だるま食堂の住人 その2
あられさんは、まだ何かを訊きたそうだったが…
「ふーん、後で配達行くよ…」 と、帰る。
満留は、俺を少し睨みながら…
「宜しくねっ!さー。帰ろう。お昼になる。美月、買うの、決まった?」 と、訊く。
「うん。鯖焼き!満留は?」 俺も訊いた。
「じゃあ…私、トウモロコシ。美月に半分あげる。ねっ。」
「やったー。早く。買いに行こ。」
俺は、満留の手を取った。
「はいはい。……全く。」
俺達は、海岸沿いの道を、快適な走りで戻りながら、話しをした…
「ねえ、満留。お休みは有るの?」
「毎日が休みみたいなもんだけど…一応、日曜日だよ。――何処か行きたいの?」
「違う。夏になったら、俺、満留と海に行くよ。」
「目の前じゃん。」
「二人で水着きて、おやつも買ってね。お弁当持って…あの…大きな夕陽の海に行く。」
「えー。私も水着?この体型でー?嫌だなぁ。せいぜい、タンクトップ止まりだ。」
満留は、顔をしかめる。
「二人で水着きて行く。それで…一つの浮き輪で遊ぶんだよ。」
「沈むよ。――私の重さでね。」
「こーんな、大きいのだよ。」
俺は、両手を広げる。
「あのさ。美月、私より30歳は若いのを誘いな。」
「俺、満留と行くんだ。あそこはさ、満留の海だろう?」
「いや、私のじゃ無いし。はぁ…美月、彼女が居ない訳じゃ無いでしょ?彼女と行きなさい。」
「居ないよ。俺。満留と行く。」
「はぁ……じゃあ、つくりな。美月なら、直ぐ出来るよ。ねっ。あそこの海だって、若い女の子達も、たまーには、来るよ。」
「……来るの?……じゃあ、行けないや……」
「美月……?」
「満留と水着きて…お弁当持って…行きたかった…」
「……よし!行くよ。お弁当とお菓子を持ってね!」
満留は、少し声を潜めて……
「実はねー。私、水着持ってるよ。誰も居ない時期に、秘密で行くの。カニを見たりしてね…仕方ない…内緒で美月も混ぜてあげるよ。ねっ!」
「本当に!絶対だよ、約束ねっ!――ねえねえ、どんな水着?――ハイレグのビキニ?」
大喜びだよ…俺。えー…何…訊いてんの…
「コイツ、殺してぇー。――この体型と歳で、そんなもん着たら、捕まるわっ!」
「ハハハッ。満留。捕まるの?」
「捕まるよ!腹が目立たない。叔母さん水着だよ!一応、ハイビスカスの柄?――美月にはさー、ピチピチのビキニを買うよ。」
「そこまでの自信は……無い…よ。」
やられた!……クソ……
満留って幾つかな?30歳下の子誘えって事は……50過ぎか?――訊けば良い!幾つでも、良いしね…
「満留って何歳?」 俺は、訊いた。
「私?52か53歳だよね。誤魔化すんじゃ無い。誕生日なんてやらないし、解らなくる。」
「へー。満留こそ、彼氏が居ない訳無いよね?」
サラっと訊いてしまい……
居るよ。って言われたらどうしよう。――
凄く怖くなったんだ。……訊かなきゃ良かった。……嫌だ!訊きたく無い……
「居ないよ。居たら、昨日美月と寝てな……いや、眠ってないよ。」
「居ないのっ!居ないか…良かった!…よねぇ…?」
「はぁー?何が良いんだ?コイツ!馬鹿にしてっ!」
俺は……今、何を言った?――
満留が大好きです!って言ってる様なもんだよ…
そーなの…?俺。
「その…満留、何で……彼氏居ないの?そんなに綺麗なのにっ!」
素直に綺麗って、言っちゃうし……俺。
「美月。今晩のお.た.の.し.み。両方の蟹爪をあげるよ。良い子だから。」
満留は、喜んだ?…が…
「嫌だよ。俺、満留と半分こがいいんだっ。」
「…萌っ!――キスしちゃうぞっ!美月。ハハッ。」
して!本当にして!……してみて欲しかったんだ。
この訳の解らない自分の状態を知る為にも…
53歳の満留にキスをされた時、俺はどうなるのか…自分を知りたかった……
いや……そうじゃ無くても、してよ…
「してよ……」
あがーっ!こ…声に…出しちゃったよ!俺。
さすがにっ!マジでこれは…ヤバいよー!
「な…なーんて!言ってみたり…ハハッ。」
笑いながらも……
してよ…まだ性懲りも無く、俺は、思っていた。
してよ。って……
頬に何かが触れた。――髪か…
「したよ。」 満留が、言った。
えっ……えーっ!今のキスだったの?はっ…?
