法の下に生きる人間〈第35日〉

明治天皇が自身の思いを綴った「教育勅語」は、明治23年(=1890年)に世に出た。

明治天皇が祀られている明治神宮のホームページには、ふりがな付きの原文が、全文公開されている。

その全文を、下記のとおり示そう。

①朕惟(ちんおも)ふに、我(われ)が皇祖皇宗(こうそこうそう)、国を肇(はじ)むること宏遠(こうえん)に、徳を樹(た)つること深厚なり。

②我が臣民克(よ)く忠に克く孝に、億兆心(こころ)を一(ひとつ)にして 世々其の美を済(な)せるは、此れ我が国体の精華にして教育の 淵源(えんげん)亦(また)実に此(ここ)に存す。 

③爾(なんじ)臣民父母に孝に、兄弟に友に、夫婦相和(あいわ)し、朋友相信(あいしん)じ、 恭倹己(おのれ)を持し、博愛衆(しゅう)に及ぼし、学を修め、業を習ひ、以て知能を啓発し、徳器を成就し、進んで公益を広め、世務(せいむ)を開き、常に国憲を重んじ、国法に遵(したが)ひ、一旦緩急あれば義勇公に奉じ、以て天壌無窮(てんじょうむきゅう)の皇運を扶翼(ふよく)すべし。

④是(かく)の如きは、獨り朕が忠良の臣民たるのみならず、又以て爾(なんじ)祖先の遺風を顕彰するに足らん。

⑤斯(こ)の道は、実に我が皇祖皇宗の遺訓にして、子孫臣民の倶(とも)に遵守すべき所、之を古今に通じて謬(あやま)らず、之を中外に施(ほどこ)して悖(もと)らず、朕爾臣民と倶に拳拳服庸(けんけんふくよう)して咸(みな)其の徳を一にせんことを庶幾(こいねが)ふ。

以上である。

これを幼稚園の子どもが、言葉の意味を理解して朗唱するのは難しいのではないかと思うのだが、③の最後の文にある「天壌無窮の皇運を扶翼すべし」は、現代に生きる私たちからすれば、引っかかるものを感じる。

「天壌無窮」とは永遠にという意味であり、「皇運扶翼」というのは、国の命運を賭けて国家を助けなさいということである。

これが、第二次世界大戦では、「お国のために戦おう、天皇陛下万歳。」という挙国一致的なスローガンにつながった。

だからこそ、教育勅語は戦後に廃止されたのである。

改めて現行の教育基本法を眺めてみて、私たちは何を感じるだろうか。

北朝鮮や中国・ロシアの脅威が高まる中で、今を生きる子どもたちに、この現状にどう向き合わせるのか。

学校教育のみならず、家庭教育・社会教育・宗教教育・政治教育についての条文が盛り込まれているのは、私たちが子どもに託す使命でもあるのだ。


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