雷鳴

雷鳴のとどろく草原を歩いている一匹の獣のような目。その目だけがあり、雷鳴を聞いたことはなく、それは草原ではない。

木立の間を細い尻尾が揺れ、あなたはむかし見た振り子時計を思い出す。しかし、そのような記憶などなく、木立の間にはあなたが立っているだけだ。

てのひらでゆっくりと回り始めた方位磁針があり、誰もがそれを止める術を知っている。ただ誰一人として止めようとせず、止める方法も分からない。

振り返る前と振り返った後に一度ずつ、雷鳴が聞こえ、ただちにそれは雷鳴でないことだけが、あきれるほど明晰に、分かる。

あなたはページをめくり、わたしはページを書き足している。それは間断なく延長された事故であって、わたしたちの間にはどのような種類の関係もなり立ちえない。