「キス……したの?」
「したよ。――罰ゲームだなっ。さっき、あられに勘違いさせる様な事言ったから!あ……大変っ!美月のほっぺ減っちゃったかも……だって美月はキスすると、減っちゃうんでしょ?――豚汁食べて増やしなねっ。ハハハッー。」
おいっ…ハハハッじゃない!笑い事じゃないだろ…
しっかりしてよ……俺ー!勿体ないなっー!
解らなかったよ……。マジ、泣きてえ……
しっかし……この魔性系は…――腹立つわっ!
「満留っ!そんな事……誰にでもするのっ?駄目じゃん!満留は、隙が…」
俺は……キスの瞬間を味わえなかった自分に腹が立って……腹が立って!満留に怒った。
「ああー。始まったよ!ウチの、説教坊主が…はいはい。ゴメンね。ほっぺ、減らしちゃってさ。」
「減らないよっ!満留なら、減らないのっ!だけどするならさー……「する。」って、言ってからしてよ!俺……したの…解らなかったじゃんかっ!」
もう…自分の発言に呆れて……言葉も有りません…
「ええーっ!美月……キスする時、いちいち、キスする。って言ってからするの?ちょっと……ムード無いなー…それ!しかも、超照れるじゃん!」
「言わないよっ。そんな事!言わない……けど…今、良く…解らなかったんだもん。せっかくさー、満留が初めてキスしてくれたのに…さ、俺……」
「はぁ……解らん…全く。――美月。キスします!」
と……満留は、ほっぺに少し長くキスした。
いくら、……空いてる道でも、運転中に、危ないよ……ねぇぇ……ええ――ッ!
「な…な…何……何、するんだよ!――て…照れるだろっ!もう…」
夕陽に負けない自信が有る!って位……顔が赤かったと思う。――ヤッバい。程……興奮した。
ドックンドクン――心臓が、鳴り響いたんだ……
満留は…
「――何だー。このガキは…面倒くせー……キスしろって言ったり、しちゃいけないって言ったり、予告しろって言うは…挙げ句、「何するんだよ!」かよっ…意味が解らん?蟹爪は、両方とも、私のに決定だな!」 怒り出した。
「駄目だよ!仲良ーく。半分こだろー?」
「ふぅー……仲良く、半分こデスね。はいはい。」
「うん。トウモロコシもだよ。それで、俺の鯖焼きも、少し、満留にあげるよ。あーん。してね!」
「ふう。――美月君。今まで、良く無事に行きて来られましたね?全部の女にその態度じゃ……ここから先は、刺し殺されない様に注意して生きなっ!」
「何だよそれ!」
「はい。着いたよ!開店、開店!あっ。その前に美月の、フカフカにしなきゃ!」
「狐さん。今日もお嫁に行けば良いのに…はぁ…」
「馬鹿者がー!布団なんかぬれたら、マジで偉い事になるわっ!」
「なっちゃえっ!」
「この…クソガキはっ!――訳、解らん…ふぅー。」
満留は車を停めて、急いで作業を始めた。
今日も、漁師さん達と、工事の人が来た。
漁師さんには、俺が住人になった事を話していた。
俺は、自分の定位置でボーッとしていた。
そして…肉屋の源ちゃんが、配達を兼ねて、今日も昼を食べる。――
昨日も、満留と何かを話していた様だが。
俺は作業に没頭していて、まったく気が付かなかったんだ……
今は……自分のほっぺを手で撫でながら、店に着いても尚、夢心地で…――作業にならず…
コーヒーを一人、すすっていた。
さっきの……興奮は何だ…?――セックスでも味わった事の無い様な……高揚感……
今まで俺は…どんな風に人を好きになり、付き合ってきたのだろう…?――思い出せもしない……
満留の声に反応し…二人の話しに聞き耳を立てる。
源ちゃんは…満留と同じ位の歳かな…?
何を話してるかが、気になった…
「これから、忙しくなるだろ、その前に行こうぜ。良いだろ?たまには、二人で飲もう。」
「えー。面倒くさい!良いじゃん、ここで!あられも混ぜて飲めば。――お金も、掛からないし。」
「そーじゃねーよ。たまには…気分変えて、違う所で、二人でさ。」
なっ……何ーっ!――お…恐れてた事が起きたよ!絶対に満留を…狙う奴が居ると思ったんだよ!
しかも、源は……呼び捨てかよ…俺。
いや、いい。源は、がっしり系の爽やかタイプ…
女にモテそうな感じの男だ。――
既婚者じゃないのかよ…満留以外の女と、早く結婚しろよ、オッサン!
「着替えて…化粧し直して…あー!考えただけでも面倒くさい!」
「お前……だから、彼氏も出来ないんだよな。――まぁ…俺が貰ってやるから、いいけどさー。」
「ハハハッ。本当に結構。あられに殺されるわ。」
「あられ?妹みたいなもんだろ?」
「源ちゃん、それ…絶対に!あられに言うなよ!」
そうか……あられさんは、源ちゃんが好きなのか…
頑張れ。あられさん!――俺、応援する!
だから……俺の応援もお願いっ!
ガラガラ…「毎度ー!」
噂をすれば……あられさんが来た!
