椅子 (クヮン・アイ・ユウおよび河上類による合作)

いま叩きつぶした助詞の一つから
細く立ち上る硝煙の先端に
矢のような朝陽が差し込むとき
お前のその
五指を刺すつめたい痺れから
赦しを引き出す手順を思うのは
不自由さ故か 名無し故か
重力の溶解した視界には
ただ想像力のみによって敷設された
一本の鉄路がある

それはoutlineであった
逆光のなかで駆け出せば
銃身の整列する牧場を抜ける
そしてある緋色の着水を待って
おもむろに連鎖をはじめる美学の先に
もたざる人びとによる
木炭の暮らしが
鉱物の結晶するごとく
瞬いているだろう

そうだ
その食卓には中心がない
部屋の隅では
観葉植物が直立していて
私たちの間にある
マグカップの底では
無名の衝動が
ひとつまたひとつと
入水していく

(繰り返す 残照のなかで繰り返す)
生身を打ち砕く覚悟はあるか
静電気はborderに宿る それは明け方へ向かう
(繰り返す 繰り返す 残照のなかで繰り返す)
盲いた半身を古井戸に浸すとき
透明な対峙が開始されるだろう
そのとき私たちの間には
同じマグカップの底がある
(繰り返す 繰り返す 残照のなかで繰り返す)
鈍色の中断のあとにも 生命は続く
そうやって返していく美学だ
そうやって返していく美学だ!
(繰り返せ 繰り返せ残照のなかで繰り返せ)
どうしたって返していく美学だ
我々に
ふさわしい沈黙を!


※ クヮン・アイ・ユウさんとの合作です。2022年9月18日にB-REVIEWへ投稿したもの。