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  • 俺の恋の話

    恋愛小説

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ただ、恋をした夏。

絵の具を撒き散らしたが如く、ビーチが鮮やかな色に埋め尽くされる…。夏が来た。 安岡夏希。26歳、バリバリの独身。 やっとッ。俺の季節だッ! 「ああ…。幸せだなーッ。俺ッ。君達の水着姿を見られただけで、今日は最高の一日だよッ。はい。おまちどおさまッ。かき氷イチゴとメロンね。」 身を乗り出しウィンクをして、渡す。 小麦色の肌に、布をこれ以上はケチれないって程、露出度の高いパステルカラーの水着ッ。 茶髪の髪は、ロングでクルクルのデジパーだ。 もろ、コギャルッ。 時代遅れと言われよう

    • 君の顔は蜜の味!

      「いらっしゃいませ。」 俺は水を置き、顰めっ面で…頭を下げた。 「カフェオレかなー?」 涼しげな顔を装い、メニューを見ていた彼女は、いつもの様に疑問形で俺を見つめて注文をする。 何故、いつも俺に訊く?可笑しいだろ? 「畏まりました。」 俺は益々、顰めっ面になり…。頭を下げた。 昼下がりのお洒落なカフェ。自画自賛かな? この店は、俺の親が所有するタワマンの1階に入って居る。 カフェオレを注文した彼女は、今や、テレビで見掛けない日は無い、「三枝佳奈」だ。 30を過ぎてから、人気若

      • 眼福!~ナル男とCAの話し

        ロングフライトを終えた…。制服を脱ぐも…。 まだ、安全域では無い。油断は禁物だ。 一応、流行りブランドの服に着替える。 空港内通路を、関係者に頭を下げながら通り過ぎ。 電車に乗り込むと、お洒落な街に降り立つ…。 私、バリキャリかCAですよ。と、言わんばかりの、異常に大きなトランクを引いている…。 まだ、気は抜けない。 綺麗なヒールを響かせて、颯爽と道を行き。 2年前に結婚した同僚から、格安で借りている。 独り暮らし…のマンションでエレベーターを待ち。 ぐはぁー。やっと…。自宅

        • 純愛でいこうっ! シンデレラストーリー

          ガス台の上では鍋がカタカタとリズムを取り揺れている… 昨日から雇われたゲイバー…とは言え、私は女だ。 カウンターからまだ奥に入った小さなキッチン。 ここが私の担当。 開店間もなくのまだ静かな時間…低い椅子に腰を下ろし、読み込まれた本のページをそっと開く…。 今日の満月は、まるでプルプル揺れる目玉焼き。 月の周りを白い雲が丸く覆って、なんて美味しそうなんだろう。 歩道に立ち並ぶ銀杏は、天使の鳴らす鐘の色。 月光しか存在しない世界はなんて美しいことか… 俺は世界一高級な空気を身に

        ただ、恋をした夏。

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        • 俺の恋の話
          3本

        記事

          君が誰でも~私だけのアイドル

          人はどうやって特別な人を見つけるのだろう? どうやって特別だと思うのかな? 考えつつも…今の俺は、特別な人を探していた訳ではけして…無かった。 付き合っていた女優との別れをマスコミに問い詰められるのが面倒で逃げ回っていただけだ。 何故そんな事を聞きたがるのか意味が解らない… だって、自分の恋愛に置き換えれば、解るだろ? 思っていた人と違ったとか、性格の不一致だとか…男女の別れる理由なんかパターンは、大概、似たようなもんだよ。 自分の思い描いた人と違った…それだけの事だ。 ヤバ

          君が誰でも~私だけのアイドル

          日々の中で 3

          「ねえ、家に着いて、直ぐに眠れる様に…お風呂に入らない?凜、僕の家のお風呂、楽しいよ!泡がブクブクってね。」 僕は、睦美の負担を減らす為の提案をした。 「良いねっ!入りなよ。凜。私もその後、入る!」 睦美は、喜んだ… 「おい。デカいか?連。」 凜は、訊く。 「まあ、大きいよね……」 僕は、訳が分からず…… 「よし!今日は、皆で入るぞ!なっ。睦美!」 え……えーっ!駄目、駄目!ヤバいよ……僕。 勿論。睦美が、断るだろうから…… 「そうだね!私、使い方、解らなきゃ嫌だし。」 ……

          日々の中で 3

          日々の中で 2

          そろそろ、足も疲れ、お腹も空き…喉も渇いた…… 「おい。腹ペコだ。オレ。」 「私も!」 「僕も、腹ペコだよ。喉も渇いた!――売店で買って来るよ。待ってて。」 僕は、一人で行こうとしたが…凜が一緒に行くと聞かない…… 混み合っているし…手を繫いだままでは…運べない…… そう、言い聞かせるが…凜は、聞かない…… 仕方なく、睦美に席を確保させ、凛を連れて買いに行った…… 注文の品を受け取り、下を見ると……凜が居ない! 「凜!」 僕は、大きな声で呼んだ。 が……居ない……慌てて、睦美

          日々の中で 2

          日々の中で 1

          僕は……手痛い失恋をしたばかりだった…… 結婚まで、考えていた……のは、僕だけだった。 真っ暗な心だけが、一人ぼっちの僕に残った…… あぁ……賑やかだと思ったら…… 金曜日の夕方だ。――今までの金曜日ならば…… 考えてしまうのが、苦痛だった…… 家に居たく無い… 寂しい気持ちに輪が掛かりそうで…… 年末行事に浮かれ騒ぐ街を、僕は歩いた。 何処に、行くかも…決めず…… ただ…数週間前から続く……真っ暗な心を、外にいる事で、紛らわせたかっただけで…… もう直ぐ、近づくクリスマスの

