RuiKawakami

趣味で詩や短歌を書いています ruikawakami.mail(a)gmail.com

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仮名遣いの歴史についてのメモ

はじめにとあるきっかけから仮名遣いの歴史について興味を持ち、いくつかの文献を用いて調べていくうちに、仮名遣いの問題は広範かつ複雑であることを知った。本稿は、仮名遣いの歴史についてより深く理解するために作成した個人的なノートである。仮名遣いの歴史についてできるだけ全体像を把握できるよう、さまざまな話題を比較的簡潔に取り上げたつもりである。誤りのないよう注意したが、正確な情報を確認したい場合は参考文献をあたってほしい。 1 仮名遣いとは何か日本語においてある語を仮名で書き表す

    • 小景

      坂の上から斜面に沿って 流れている光の 途中で果実が実り ごろごろという音に変わる 見ている者の存在を 対岸に感じるが もう誰もいないだろう 月面へ向かって 開いている窓の いつから開いているのか知らないが 風よ もう閉じてもよいと言う 林の奥へ羅針盤を埋めなおし ここへ戻ってきてもよい 架空と虚構とにまたがって 横たわる鰐の死体を 四つ辻に見ていた 事件でも事故でもないと警官は言い 川がないのに流水音がやまないのは なぜだか聞かせてくれないか 隘路へすすんで引き返すこ

      • 詩 Q

          どこへもいけない   どこへもいける   ここからできるだけとおくへいく   ここにいるままで   ここにいるままで 夜明け前 廃棄されたコインランドリーの数々が 街の外縁を形作っている その稜線は あざやかなままで あざやかなままで枯れてゆくから わたしたちはいつも 夕景が画布を隠していることに気づかない それでいて 徒歩のような 日々の鈴なりにどこか退屈しているのは もどかしさでいっぱいだからだ いつまでも、いつまでも、ここから立ち去ることができない 立ち去ることが

        • 詩にはどのようなものがあるか――詩の種類と多様性

          1 はじめに詩を読んだり書いたりするとき、そもそも詩とはどのようなものなのかという素朴な問いが、持ち上がることがある。この純粋な問いは、詩を書く人にとって重要かつ深遠な問いである一方、答えることの難しい問いでもある。そしてまた、「詩とはどのようなものなのか」という問いの持つ曖昧さが、答えることをさらに難しくしている。そこで、もう少し整理した形で問い直すことにする。 アプローチは二つ考えられる。一つ目は、単純に「詩とは何か」という問いを考える、すなわち詩の定義について考える

        仮名遣いの歴史についてのメモ

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        記事

          海食崖

          あなたの喉元に降りかかるそれは 決して綿雪などではなく 何もない海食崖 ただ正視をつづけるわたしたちの 声が消え尽きてしまう地点から 西日が低く落としている眦 その海岸線に沿ってたくさんの 過去を持たぬ生き物が 歩いている その目のいろ あれはわたしの目だ、と思った あなたの耕していった なだらかな果樹林を抜けるとき おなじ歩幅で あるいはおなじ文法で 昨季降らなかったぶんの雨が 沈殿する ここ数日のねむりの浅さを 誰のせいにもしてはいない ただ わたしとあなたの感情の多く

          椅子 (クヮン・アイ・ユウおよび河上類による合作)

          いま叩きつぶした助詞の一つから 細く立ち上る硝煙の先端に 矢のような朝陽が差し込むとき お前のその 五指を刺すつめたい痺れから 赦しを引き出す手順を思うのは 不自由さ故か 名無し故か 重力の溶解した視界には ただ想像力のみによって敷設された 一本の鉄路がある それはoutlineであった 逆光のなかで駆け出せば 銃身の整列する牧場を抜ける そしてある緋色の着水を待って おもむろに連鎖をはじめる美学の先に もたざる人びとによる 木炭の暮らしが 鉱物の結晶するごとく 瞬いている

          椅子 (クヮン・アイ・ユウおよび河上類による合作)

          街と海

          夕日の巨大な親指が 尾根を下ってこちらへやってくる もうじき 環形動物の夜なのだ そっと輪郭を書き留めている 書生のまなざしなのか それとも 日記を焼く二日前なのか それは分からないが 落ちている眼球のさみどりは もう誰のものでもない   街から海へとつづく一本の道があり   一本の道だけがあり   この街の誰も   海へ行くことがない   なぜなら   すべてのものは海からやってくると   街の人々は信じているからだ   よいものも、わるいものも、だ はる式日に向かって

          連作三十首 雪明りの観測

          朝雨にけぶる彼方のビル群の間を泳ぐ巨大なアロワナ 振り向けば秋の舗道を駆け抜ける銀狼の散らす落葉のあと しんしんと骨片のふる地下書庫で灯火にひらく菌類図鑑 頭部なき埴輪ばかりが並び立ち祈りへ向かう顔を知らない 布という声がして近づけばカーテンの芯にひらく果樹林 雨上がり飛び立つものにPapilioと呼びかけてみる虹彩のなか 音もなく栞紐を揺らし秋宵は通り過ぎゆく悪寒を置いて くちばしを冷やして辻に立つ 雨を転がってゆく傘の枯死体 切り株に等圧線を重ね置く 座標

