鼓堂 呂以

食べること、旅をすること、異国で暮らすことに惹かれます。一方で、同じ環境でぬくぬくと過…

鼓堂 呂以

食べること、旅をすること、異国で暮らすことに惹かれます。一方で、同じ環境でぬくぬくと過ごすことが好きな一面もあります。半世紀を生きてきましたが、ここらで何かを発信したいと思うようになりました。気の向くまま、思いつくままに認めてみたいと思いますので、お気軽にお立ち寄り下さい。

最近の記事

ランテルナ ディ ジェノバ

今でも、暇さえあればネットで美味しい店のチェックを欠かさないのですが、その日も昼に中崎町界隈を散策した結果、昔ながらの趣きのある街並みにかわいいカフェや雑貨屋さん、美容院や小料理屋が新旧程よく集積しているのを発見し、この中に隠された名店があるに違いないと、夜ネット検索を試みたのでした。Googleでレストラン検索をし、点数の高いものについて口コミと料理の写真をチェックしてスクリーニングした上で、食べログとRettyで確認するというのがルーティンなのですが、そのプロセスを経て辿

    • 忘れ物

      4月に準備万端だと密かに自信をもって臨んだ会社のコンペで見事に打ち砕かれたのを機に、最後の大出費という覚悟でゴルフスクールに通い始めました。ゴルフに限らないと思うのですが、上達には一度に沢山練習をするより、こまめに頻度を上げた方が良い、ということで、スクールが近くに所在するメリットを生かして、会社帰りにも自主練習を入れるようにしています。 さて、その夜も20:00から自主練習に汗を流し、一週間の仕事を終えた金曜日の夜ということもあって、快い疲れに浸りながら御堂筋線へと家路を

      • 梅仕事

        中学生の頃、親の転勤のため、私は親元を離れて祖母の家から学校に通っておりました。祖母は私に甘く、夏の夕食の後、良く梅酒を飲ませてくれたものです。庭に植わっていた梅の木に実が沢山つくと、しとしと雨が続きながらも雲間から陽が差し込むような時に、縁側で竹で編んだざるの上に、もいだ梅の実を並べて梅酒や梅干しを漬ける準備作業をしていた祖母の姿が目に浮かびます。何となく気分の冴えない休日に、思いがけずに晴れ間が訪れ、縁側から梅の仄かな香りが漂うと、ああっ、もうすぐ夏が来るのだな、と思った

        • 夢と宝くじ

          タイトルはきれいで自然な取り合わせなのですが、今回の投稿内容はどう贔屓目に見ても下品だと言わざるを得ません。本当はこのような公の場に晒すべき話題ではないのかもしれないのですが、私にとって避けて通ることのできないテーマであり、今書かずして自分の成長はないと思われるため、恥を忍んで公開させて頂きます。もし、怪しい不穏な気配を感じられた方は、ここでお止めください。申し訳ありません。 さて、私は物心ついた頃から、いつ大便をするのか、ということについて長い間悩み、苦しめられてきました

        ランテルナ ディ ジェノバ

          香立

          心がわさわさして落ち着かないためまた椅子座禅をしたのですが、それでも落ち着かず、どうしたものかとリビングを見回すと、茶色のサイドボードの上のコーヒーメーカーと電気ケトルの間に、銀色のお香立てが置かれているのが目に留まりました。この香立は、大阪での新生活をスタートした頃、街の散策も兼ねて梅田から中津に徒歩であてもなく向かっていた時に、阪急3番街うめ茶小路で「一香一会」に立ち寄ったのがきっかけとなって購入したものです。 その頃私は、何か新しいことを始めたいと音楽教室や文章教室に

          筋肉痛と鳥のさえずり

          約2か月ほど前、やるべきことは全てやったと思える状態で挑んだゴルフコンペで、結局今までと同じようなスコアしか出せず、失意の内に帰宅しました。そんな私を、妻は、「日本人はスコアのことしか話しをしないじゃない。あの人のスコアはどう、それに比べて自分のスコアは3つ下だったとか、ベストスコアから10打も悪かったとか、まだ100が切れないとか・・・。そんなのどうでもいいじゃない、皆でゴルフをしていること、そのものが楽しいんじゃないの?」と、慰めなんだか馬鹿にしているんだか良くわからない

          筋肉痛と鳥のさえずり

          ダイニングテーブルセット

          会社から帰ってリビングを見ると何かすっきりしています。更に良く見てみるといつも4脚あった馴染みの椅子がなくなって、ベランダテーブルセットの2脚の椅子にすり替わっていました。ここ数週間妻が検討していたダイニングテーブルセットの4脚の椅子の張替え計画が実行に移されたのです。 妻はこうした家庭内装飾の細かなアレンジが好きで、大阪に住んでいた思い出にもなるので、引越しをする前に、是非前から気になっていた東大阪の家具修理店で椅子をすっきりリノベーションしようと意気込んでおりました。こ

          ダイニングテーブルセット

          こどもの日

          いつものように近所のゴルフ練習場で午前の基礎練習をして身体をほぐし、併設のカフェテリアで昼食をとっていると、「今の日本が良くないのは、子供は地域で育てるもの、という意識がすっかり無くなってしまっていることなのよ」と話す初老の女性の話し声が聞こえてきました。窓辺からは日の光が差し込んでおり、その磨き抜かれた窓越しに艶やかな黄緑色の今にもこぼれ落ちてしまいそうな葉を風に揺らす木々が見えます。 毎年、こどもの日を迎えると、私は切なさというか、チクッとさされるような罪の意識を覚えま