          日々の中で 1

          だるま食堂の住人 その3

          俺の煎れたコーヒーを二人ですすりながら… 「ねえ、満留。土曜日なのに…誰も来ないね……?いつも、こんな感じ?」 俺は…満留がさっき、いつまで続けられるかも解らない……と、言っていた言葉が気になっていた… 「しっかし、失礼な事を平気で訊くねー。美月は!ハハッ。週末は、ポツポツ来るんだけどね……今日は、来ないねー。」 満留は、日付をまたごうとしている時計を見た。 「昼間のお客さんだけじゃ…キツいよ…ね?」 昼間って言っても漁師さん達と源さんで…後は工事の人は、工事が終われば来なく

          だるま食堂の住人 その3

          だるま食堂の住人 その2

          あられさんは、まだ何かを訊きたそうだったが… 「ふーん、後で配達行くよ…」 と、帰る。 満留は、俺を少し睨みながら… 「宜しくねっ!さー。帰ろう。お昼になる。美月、買うの、決まった?」 と、訊く。 「うん。鯖焼き!満留は?」 俺も訊いた。 「じゃあ…私、トウモロコシ。美月に半分あげる。ねっ。」 「やったー。早く。買いに行こ。」 俺は、満留の手を取った。 「はいはい。……全く。」 俺達は、海岸沿いの道を、快適な走りで戻りながら、話しをした… 「ねえ、満留。お休みは有るの?」 「

          だるま食堂の住人 その2

          だるま食堂の住人 その1

          俺は、場所を探していたんだ。―― 俺を……俺の全てを誰もが、知らない場所を… 着の身着のままで、逃げてきた。――新幹線と電車を乗り継ぎ…無人駅で降り立った。 人気の無い道を何時間も…ひたすら歩く。 しかし…人気どころか……店すら無い。―― 目の前には、果てしない海が広がる。……のは、良いが…逆サイドは山で… 今にも、獣が出て来そうで怖かった。―― と、――薄ぼんやり…明かりが見えた! 国道に沿い歩いて行くと…閉まってはいるが店だ。 「だるま食堂」と、雑な手描きの看板が、潮風に

          だるま食堂の住人 その1

          コーヒーの時間 3

          今夜のミーティングで、オーナー…パパさんが、俺をオーナーにする事を発表する。 マネージャーの橘さんには、予め、パパさんがその旨を伝えていた。 「それは、おめでとう御座います。麗さんなら、大丈夫でしょう。」 と、言ってくれた様だ。 「sweetdoor」は、オーナーの人柄がよく出た店だ。 他店の様なホスト同士の争いも無く。 無理に売り上げを伸ばす様な商売もしない。 料金設定も、安く、ごく一般的なお客様が多い。 「えー、お早う。」 オーナーが、挨拶をして…… ミーティングが、始ま

          コーヒーの時間 3

          コーヒーの時間 2

          俺は、のぼせそうになりながらも、風呂から上がり、部屋に戻った。―― テーブルには、綺麗な料理が、並んでいた。 「うわー!凄いね。美味しそう!」 俺は、パチパチと手を叩き、はしゃいだ。―― 「さー。宴会の始まりだね。……お酒抜いておく?」 「まさか-!ビールで乾杯でしょー!」 「ビールで乾杯だね。」 チーズフォンドューが、グツグツと良い匂いを漂わせてきた。 「乾杯-!」 二人でジョッキを軽く合わせた。 程良く切られた、フランスパンに熱々のチーズを、クルクルと二人で絡める。 垂れ

          コーヒーの時間 2

          コーヒーの時間

          シャンパンタワーの光が揺らめき…煌びやかな夜が幕を開ける。―― 「今日の…」ハイ!「お酒が…」ハイ!「飲めるのは…」ハイ!「姫様…」ハイ!「貴方の…」ハイ!「お陰です…」ハイ!――「頂きまーす!!」 グラスの触れ合う音が会場を満たし―― パーティーは、始まった…… 俺の働く、ホストグラブ「sweetdoor」10周年パーティーの会場だ… VIPを招いての――豪華なパーティー… 俺の名は、「麗」…いかにも…源氏名の本名である。 シャンパンタワーでも、センターに位置した、店のNo

          コーヒーの時間

          俺の恋の話(3)

          華に、別れる。と、宣言してしまった。―― 電話もいつ来るか、解らない。 情を感じながらも、真夏の態度に、飽き飽きしてもいた。 華から、メールが入った。―― 又、相談だろう…予想は裏切られた。―― 電話での、落ち込んだ様子は微塵も無く。 「新しく入った人の、写メゲット!カッコいい!」 焦った。――早く、別れた。と、報告しなければ… 華が、他に行く!……と、思った。 「真夏、話しが有る。」 装った真剣さで、俺は、切り出した。―― 「はい。」 「別れたい。」 言った瞬間、自分の言葉

          俺の恋の話(3)

          俺の恋の話 (2)

          それから、数ヶ月―― 家に行ったり、遠くのゲーセンまで、足を延ばしたりと、楽しくて幸せな日々が続いた。 ある時、俺達はベッドで寛いでいた。 珍しく、俺の携帯が鳴った。――メールだ。 俺も真夏同様に、人付き合いが得意な方ではない。 数少ない友達の中に、学生時代からの女友達がいる。―― 今は、年に数回、連絡がある程度だったが… その、奈々からのメールだ。 俺は、動揺した。―― 浮気だと思われたら、かなわない! 「あぁ、学生時代からの女友達。――そいつからだわ。良い機会だから、彼

          俺の恋の話 (2)