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『女のいない男たち』その3

『女のいない男たち』(『女のいない男たち』その3)
村上春樹著
「女のいない男たち」に含まれている短編の大取の表題作。

なかなか、抽象的で、わかりにくいのだけどね。ヒントがあちこちに散りばめられていて、キーワードを一つ一つ紐解いていくと見えてくるものがあるのかもしれない。すごそうなので、誰かに解説してもらいたいくらいだ。

エム(M)という女性が、主人公(僕)の昔の恋人なのだけど、彼女が突然亡くなったという知らせを受けるところから、物語は始まる。

14歳の時に出逢って、恋に発展できないまま、時が過ぎて、ダブル不倫の関係になっていた。

結局、その不倫は、2年続いて、破局するのだけど、「僕」は、ある意味、失恋の整理ができていなかったのかもしれない。

そして、そんな彼女が、自殺したという連絡を夫から受けたのだという。

「僕」には、妻がいるのに、Mの喪失感を強く抱いてしまう。

自由に生きるMは、自分の希望を叶えるためには、水夫とも寝て、夫と離れ、僕とも離れ、ようは、進化の果てに自死する。Mは、アンモナイトのように絶滅してしまったのだと思った。「僕」をはじめ、男は、シーラカンスのように、過去を引きずって現在を孤独に生きている。

残された男は、孤独なのだ。
「僕」には、妻がいるのにね。

切ない話ではある。

「若い女性と水夫の物語」を思い出した。嵐で船が沈没し、若い女性はフィアンセを探すために島に向かうのだけど、水夫に協力を求めると水夫は、彼女と一夜を共にするという条件を出す。困り果てた女性は老人に相談するのだけど、「自分にとって正しいことを自分で選びなさい」と言われて、女性は水夫と寝る。そして、フィアンセと再会するのだけど、女性が、水夫と寝たことを知るとフィアンセは怒り狂ってしまう。すると、フィアンセの親友というのが、女性を掻っ攫っていくという物語。

これは、登場人物たちの誰が正しいか、順位をつけていく、心理ゲームみたいなものなのだけど。順位をめぐって永遠に語れるから面白い。

本書にもどると、結局、
女のいない男は孤独なのだなあ。
男のいない女も同じように孤独なのだけど、女は自由に変化していく。

まあ、男女間は、タイミングが全てなのだなあと改めて思った。

男は過去を引きずるのだね。私は、あまり引きずらないから、女性的なのかもしれないと思った。

『男が女を愛する時』Michael Bolton

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