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『木野』(『女のいない男たち』その2)

『木野』(『女のいない男たち』その2)
村上春樹著


「女のいない男たち」に含まれている短編の一つです。

これもなかなか、難解な文章の羅列が続いているので、じっくりと
キーワードを味わうのも面白いと思ったが、誰かに解説してもらいたいところだ。

主人公の木野は妻の不倫を目撃し、離婚。長年勤めた会社を辞め、バー「木野」を経営する。物語は「女」を失った「男」が、どうなっていくのか、ずらずら綴られている。

出てくるジャズのナンバーが、なかなか良くて、流れる文章にも、心地良く酔わされる。

戦うべき時に戦えない男のものがたりなのだろうか?
象徴的な存在として、猫や蛇が出てくるのだけど、泉鏡花を彷彿させられる。

猫は妻だったのではないかなあ?
猫が彷徨っている間は、修復の余地は本当はあったのかもしれない。

蛇が現れると、まもなく、猫はいなくなる。

蛇は、聖書では、悪の象徴。創世記で、エバを唆して、知恵の実を食べさせてしまって、人類の原罪がはじまるのだけど、

神を信じる力、神に頼る力が、必要だったのではないか?とか、思った。

カンダが、木野をバーから、遠くへ離れるように指示する場面は、ノアの方舟や過越の祭りを彷彿させられた。神様が全てを破壊する。そして、全ては、新しく生まれ変わる。

女のいない男は、現実を見極めてとことん落ちぶれて、そして生まれ変わる必要があるというふうに思った。

基本は、男は女を手放してはいけないということなのではないか?

聖書にも確かに、男には、女が必要なのだって書いてあったはずだ。

女がいない男たちは、寂しいものだと改めて思った。

『アイ エイント ガット ノーバディ』(アート・テイタム)

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