「あーっ!源ちゃん来てたのー?私も食べていく。ここ、座っていいよね?」
あられさんは、源ちゃんの前に座った。
「あられ、何にする?」
「私、源ちゃんと同じの!」
あられさん…気持ち、凄く解るよ。頑張れ!
「ハハハッ。はいよ。――今、源ちゃんと話してたの、又、皆で飲もうって。」
満留は、二人でっていう、話しを終わらせた。
そうだ。それでいい。うん。
「わーい!飲もうね。――美月も一緒にねっ!」
最高にナイスッ!あられさん感謝です!
「うん。飲もう!」
俺と、あられさんは同士の視線を交わした!
「おっ!あられ。そいつが気に入ったのか?うん。お似合いだぞ!」
源が、糞くだらない事を言う。
気まずい雰囲気になりかけた……
あられさんは、寂しそうに下を向く。……と。
満留が……
「無駄だよ。美月はねー、私の事が、大大大好きだから、無理なんだよ。――あられは……仕方ないから、源ちゃんにしときなさいっ!ハハッ。」
笑いながら言った。
あられさんは、ニッコリと、笑い…
「仕方ないから、それでもいいよ!私。」 言った。
ツンデレ……?可愛いな、あられさん。――恋する女の子…?の顔だな。――俺も同じ顔……?
「チッ。くだらねー。」
源ちゃんが舌打ちする。――マジで気分悪そうだ。
って、事は――マジで満留、狙いだ……
俺は、慌てて……
「ベタ惚れなんだ…絶対にっ。満留だけは誰にも譲れないよ!俺。――ハハ。ねっ。満留。」
真顔で…一応、笑いを付け足して…
台所で、飯を作る満留に言う。
「どーなってんだか……はいはい。そうらしいね!」
と、やけ気味に答えた。
「ハハハッ。仲良いのっ。今朝もデートだもんねー美月。」――あられさんは言った。
「うん。仲良いんだ!ねー。あられさん。」
俺達は、お互いに助け合った。
「お前らの方が仲良いよ。若いのは、若いの同士がいいさ。年寄りは、年寄り同士だ。なっ。満留そうだろ?話しも凄い合うしな!」
「……あんた達……若いね。付き合うだ、合わないだ考えるのも面倒くさいわ。――はいよ。あられ、お待たせ。――美月、私もコーヒー。」
「うん。まだ、アメリカじゃなくてO.K.だね?昔話の時間じゃないもん!ねっ。満留。」
俺は、夜もずーっと一緒なんだぜっ!って……
源に…アピールをしたんだ。――
だって…付き合いの長さでは負けてるから…
こ…これっ…焼きもちってやつ…?
初めて俺、――餅…焼いたよ……
いやいや。焼きもち焼いたよっ!
自分自身に驚いて……いた。
「うん。まだ、大丈夫だよ。」
満留は、俺の隣の席に座った。――
コーヒーを煎れる俺を源は、じっと見ている……
視線……敵意を感じた。――怖っ…
あられさんは、食べながら、――そんな源を悲しそうに見つめる。
俺達の交差する思いを知ってか…知らずか……
渦中の満留は……アクビをしていた。
「満留。はい。コーヒー。――眠そうだから、濃くしておいたよ。」
俺は、満留にコーヒーを渡し、自分にも足した。
「……誰のせいだか……はい。有難うね。美月。」
満留は受け取り――「美月、まだお腹空かないの?」
と、訊いた。
「満留と一緒に食べるんだ。半分こするから。」
俺は、言う。
「ぐはーっ!可愛いなー美月!――こりゃー、堪らないねっ。満留。ハハハッ。」
あられさんが、食べながら、笑う。
「待たれるって…ペース乱れて迷惑だよな。満留?」
源が、言ったが…
「いや。半分こは私が約束した。じゃあ――美月。もう少ししたら、二人で食べよ。ねっ。」
満留は、ニッコリ笑う。
俺は、目を見てしまった。――さっきのキスを連想し…興奮した……ドックンドクン……ヤバっ…
「うん。――コーヒー美味しねっ。満留。」
「うん。美月、美味しい…ねっ。」
俺も…ニッコリと、笑いたかったが……
デレデレしちゃってた…
あられさんが、振り返り…
「……ちょっと…こっちが、照れるわっ!幾つだと思ってんだよ!満留!ハハッ。」
「52か、53だよ。」――満留が言う。
「ハハハッ。」――自分を落ち着かせる為に笑った…
源は、「……言ってあるのか歳?…」 と、呟き…
その後は下を向き食べていた。
「訊かれたからね。」 満留が答える。
「この歳の女に訊く事かよ?お前も可笑しいよ……満留。いい歳の女が、みっともない!」
源は遂に、怒り出した。
「――みっともないのは…源ちゃんだよ!今の、源ちゃん、超カッコ悪いっ!」
あられさんが、言い。
又、沈黙が続きそうな雰囲気だった…
やはり、満留が、それを遮る様に…
「いい歳の女が…結構。――楽しいんだよね!今。」
と、明るく言う。
「……俺、帰るわ。――ご馳走様。」
源が、立ち上がり、足早に帰った。――ガラガラ。
「あられ……嫌な思いさせた。ゴメンね。」
満留が言った。
「俺も……ゴメンね。」 謝った。
「全然!本当の事を言っただけ!源ちゃんに遠慮なんかしたくないし!それに…私はねっ。源ちゃんとは逆だ。今の満留が好き!いつもの何でも諦めてるみたいな満留より、ずーっと好き。だって…本当に楽しそうだもん。――ご馳走様。私も行くね。」
と、笑顔で言った。――カッコいい人だな……
