答がきたためそのキャラクターを受け止めることにしました。
そんなふざけた言動があったおかげで、そこまで緊張することなく登壇することができました。
いや本題に入ります。とうとう審査員の方々から受賞の発表が行われます。
これは細かく伝えていきたいところなのですが、少し編集しながら語ります。

賞が発表され始めました。

映画.com賞に私の好きな作品「ゴミ屑と花」が選ばれました。監督の大黒友也さんとは前日に仲良くなり、作品が私が尊敬するケン・ローチ監督を彷彿させる労働者や社会的問題に取り組んだ作品で、呼ばれてほしいなぁと願っていたところ彼の名前が呼ばれ、後ろ姿を観ていると、苦労がわかる分、評価を受けて不安が解消される様が分かりうっすらと涙がこぼれてきました。すると、次のフィルミネーション賞の発表の番がやってきました。どこかで賞は欲しいと願っているけど、もうこのままでも幸せかもしれないと不思議な気持ちになっていると、なんと名前が呼ばれたのです。
その時、不安が安堵に代わり、そして改めて嬉しい気持ちが溢れ、気が付いたら感情が飛び出してしまいました。涙を必死に抑えていたのですが、写真ではかなり漫画のような変顔になっていました。
そちらの時のスピーチがこちらです。

先ほどピノキオの流れが嘘のような佐伯くんのしっかりしたスピーチですね。私的にはこの映画の根本となる「価値」についてはもちろん、その価値の交換が皆様との交流であったり、映画の上映後にそれぞれの価値やこれからのことを語り合うことがどれほど素敵なことか、今がその瞬間です。というところまで語りたかったのですが、ありがとうの気持ちを伝えることが精一杯でした。

次はキネマイスター賞。呼ばれたのは秋葉美希監督の「ラストホール」
彼女は自分の実体験をもとに、センスある演出力で映画としての力が伝わってくる作品でした。キャスティングも素晴らしく、ロードムービーとしても美しいロケーションや設定や間が映画に入り込ませてくれます。彼女もスピーチの時に涙していました。きっとお父様のことを考えていらしたのかななんて思っていたのだけど、賞が取れて本当に良かったなと思いました。

次は、観客賞、俳優賞、グランプリ、、、と続きますが、長くなってしまったので、次回の後編に続きます。


緑茶麻悠

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