          靴磨き

          正直なところ、私はつい数年前まで、靴磨きをしたことがありませんでした。そもそも、私は面倒くさがり屋で、服は脱いだら脱ぎっぱなし、物もなかなか所定の位置に片付けることができず、散らかりっぱなし、とルーズ極まりありません。それを尻ぬぐいのようにして後を追いかけて片付ける妻にいつも叱られています。そんな私が何故靴磨きを始めたのでしょう。 メキシコ赴任が終わることが決まり、後任がメキシコに来た頃のことでした。私の赴任にあたっての責務はメキシコでの新会社設立に際し、管理面の様々な仕組

          似非の椅子座禅

          月一回土曜日に通っている仏教講座の中で、講師であるドイツ人禅僧から時々椅子座禅を促されることがあります。私のような凡夫は当然ながら色々と誤解をしながら生きてきているのだと思うのですが、その教えの中で一つの気付きがありました。これまで、座禅においては自分の内面に集中することが大事だと思っていたのですが、そうではなくてむしろ周囲がどのような世界で、自分はその中でどう在るのかという、周囲の中の自分の在りようを感じることが大切だと仰るのです。ああ、それで座禅の際は目は完全に閉じるので

          似非の椅子座禅

          山崎

          私はここ数日、今か今かと当選のメールを待っています。 3/15(金)と4/7(日)にサントリーシングルモルトウィスキー山崎 Story of the Distillery 2024 EDITIONの1本購入権の申込みをしたのです。 3/15は、閑職とはいえ一週間の会社勤めを終えた後、気力を振り絞って2時間もかけて深夜に申込みを完了しました。4/7は東京で会社の東西部署合同ゴルフコンペに参加した帰りの新幹線で、1時間掛けて応募しました。何故、たかだか1本の購入権の応募に1時間も

          パーコレーター

          メキシコに駐在して4年目の春、新型コロナウイルスが襲ってきました。我々はグアダラハラに住んでいたのですが、メキシコシティが先に恐ろしいほどの被害を受け、私の会社の従業員の中にも、知り合いや親戚が亡くなったというような気の毒な方が、何人もいるような状態でした。こうした事態を受けて、すぐに外出禁止令が出される等、一時は普段車や人が行き交うメイン通りも人っ子一人いない状況となり、我々は遠く離れた異国で一体どうなってしまうのだろうと途方に暮れてしまっておりました。 その後コロナの流

          パーコレーター

          おじさんからのドラム

          まだ始めてから1年半しかたっていない若輩者で、ドラムを語るなんて10年早いと言われそうですが、10年も待っていたら60を優に超えてしまうので許して下さい。 人生の一つの区切りと思われる還暦まで、もう小学校に通う位の時間しかないことに危機感を覚え、楽器を始めたら何か気分も変わるかもしれないと、職場近くの音楽教室に体験レッスンを受けに行きました。以前マレーシアに赴任していた時、妻の友人(発想が奔放な自由人)が、ドラムはスティックさえあればどこのスタジオにでも飛び込みで練習しに行

          おじさんからのドラム

          土佐堀川と鳥たち

          ある冬の朝、通勤路である土佐堀川沿いの遊歩道を歩いていると、川から賑やかな鳴き声が聞こえてくるではありませんか。何かと思って川沿いの手すりに近寄ってみると雁のような夥しい数の水鳥が川を埋め尽くしています。いつもは周りの建物や川沿いの木々を静かに映している川面が、水鳥たちの熱気で湯気が立ちそうな勢いです。毎朝、しんとした早朝の枯木立を、先を歩く他のサラリーマンを抜き去ったりしながら足早に歩を進める私ですが、その情景に圧倒され、思わず立ち尽くしてしまいました。 群れの中にリーダ

          土佐堀川と鳥たち

          大阪

          昔から大阪は興味惹かれる場所でした。もう古すぎて知らない人の方が多いと思いますが、「大阪の女(ひと)」というフレーズが物心ついた頃から気になっておりました。色々な妄想が広がり、大学生だった頃は結婚するなら関西の人がいいな、とさえ密かに思い始めていたように思います。これはもしかすると母が小・中・高校と尼崎に住んでいて、時折大阪での幼少期の暮らしについて語っていた影響があるからかもしれません。 入社したのがたまたま関西発祥の会社で、しかも企業選びの段階で衣食住にかかわる仕事をし

          思い立った原点、 そして左手

          自己紹介にも書かせて頂きましたが、55歳になろうとしている今頃になって、私は会社員には向いていないとようやく心の底から気付き、赴任先であったメキシコから帰国したばかりであったこともあって、慰労も兼ねて妻と西日本を中心にあちこちを旅しました。その頃はまだコロナがくすぶっていたため、旅行客がそれ程多くなく、各地の暮らしに一瞬ですがひっそりと加えて頂くという感じで、ゆっくり自分のペースで馴染んでいくことができたように思います。 そんな中で出会ったのが冒頭の写真の景色です。琵琶湖畔

          思い立った原点、 そして左手