「有難うね。あられ。」 満留は、静かに言った。
その後、暫くして――満留が、俺のフカフカをしまいに、二階に行った。
プルプルッ電話が鳴った…満留が、二階で取った様だった。
俺は、考えていた…迷惑掛けてるのかな…俺。
源は、肉屋さんだ…これからも…付き合い続けなければならないのに…気まずくせてしまった。
浮かれ過ぎていた……
ミシミシ…満留が、降りてくる。――
「フカフカしたよー。服も全ー部。乾いたよー。良かったねー。美月!」 と、俺の方に来て……
「二人になったから、ご飯食べよっか?」
「うん。」
服が乾いたと聞いて…今の事も重なり……
出てかなきゃならないのかな……?…思ったんだ…
俺。――息が苦しい程……悲しくなって…
「豚汁と美月の鯖焼きを温めるから、待ってね。」
「うん。」――泣きそうになってた……
慌てて、携帯を持っち見る振りをした。
携帯には、何十本もの不在通知と、LINEの山だ…
憂鬱に輪が掛かる……
「はいよ。並べていいかな?」
満留が、訊いた。
「手伝う。」
豚汁とご飯を配り、鯖焼きを置いた。
満留が、二つお皿を持ち…
「美月、どっちが好きっ?」
トウモロコシを二つに分けたのを見せる。
「じゃあ、こっち。」
俺は、下の部分を指す。
「良かった。私、こっち。」
と、上を満留が、指す。
「食べよ。美月、ねっ。」 ニッコリ笑って……
「え……どうしたの?美月。……どうした?」
俺は、立ったまま下を向き…涙をこらえたんだ……
どーしても、――満留と居たかった。
キス…もう一度…いや、何度でも…して欲しい。
自分もキスがしたい…満留の唇に…したい……
堪らなく、満留を…抱きたい……
誰にも……触らせたくない。渡したくない。
――絶対。離したくない…離れたくない……
それは…抑えられそうもない感情だった。
「どうした……?」
満留が、俺の近くに来て顔を覗きこむ…
顔を見せない様に俺は、横を向き……
「だって……服が乾いたって……聞いたら、出てった方が良いのかな…って。――さっきも……あれさんや源さんに嫌な思いさせて――俺…満留を困らせてる……から…」
俺は遂に…泣いちゃって……満留に見られるのが嫌で、――後ろを向いたんだ……
「――自分だけ…楽しくて…嬉しくて…満留と居たくて……満留と居たい。でも……出てかなきゃ…って…フカフカも出来ちゃった……服も出来たって…悲しくなってきて……」
満留が後ろから、そっと…俺を抱きしめ言う…
「――美月。私は、美月になんて言った?…好きなだけ、居れば良いよ。って言ったでしょ?――私、源ちゃんに何て言った?結構…今、楽しいんだよねって言ったよね?――服が乾いたって言ったのは、ジャージーが短いからだよ。フカフカも新婚初夜みたいにピッタリ並べて敷くよ。――全部。美月の好きにすれば良いの。出てく事なんか、ないんだよ。二人で、食べようよ!――お腹空いたよ。鯖焼き、あーん。してくれるんでしょ。ねっ。」
「本当に…?――満留。いいの?俺の好きにして。」
俺は、振り向き……訊いた。
「そうだよー。約束するよ。」
満留は、俺に小指を出した。
もう、涙は乾いていた…
「うん。約束だ。」 俺は、小指を絡めた。
「安心したら、お腹空いた!満留にあーん。して貰って、満留の豚汁食べるよっ!」
「はあー?この、無自覚タラシがっ。甘え過ぎッ!今日の、あーん。美月の担当でしょ?――全く……ハハハッ。」
「ハハハッ。あっ!満留。源さんと二人でご飯いっちゃ駄目だよっ!…俺。お留守番なんか嫌だっ!」
「はいはい。行かないよ。甘えた君、食べるよ!」
「クール君だってば!――頂きます!」
「えぇ……今、メソメソしてたのがクール君かい…ふぅ……頂きます!」
満留は、首を振る……
「満留の豚汁、今日も美味しい!ん!鯖焼きも美味しいよ。はい、満留。あーん。」
「はいはい。。あーん。ん!美味しい。ねっ。」
出たよ……ねっ。が…――
俺は、満留の瞳を見つめていた……
あーん。って……もーっ!可愛いなぁー。
俺は……満留のほっぺにキスしていたんだ……
だって…「全部。美月の好きにすれば良いの。」
満留は、そう言ったんだもん。
満留は…一瞬、箸を止め。
「ふぅ……さっきの罰ゲームの仕返しか?しかも、自分は、予告無しキタよ!……全く。解らん…」
「俺。好きにしたっ!美月の好きにすれば良いの。って、約束したんだもん。」
俺は、小指を見せ……ニッコリ笑った。
「チッ。――しまった…全く……食べなさいっ!」
満留は、呆れた様に又、首を振って…言った。
「うん。豚汁、おかわりしてくる。ハハッ。」
俺は、涙が乾くどころか、激ご機嫌…?だった。
「全く……始末に負えないな…このガキ……」
満留はまだ、ブツブツ言いながら食べていた……
食事が終わり、満留が、新しいお茶を配る。
俺は、先に食べ終わり、カチカチと作業をしていたが、一段落したので手を止めた。
そして…
「ねえ?満留はずーっと、ここに住んでるの?源さん達とは、幼馴染み?」
どーしても、ライバルが気になる…
ライバル…?俺……満留が好き。確定か…?
