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外国語で歌う、歌謡大会への挑戦

私は韓国と中国に留学して語学を習得する前から、アジアのポップの魅力にはまっていた。語学が出来ないにも関わらず、日本で行われる韓国・中国語の歌謡コンクールにたくさん参加した。留学してからも韓国や中国の現地の大会にたくさん出た。

幸いなことに各大会でいろんな賞をもらった。日本の中国語歌謡大会では優勝し、北京まで連れて行ってもらい、韓国の大学での歌謡大会では準優勝し、半年分の学費をもらった。中国の大学でも学内の大会で決勝戦まで進み、現在住んでいるシンガポールでは、中国のオーディション番組の海外選抜でファイナリストに選ばれた。歌を通して出会い、一緒に戦ってきた仲間は本当に特別な存在だ。

K-POP人気の謎

韓国人は声がいい。そう思ったことはないか。

もっというと、韓国人は決まって歌が上手い。そう思ったことはないか。私はそう思い続けている人の一人である。実際、出会った韓国人は、男性でも女性でも歌がうまかった。音程が外れていても、声がいい。

なぜだろうと、思っていたのだが、韓国語の歌を歌い始めてから、この国の言葉の発声そのものに答えがあるのではと思い始めてきた。

言葉を発する時に使う顔の筋肉は、言語によって違いがある。

例えば、日本語や中国語を話すとき、顔の前部の筋肉だけで全ての言葉を発音することができる。でも、韓国語は、喉と鼻のちょうど間あたりに空気を通さないと出ない音がある。具体的には「어」(お)「 여 」(よ)といった発音。他にも「 오 」(お)「요」(よ)という発音がある。日本人からすると同じ音になってしまうが、韓国人は明確に使い分ける。他にも、喉と鼻の間を使っている音がかなりある、というのが、韓国語を学んでわかったことだ。

実は、この喉と鼻の間で音を鳴らす方法、うまい人がよく使うテクニックだと思っている。ここを使うと特に響きが良くなり、音に奥行きがでるからだ。多くのプロ歌手はこの場所をフルに活用している。オペラ歌手も必ずここに息を通している。

歌手は、ここでうまく発声する技をトレーニングするわけなのだが、韓国人は日常会話の段階から、響きのいい位置で会話をしている。なんという賜物だろう。それが、韓国人に歌が上手い理由で、実力派の多いKPOPスターが世界的に有名な理由ではないだろうか、というのが私の考えだ。ビジュアルだけを売りにしてもいい程のアイドルでも歌唱力が飛び抜けているのは言うまでもない。

韓国人は普段どんな筋肉を使って喋っているのか。注意して聞いてみると、歌が上達するヒントを得られるかもしれない。

おしゃれなC-Pop

中国の歌謡も奥深い。

そもそも、中国語とはピンインと言って、言葉一つ一つに音程がついた非常に特殊な言語だ。音が上がったり、下がったりする。全ての言葉に音程がついていると理解すれば良いだろう。ちなみに、日常会話ではこの音程が一つでも違うと「通じない」。そのくらい音程は言語の根幹を成している。

まさしく「音程、命」の中国語なのだが、歌を歌うときは曲のメロディーに音程を合わせ、ピンインを全無視するのだから、おったまげた。通じないはずの中国語が、文脈を読み取ることで歌の中では成立するのである。

音程を無視する分、ひとつひとつの発音の正確性を求められる。私は中国のオーディション番組で発音が甘いことを何度も指摘された。特に日本語にはない「ng」で終わる言葉や、ひとつの言葉に母音が二つ入っているワードなど。どうしてもうまくいかない。歌う時には、喋っている時よりも大げさに口を動かして発音する必要があるようだ。

中国語は漢字を使った表意文字だ。同じ発音でも意味が違う、ということがよくある。会話の中では、音程(ピンイン)によってある程度区別ができているが、歌の世界ではなんせピンインがない。同じ意味を表す言葉が一気に増える。だから歌詞には韻を踏んだ表現がよく使われる。なんだか、漢文を読んでいる気分だ。美しい言葉遊びがわかると、C-POPはめちゃめちゃシャレオツだ。

外国語で上手くなるには

いろんな言葉で歌を歌ってきたのだが、どの国の言葉が一番簡単かといえば、どれも簡単ではなかった。やはり完全ネイティブのようになるのは難しい。

でも、必ず努力していたことは、外国語を頭の中で日本語のカタカナに直さないことだった。外国語の発音を完璧にマスターするためには、現地の人たちがどの筋肉を使って、顔のどこに空気を通して発声しているかの感覚をつかむ必要がある。

それは日本語も然りで、私たちは無意識に発声しているけれど、実はみんな同じ特定の筋肉と顔の部分を使って喋っているのだ。例えば、アメリカ人の話す日本語ってみんな同じように聞こえないだろうか。それは、アメリカ英語の頭で日本語を話すから、みんな同じようになるのである。そう、外国語で歌うときは、自分が生まれながらにして持っている発声の感覚を「忘却」する必要がある。そうしないと、日本人が歌っているというイメージから脱却するのは難しい。

ひたすら聴きまくれ

一番頼るべきは、耳。とにかくネイティブの歌を聴きまくるのが近道だ。感覚をつかんだと思ったら自分で歌ってみて、それを録音してまた聞く。その録音がどれだけネイティブと差があるかというのを、また聞き分ける。とにかく、ずっと聞くことだ。

私は歌を練習するとき、歌っている時間よりも、聞いている時間の方が長い。母に「一体、いつ練習してんの?」と疑問がられたことがあるが、まさに聞いて考えることに時間を費やしていた。

外国語の持ち歌が1曲でもあるとカラオケですごく盛り上がる。ぜひ、挑戦してみてほしい。

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