          連作三十首 雪明りの観測

          第三回 匿名文通合評会のお知らせ

          概要自作の詩作品に関する建設的な意見交換を行うことを目的として、匿名の状態の参加者どうしで詩作品を批評し合う合評会です。 方法参加希望者は主催者に参加を申し込み、自作の詩作品を提出します。 所定の参加者数が集まったら、合評会が決行されます。 提出された詩作品は、主催者によって作者以外の複数名の参加者へ配布されます。このとき詩作品の作者は伏せられています。 配布された詩作品に対して参加者はコメントを書き、主催者に提出します。 提出されたコメントの内容に禁止事項がないか

          第三回 匿名文通合評会のお知らせ

          連作十首 ある現像

          巻き貝のなかから一つの幻聴を抜き取り氷の標本とする くらやみは水辺で生まれた生き物で 左の眼窩に白魚を飼う 春雷の近づく乾燥機のなかで胎児のごとく眠る子羊 白桃を揺らせば鈴の音がする 屈伸のごとく水門ひらく 水槽を両手に乗せてこの秋のもっともしずかな窪地へ向かう 凍蝶の翅を河原で焼く人の脳を揺らす教会の鐘 投げ上げた鍵束が花ひらくとき街上に散る銀のきらめき 夕照に両足浸す私の汀を過ぎる秋の後脚 明けの明星、宵の明星に告ぐ 痩身の鏡のなかより声を聞かせよ 冬型

          連作十首 ある現像

          第二回 匿名文通合評会のお知らせ

          概要自作の詩作品に関する建設的な意見交換を行うことを目的として、匿名の状態の参加者どうしで詩作品を批評し合う合評会です。 方法参加希望者は主催者に参加を申し込み、自作の詩作品を提出します。 所定の参加者数が集まったら、合評会が決行されます。 提出された詩作品は、主催者によって作者以外の複数名の参加者へ配布されます。このとき詩作品の作者は伏せられています。 配布された詩作品に対して参加者はコメントを書き、主催者に提出します。 提出されたコメントの内容に禁止事項がないか

          第二回 匿名文通合評会のお知らせ

          匿名文通合評会について:経緯と方法

          1 はじめに 「自作の自由詩作品に関する建設的な意見交換を行うこと」を目的として、オンライン合評会を主催してきました。その中で、匿名文通合評会という合評会の方式を考えました。考えることになった経緯とこの方式の詳細について以下に記します。 2 経緯 昨年は、自由詩のオンライン合評会を四回主催しました。その中で、オンライン合評会には以下の欠点があると感じました。 合評会の時間が長い:自由詩作品は一般に長く、少数の参加者数であっても合評会は長引いてしまう。時間が長くなると、

          匿名文通合評会について:経緯と方法

          塔2023年2月号から 十首評

          塔2023年2月号から気になった歌十首を取り上げ、私なりの解釈をコメントとして添えさせていただきました。いずれも素晴らしい歌ばかりですので、私のコメントを読む前にまずはそれぞれの歌を読んで感じとっていただくのが良いと思います。本文を読みやすくするため、以下では「私は」「と思った」「と感じた」等を省いていますが、コメントはいずれも私個人の感想です。誤字等ありましたらご連絡いただけますと幸いです。 秋天の空ほろほろとこぼれそうしばし瞑ったあとの世界に/永田淳(月集) つむって

          塔2023年2月号から 十首評

          ミディアムポエム四作

          東から波打つ風の 微細な後悔が聞こえる 呼吸 二つの鼓膜を屋上に並べ置いて それでどこへ飛び立つというのだ 腐臭と錯覚するほどに強烈な柑橘の香りが 私の平衡感覚を着実に狂わせて それでどこへも飛べない どこへも飛べないのだが それは 水たまりをのぞくおまえの顔だ  * アークティカ、アンタークティカ 先生は黒板にひとつ 大きな正円を描いた その上をすべる細く長い指 ここがアークティカ、こっちがアンタークティカ 五月の雨の降るしずかな教室だった 雨滴のため 今朝方からのあた

          ミディアムポエム四作

          ミディアムポエム四作

          Twitterに投稿したものの再掲です。PC表示の場合は、画像を一度クリックしてからの方が見やすいかもしれません。

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          私家版詩集『景観の分類』通販のお知らせ

          2022年11月の文学フリマ東京35にて頒布した私家版詩集『景観の分類』をboothにて販売しています。booth商品ページで試し読みできます。 詩22編/ A5判/本文64P/2022年11月20日発行 目次 Ⅰ 東の干潟/水平線/夏の回廊/ガラス瓶/梅雨/ラナンキュラス/遠景/非春の季節 Ⅱ 夏・幽霊・深海魚/杖と蝉/鉄塔の足/幕/椅子/海峡より/草原に、肋骨を Ⅲ マグノリア/春の夜 Ⅳ 鉄塔/岬の観測所/西の高原 Ⅴ 岬/地図

          私家版詩集『景観の分類』通販のお知らせ