「違うよ。五年前に越して来た。――あられも源ちゃんも、そこからだよ。」
満留は、お茶をすすり…答えた。
「えっ…そうなの…?」
「うん。中古でここを買った。この海で住みたかったの。――会社…やめて、ゆっくりと海を眺めて暮らす……そう出来るお金は残らなかった。ハハッ。――だから、店始めたの!」
「へー。――凄いね。」 その行動力に、驚く……
「別に凄く無い。私、結婚に興味が無いから…自由に出来たってだけ。いつまで続けられるかも解らないしねっ。ハハッ。」
満留は、普通の事の様に言う。
「結婚に興味無いんだ。――じゃあ…源さんと結婚しないよねー?」
気になっていた事を訊いた。
「絶対しない。――ここに来た時から、あられの気持ちを見てきてる。」
「あられさんに気を遣って…しないって事?」
「全然、違う。私が、源ちゃんに対して、そんな感情まるで無い。」
「そっ…そっか!」――俺は、ニコニコした。
「……?はぁ……そーだよ。」
「ねえ。ここ冬は?――」
満留は、超…嫌な顔をして…
「冬は……酷い。雪の山。はぁ……この歳で、あの雪掻きはキツいって。冬が無きゃ、良い所なんだけどね…」 溜息をつき、言った。
「じゃあ、俺がやる!雪掻きやって、雪だるまを作るよ。満留と俺のやつ!」
「はぁ……夏の次は、冬の話し?……全く…」
「ううん。冬だけじゃないよ。春は、満留と花見に行くよ。お弁当持ってね。お重のやつ!で…秋は、紅葉狩り!全部。満留と行くよ。ねっ。」
「美月は……今、吊り橋効果!頼れる人が居ないから、そう思うだけで。――数日したら、落ち着いて、そんな思いもなくなるよ…大丈夫だ。ねっ。」
満留は、お茶をすすり……海を見た。――
俺は、普段…どんな生活を送ってきた?――
少なからず…こんなに喋る男じゃあなかったよな…
何で…満留には喋りたいんだろ?
何で…隠したい言葉までもが…
口から出ちゃうんだろ?
「俺。満留と…同じ事考えたよ。何回も自分に問いかけた……この海に居られる嬉しさでテンション上がってるだけだろ?ってね。」
満留は、まだ海の方を見ている…俺は続けた……
「さっき、出てかなきゃって思ったら……息が苦しくて、――俺。満留と居たいんだ……普段はさ…こんな事、心で思っても…口にはしないよ。」
満留は……俺が、「苦しくて…」と、話した所で…
やっと、俺の方を見た。――
「ねえ、満留。何でかな?――ここに来てから、心で思うだけじゃ足りなくてね――言葉になって出ちゃうんだ……自分でも、本当に困ってるんだよ……ハハッ。――だから、俺が言った事は…口だけでも、吊り橋効果でも無い…心で感じたまんまだよ。こんな、変な自分はね……自分自身初めてなんだ…だから。俺も諦めてさ、好きにしてるんだ!満留、満留って…変だよね!俺。ねっ。満留。ハハッ。」
満留は、じーっと俺を見つめて……
「確かに変だよ。不可解……でも大丈夫。私も吊られて、変になりかけてるから…ハハッ。ねっ。」
満面の笑みで言った。――
笑顔に魅せられて……トドメの…ねっ。で……
完全に落ちた。――我慢…出来なかった。
俺は、満留のほっぺに又、キスをしてしまった。
満留は、真顔に戻り……
「――お客様、店内ですが。」 と、言う。
「存じております。」 俺も、真顔で答え……
「だってさー。満留がいけないんだよ!ねっ。て言うんだもんっ!」
満留は、不可思議な顔で…
「はぁー?意味が解らん……全く……ほっぺ減ったらどーするのっ!美月、コーヒー!全く……」
「ほっぺ減ったらねぇ……責任取るよっ!俺。――コーヒー煎れる。満留と飲もっと!」
おいおい……終いには…プロポーズかっ!俺。
遂に……我慢。と言う言葉までもが……
宇宙の果てに、散ったようだ。――
コーヒーをすすり、カチカチと…今日も、仕事は順調に進んでいた。――最後の仕上げを終え。
俺は、手を止めた。
満留は、夕陽に染まる海を見て…静かに、コーヒーをすすっていたはずだが……
いつの間にか…カウンターに腕を乗せ、可愛い顔で…俺を見ている。――
可愛いって…わざわざ……付けるなよ…俺。
「ん?どーしたの?可愛い顔して。」
はぁ……口にまでするのかよ……
