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就活生の時の私よ、「企業理念」をスルーするな。

学生の頃、都内のフレンチレストランでホールのアルバイトをしていた。

フレンチと言っても、コース料理を出す店の中では比較的安い方だった。
こぢんまりしたレストランで、社員はホール・キッチン合わせて10人くらい。

まかないおいしそう、くらいの気持ちでバイトに応募したのだけれど
気づいたら週3、4のペースで4年間続けてしまった。


実を言うと、フレンチレストランのバイトに応募した理由はもう一つあった。

当時、東京駅の近くのファミレスでバイトをしていた。大学1年生、人生初のバイト。
右も左も分からないどころか、人見知りなので知らない人と話すのが苦痛だった。

お客様と一生懸命コミュニケーションをすることだけに神経を使っていて、
レジの勘定を間違えるわ、あつあつのドリアのお皿をお客さんにぶつけちゃうわで
仕事どころではなかった。

社会に出ていちばん最初に感じたのが「こんな自分、イヤだなあ」ということ。

ちゃんと接客できるようになりたいなあと思って、少し敷居が高そうな
フレンチレストランでバイトをしてみることにした。

そこのレストランは、いわゆる「創作フレンチ」を売りにしていた。

京野菜や旬の魚など和の食材を、伝統的なフレンチの調理法で料理していて
味も見た目も素人ながらに良いものだと思った。

提供しているコースは1種類しかなかったのが、
毎月メニューが変わるのを楽しみに来てくれる常連のお客さんもいてくれた。

また、都内のコース料理店の中ではお手頃な方だったので、
お客さんの中には取引先との接待や商談の場として利用する人も少なくなかった。

1種類のコース料理しか提供していないので、アレルギーや苦手なものがあるお客さんに対しては替わりの料理を作るのだが、
それが取引先の社長だったりすると、ホスト側としては大変気を使う。

そういう時には、全員分の料理を「特別メニュー」に切り替えることもあった。

また、プライベート利用だと、バースデープレートを無料で提供ことができたので
お客さんの会話の内容をキャッチしたホール担当が、
「お店からのサプライズ」としてプレートを出すことも多かった。

臨機応変な対応もすごいのだが、サービスをする時に迷った時の判断基準が
「お客様のためになるのは、どの方法か?」
ということを、そのレストランにいる全員が考えているということが自分は好きだった。

何でもかんでもお客様のため、というわけではない。
そんなことをしていたら薄利多売になってしまうかもしれないし、
第一、料理を作るシェフたちの負担が計り知れない。

ただ、料理を含めてベストなサービスを提供するということに関して
迷いや不安がある時には、「お客様のため」という軸をベースに、
周りの人を納得させることができた。


社会人になって数年経った今、それが「企業理念」や「価値基準」、「ミッション」だということに気づいた。

就活生の時はこの辺を意識せずに会社を選んでいたけれど、
組織として方向性や判断基準があるということは、十分すぎる福利厚生よりも
働きやすさに直結するのではないかと思う。

自分がこれまで大事にしてきた価値基準と、ある程度照準の合う組織ではたらくことができれば、
きっとハッピーになるような気がしている。


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