唱歌の架け橋(第8回)
野口雨情が書いた有名な詩には、昨日の『七つの子』のほかにも『シャボン玉』がある。
子どもも大人もよく知っていると思うので、紹介するまでもないとは思うが、一応、歌詞を載せておこう。
【1番】
シャボン玉飛んだ 屋根まで飛んだ
屋根まで飛んで こわれて消えた
風、風、吹くな シャボン玉飛ばそ
【2番】
シャボン玉消えた 飛ばずに消えた
生まれてすぐに こわれて消えた
風、風、吹くな シャボン玉飛ばそ
以上である。
この歌詞だが、すべて七・七調で繰り返されていることに気づいただろうか。
「シャボン玉」の「シャ」と「ボン」は短い発音なので1音として数えると、7音で収まる。
この七・七調のリズムを、4分の2拍子の軽快なテンポの曲にしたのが、草川信と同じ長野県出身の中山晋平(なかやま・しんぺい)である。
中山晋平も東京音楽学校を卒業し、一時期は、東京の浅草の小学校で音楽の先生をしていた。
『シャボン玉』の歌はニ長調であり、低音のラから高音のレまで、ほぼ1オクターブ半の音域で歌う。1923年(=大正12年)に発表された歌である。
昨日の歌の『七つの子』の「七つ」もそうだが、野口雨情の詩は、何かを暗示しているのではないかと思わせるものが多い。
『シャボン玉』の場合、2番の歌詞の「生まれてすぐにこわれて消えた」というのは、子どもが生まれてほどなく亡くなったことを暗示している可能性がある。
野口雨情自身は、歌詞についての説明は特にしていないが、ほかにもこんな見方ができる。
「屋根まで飛んでこわれて消えた」というのは、屋根の高さが一般的な人間の平均寿命だとすると、そのラインまではせめて生きてほしいという親の願いが隠されていないだろうか。
野口雨情は、1936年になって、3番の歌詞と4番の歌詞も付け足している。
【3番】
シャボン玉飛んだ 屋根より高く
ふうわりふわり 続いて飛んだ
【4番】
シャボン玉いいな お空に上がる
上がっていって 帰ってこない
そして、最後の締めくくりが、
「ふうわりふわり シャボン玉飛んだ」
である。
「飛ばそう」から「飛んだ」に変わっているのはそんなに驚きでもないのだが、屋根より高くお空に上がっていって帰ってこないのが、なんだか不気味である。
1番と2番の「シャボン玉」は子どもの命、3番と4番は死んだ子どもの魂とみると、この曲は、なんだか切ないメロディーに感じられもするのだ。
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