「可愛い顔ってね……遂に、目まで変になったのかい?美月氏。53歳に向かって!ハハッ。」
「いや。変じゃ無いよ。俺はね、何故かさー…満留が、可愛くて、仕方が無いんだ。」
「何故かさーってね……。――本当に、何故かね?こっちが訊きたいもんだよ!」
「俺……さっきね、生まれて初めて、焼きもち焼いたよ。源さんにさ。」
「源ちゃんに…?何で?」
「源さんは満留の事、マジだよ。――俺の知らなかった頃の満留と、長い時間を過ごして来たんだなって、思ったら……悔しかったんだ。」
「長い時間って…配達とご飯食べるだけじゃんか?しかも、マジって、大袈裟な。」
満留は……全然、解ってない!
「大袈裟じゃ無いよ!満留を……お店の人。じゃなくて、女として見てる奴が居るだけで…俺。堪らなく、嫌なんだ……満留を見てるだけで、話してるだけでも……取られそうで、怖くて、嫌なんだもん…これが、焼きもちでしょ?」
ちょっとぉ……ぶっちゃけ過ぎだよ……俺。
「焼きもちかは…解らないけど…大丈夫だよ。――源ちゃんが、私を女としてみても、私は、男としては見ない。」 満留は言い切り…
「あのね。誰も取りやしないよ。取らないから今まで一人できたんだからね。全然、心配無い。」
と、続けた。
「満留は……自分がどれだけ綺麗で、しかも、可愛いか…解ってないんだよ!」 又、おこだよ…俺。
「はあ……。怒りながら…凄い褒め言葉を有難う。
美月――他の子には、発言に注意しなよ。マジで。さっきから、危ないよ。」
「それこそ、全然、大丈夫だ。俺、他の人にこんな事……絶対に!言わないから。」
だって、他の人に対して…こんな感情を持った事も無いんだから。
「あーぁ、被害者は私だけ……?ついてねぇなー。全く…何でこんな歳で、こんな目に合うかなー。」
満留は、独り言の様にブツブツ言った。
「被害者ってなんだよー!俺……昼間言ったよね?ベタ惚れなんだ……本当に、満留だけは、誰にも、絶対に譲れない!」
「はいはい。譲る人も居ないから。大丈夫です。」
「真剣だよ。俺。――あっちも…真剣だからな…」
俺は、ハッとして……
「ねえっ!満留。皆で飲む時さ、満留は俺の隣だからねっ!あ……向かい合わせも嫌だから……あられさんの前で、俺の隣ねっ!絶対だよ。約束してよ!源さんの隣なんか座ったら……泣くよ…俺。」
「もう、完全に変になってるな。コイツ……はぁ…はいはい。承知致しました。美月坊ちゃん。」
「満留!又、子供扱いした!俺、30を過ぎた大人だよ!――ちゃんとさぁ…男として見てよぉ……」
「うーん。男として見るなら…フカフカは、やっぱり、部屋の隅と隅に離さなきゃいけないねー。罰ゲームなんて言って…冗談で、キスもしちゃいけないよねー。大人の男じゃね……?」
「あ…あれだ。やっぱり……俺。子供だったよっ。まだ、まだ、子供だからさー、フカフカもピッタリ並べてね。キスも……沢山、沢山してよ……全然…子供だよ。俺。」
「ぷっ。ハハハッ。美月、からかうの、超楽しー!やっぱり、子供だなっ!」
俺は、喜び、笑う…満留の頭を、突然引き寄せ……
長い……ディープキスをした。――
「子供なめると…怖いよ。」
と……真顔でクールに言った。――が…
「顔……真っ赤っか。……ですよ。――ぷっ。」
「――満留っ!今夜、襲うじょっ!」
だからっ…ぞ。だろ?……ここで…カムなよ…俺。
「ブッハハハッ!――最高!美月。」
「さ…最低!満留っ!」
馬鹿な会話が有って良かった……
俺は…興奮なんかじゃない――欲情していた。
頭を抱き寄せた腕が……満留と絡めた舌が……
痺れていた……我慢、我慢と、頭の中で繰り返す…
満留に迫ってしまい……拒絶されたら…
もう、一緒には居られない。――
それが、一番……怖かったんだ……
欲情を抑えても、尚……甘い痺れは、体全体を支配し続けた……こんな事態に遭遇したのも初めてだ…
キツい……ディープキスをした自分を恨んだ。
満留は、頬杖をつきコーヒーをすすって……
ボーッとしていた。
この魔性系には、ディープキスも効きやしない…
「ねえ。満留。俺のキス……少しは…感じたー?」
いやいや…訊かないだろ?戻って来て!普通の俺。
「うん。感じた。」
――ナンテ…?……今、な…何て言った?
