【無知のヴェール】自分の立場を捨てれば、最適な決定ができる
ロッシーです。
会社の会議で大事なことは何でしょう。
「心理的安全性」はそのひとつです。
これは、職場で誰に何を言っても、どのような指摘をしても、拒絶されることがなく、罰せられる心配もない状態のことをいいます。
心理的安全性だけでは不十分
ただ、「心理的安全性」が確保できたとしても、それだけでは不十分です。
では、さらに必要なのは何か?
それは、「自分の立場を捨てること」です。
会議の参加者は、それぞれ自分の立場というものがあります。
会社の会議であれば、自分の部署が立場になります。
営業部なら営業の立場で考え、発言をしますし、研究開発なら、研究開発の立場で考え、発言をします。
各部署は、自分の部署の利益を最大化するよう発言をします。もっと分かりやすくいえば、「自分にとって都合の良い」ことしか発言しないわけです。
でも、自分の部署の利益を優先的に考慮することは、必ずしも会社として最適な結論を導くわけではありません。
力のある部署の意見がとおり、その部署にとって局所最適化された結論が採用されたものの、会社にとって全体最適化された結論ではなかった、なんていうことは、日常茶飯事です。
そうならないようにするためには、自分の立場を捨てなければなりません。
ジョン・ロールズの「無知のヴェール」
アメリカの哲学者にジョン・ロールズという人がいます。
ロールズは、正義原理に関する新しい視点を持ち込んだ人として有名です。
それに代表されるものが、「無知のヴェール」という仮想的な概念です。
このヴェールを会議の参加者にかぶせると、あら不思議。参加者は、自分達の属性(人種、民族、家柄、国籍、能力、価値観など)を、すべて忘れてしまうのです。
そのような状態で、話し合ったらどうなるでしょうか?
自分の属性が分からないわけですから、もしかすると、自分は金持ちかもしれないし、貧乏かもしれない。白人かもしれないし、黒人かもしれない。多数派かもしれないし、少数派かもしれない。男かもしれないし、女かもしれないことになります。
その状態では、特定の属性の人にとって有利な結論をとることは危険です。もしかしたら、その結論が自分に不利になるものかもしれないわけですから。
例えば、「LGBTの人権なんて認めなくていい!」という結論を採択したとします。でも、無知のヴェールをとってみたら、実は自分自身がLGBTだった!という可能性もあるわけです。
そういう状況下であれば、会議の参加者は、自己の属性に関係なく、建設的な議論をするに違いない、とロールズは考えたのです。
会社の会議でも「無知のヴェール」
会社の会議でも同じことです。
参加者がみんな無知のヴェールをかぶって、自分の部署を忘れて話合うことができれば、より良い会議ができるのではないでしょうか。
その意味では、ロールズの「無知のヴェール」という概念は、興味深い知見を私達に与えてくれます。
問題なのは、
「じゃあどうやって無知のヴェールをかぶればいいんだ?」
ということです。
これは哲学の限界でしょうね。
自分の立場を一時的に捨てることができる人だけで会議をすれば、無知のヴェールは実現可能ですが、世の中はそのような聖人君子ばかりではありません。
会議前に飲むと、「自分が何者なのかを一時的に忘れることができる薬」でも発明されたら実現できるかもしれません。
無知のヴェールといい、心理的安全性といい、概念としては非常に効果的なのですが、具体的に実践することが難しいものばかりです。
だから、会議というものは、うまくいかないものなのでしょう。
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