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ダイニングテーブルセット

会社から帰ってリビングを見ると何かすっきりしています。更に良く見てみるといつも4脚あった馴染みの椅子がなくなって、ベランダテーブルセットの2脚の椅子にすり替わっていました。ここ数週間妻が検討していたダイニングテーブルセットの4脚の椅子の張替え計画が実行に移されたのです。

妻はこうした家庭内装飾の細かなアレンジが好きで、大阪に住んでいた思い出にもなるので、引越しをする前に、是非前から気になっていた東大阪の家具修理店で椅子をすっきりリノベーションしようと意気込んでおりました。この家具店からサンプルの布を数枚取り寄せ比較・検討し、見積を取り、前金を支払った上で、我々夫婦は車の運転に自信がないためクロネコヤマトの家財宅急便を手配してこの日を迎えました。妻の計画的かつ綿密な実行力には頭が下がります。

さて、このダイニングテーブルセットは私の両親が結婚祝いとしてプレゼントしてくれたものです。以来約18年間、我々の家庭生活の基礎を支えてきてくれています。私がメキシコに赴任した時も、生活環境を整えるべく先に現地入りした私のポカミスで、本来であればメキシコの家具を使用すべきところ家主との交渉が上手く行かず、急遽後続の引越し船便に載せてもらい、このダイニングテーブルセットを日本からメキシコに運び込んだのでした。

まさかこのセットをメキシコで使用するとは思ってもみませんでしたが、現地の広々としたリビングにちょこんと置かれたこのテーブルは、見知らぬ外国の地に放り出された我々を象徴するようで愛おしく、スペイン語が分からず現地の人々とのコミュニケーションに苦労する妻や、会社の立上げで想定外の事態に次々と直面する私の心の拠り所となっていたことは間違いありません。

そんなテーブルセットは、もともと経年劣化が進んでいたこともあるのですが、一日の寒暖差が大きく常に乾燥したメキシコの、家具にとっては過酷な気候(ただし、人間にとっては正直なところむしろ日本より住みよい気候)に晒されて、よく見るとテーブルの木の表面が乾き、椅子のかなり丈夫な革張りが擦り切れて無残な形になってしまっていたのです。

この大阪での修繕はそうした椅子への罪滅ぼしと感謝の意味もあります。妻と選んだ布はグレーの地に白っぽいオリーブの葉をあしらった、一見地味ながら上品な明るさのあるすっきりした印象です。4脚の椅子がどんな姿で戻ってくるのか、妻の計画通り、引越し前までに我が家に届くのか、ちょっとドキドキしながら待っています。

食卓の風景

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