感じた……って言ったよなっ?感じたってさー!
じゃあさー、何で?何であの態度なんだよっ!
もっと…こう…甘ーい感じのさぁー!……
感じたんだ……満留。
「俺も……堪らなく…感じた。」
俺は…そう言っただけだった。
ドクンドクン…し…心臓の音がしていて良かった…
嬉し死んだかと思ったよ……俺。
満留が、突然…話し出す……
「……ここに来たきっかけはね、年下の彼と別れた事だったんだ。――凄い好きだったの。一生懸命に愛してた。――自分も相手も疲れる位にね。でも…歳には勝てないって…感じかな?恋は終わった……その時…大好き海なに住んで…誰も好きにならず、好きにもなられずに。一生を過ごしていきたくなったの。」
満留は、独り言の様に言い……続け…
「調度、体型も年齢的に、崩れ始めてきて……体重なんかも、みるみる増えたし!白髪も……お腹並みに出てきてさー。ハハハッ。――そんな、自分に何の期待もしなくなってから、何年経つんだろう……お洒落もしなくなって。――終いにゃー。歳も解らなくなった!ハハハッ。」
満留は、笑って……でも…真顔で。俺を見たんだ…
俺は……知っての通り、可笑しいんだよ。…心の全てが言葉になっちゃうでしょ?
今も、話しを聞きながら心で沢山、思ったよ。
それが、満留に話すべき言葉なのかは解らない。
本来、大人ってのは…喋る言葉を選び、言い方を考えてから、発言するもんだろ?
だけど、俺は今、子供なんだ…
だから、心のままを満留に言ってたんだ。
「満留。今のって…俺に対する牽制でしょ?」
この時点で…言わないよな?でも、俺は、続けた…
「せっかく話してくれたけど…多分、無駄だと思うよ。――前にも言ったよね。自分も解らないんだ。この場所に来てから、確実に違う人格になってる。――そんな、俺には…何の牽制も効かないよ。自分自身の事さえ自由にならないんだもん。無駄だ。」
俺は、満留を見つめ続けた……
「今、俺がしてる行動の全てが…心のままに従ってるだけだから、言っちゃうね。――満留。俺は、満留が別れた男じゃ無い、一緒にしないで。俺は……満留が疲れる程好きだった男よりも、もっと俺を好きにさせたい……もっと愛して欲しいって。強く、願ったよ。――満留が人を好きにならないのは自由だ。でも、源さんや俺が満留を好きになるのは、満留が決める事じゃ無い。好きになられるのが、迷惑でも、俺達の…俺の自由だよ。」
満留は、頬杖を外し……何か、言いた気にしたが…俺は、言葉を止めなかった……
「満留が好きにならなくても、俺が、その何倍も満留を好きでいたいんだ。――俺が、可笑しくなったのは、今の満留のせいだよ。俺が、キスをして…堪らなく感じたのも、今の満留だ。――体重が増え、白髪も増えた、今の満留なんだ。それでも、満留が、今の自分に期待しないなら、俺が、全力で期待する。いや…もう、してるよ。――歳が…解らなくなるなら、毎年、俺が一緒に誕生日を祝う。バラを歳の数だけ花束にして、贈ってね。」
俺は、今の満留を真剣に見つめていた……
「これが、満留の話しを聞いている間に…俺が、心で思った全てだよ。――俺が惚れたのは、今の満留なんだ。――牽制したって…止められないよ。俺自身にもねっ!ハハハッ。」
満留は、暫く黙り……肩を竦めて……
「はぁ……美月の好きにしなよ。――約束しちゃったんだから。ねっ。」
小指を見せて、苦笑する。
「うん。約束しちゃったんだから。ねっ。」
俺も、小指を見せて……満面の笑みになった。
「いつまで続く?……後、数日じゃなきゃ、こっちの身が持たないよっ。あんな……色っぽいキスされたんじゃねっ!……ガキのくせにっ。全く…」
俺は、自分でしたキスを又、思い出して…
真っ赤になり…
「一生、続くよっ!覚悟してね。満留。」
「はいはい。美月坊ちゃんっ!」
満留は、俺のほっぺにキスをした。
「な…何で!何でキスしたの…?ねえ!」
「えー。坊ちゃんが…僕は子供だから、沢山しろって、さっき言ったんじゃん。」
「ぼ…僕なんて言わないよ!ぼ…坊ちゃんってなんだよ!しろって言われたら誰にでもキスするんじゃないよね?俺だけ?ねえ、満留!俺……」
いきなりだった……満留が俺を引き寄せ…長く…甘い…ディープキスをした。――大人のキスだった…
「キスってねー……こうやるんだよ。み.つ.き。――ハハッ。さー。夜のお.た.の.し.み食べよ!ねっ。」
ニッコリ笑ったかどうかも解らなかった……
ガタンと俺は、椅子から立ち上がった。――
ガタンと、直ぐ椅子に落ち……恋にも落ちていた…
なんて…上手い事を言ってる場合じゃねーよ!
蟹の準備にさっさと取りかかった満留の背中に……
「満留。――フカフカを、――隅と隅に……してくれ……俺。マジでヤバい。自身ない……よ。」
マジ真顔で言っていた。
「ハハハッ。大丈夫!叔母さんのダルダルな裸を見たら、若者は、逃げ出すさっ!美月が普段相手してるモデル張りの体じゃない。肌もね。ハハハッ。」
馬鹿っ!満留には、解らないんだ!
俺が…どれ程…満留を抱きたいと思ってるか……
どれ程……拒絶された時の恐怖を感じているかも…
「蟹。出来たよー。美味しそー!ねっ。美月。」
俺はまだ…キスの余韻から…躰の甘い痺れから…
抜け出せずに…ドクンドクンいつもより早い心臓の音を自分で感じていた…
「ボーッとしてると、蟹爪、全部食べちゃうぞ!」
満留が、俺の様子に呆れて言った。
ハッとして、
「駄目!半分こだじょ。」
解ったよ……キスすると必ずカムんだね…俺。
「ブハハハッ!出たよっ!美月のじょ。が…ハハッ」
「満留が、あんな……色っぽいキスするからだろ!せっかくのお.た.の.し.み。なのに…俺……味が解らないかもしれない……」
「そー、美月、キスはお.た.の.し.み。じゃないんだねー?じゃあ、もう、止ーめたっ!」
「お.た.の.し.み。だよっ!超絶お楽しみ!何千回も何万回もして欲しい……でも…躰の力が…フワーッって、抜けちゃって……蟹、食べられなくなよ…」
「はい。美月、あーん。」
満留は、剥いた蟹を俺に、あーん。してくれる…
「あーん。……んーん!美味しー!満留。もっと、あーん。して。」
「蟹の旨さで、普通に戻ったな。コイツ…甘いっ!自分であーん。しなさい!私も食べなきゃっ!」
「チェッ。満留にあーん。して貰うのが、美味しいのに……」
「じゃあ、――私が、三本食べたら、美月に一本、あーん。するよ。」
「自分で、食べさせて頂きます。」
「ハハハッ。さようですか。」
二人とも無言で、蟹を食べ進め、最後の蟹爪を残すのみとなった。
「蟹爪って、超絶っ。美味いよね?居酒屋に有れば蟹爪フライは、必ず、頼むね。」
満留はモグモグしながら、言う。
「居酒屋に有るの?この辺ならではだね…居酒屋に行きたいな満留と。」
俺もモグモグしながら、言う。
「それは駄目っ!居酒屋には若いのも来る。美月…見られたくないんでしょっ?危険だよっ!」
「……満留……?」
満留の強い口調に……驚いた…
「あぁ……いや…ウチも一応に居酒屋なんですが?ここじゃあ不足ですか?美月氏。ハハ。」
満留は……取って付けた様に言った……
「全然。不足なんか、無いよ!でも……源さんの気持ち解るな…お洒落した満留と二人で出掛けてみたかったんだ…俺。――満留は面倒くさい!って、言うんだよねー。」 俺は言ったが……
満留は俺を見て。
「ううん。美月の為なら、お洒落して出掛けるよ。」
俺は……世界一の幸せ者か?言葉だけで興奮した…
「で…出たよ!満留のニャンデレがっ!満留こそ…気を付けて生きろよっ!」
興奮を鎮める為、俺は言った。
「えー。私、普段、クールか?ハハハッ。」
「クールっていうか……意地悪だな。俺をからかってばっかりだ。」
「だってー。可愛いんだもん。直ぐ照れるから。ウチの住人は。ハハッ。」
俺の髪を撫でる。
「て…照れる様な事するからだろ!ウチの魔性系がさっ!しかも、蟹食べた手で…撫で撫でしたな!」
「ハハッ。撫で撫で?可愛いなー。じゃあ、今日、お風呂で、髪をゴシゴシしてあ.げ.る……ハハ……」
「うんっ!うんっ!」
超クイ気味キタよ……俺。……しかも2回ね…
もし、ゴシゴシされたら…?俺。ヤバいだろ……
絶対。マズイ状態にになっちゃうよなぁ……?
でも……ゴシゴシして欲しいよ…満留に……
うわーっ!妄想だけで…ヤバっ……
落ち着つこうか?俺。――うん。満留にゴシゴシして欲しい……欲しいんかいっ!俺。
一人で、ニヤけていたらしく…見ていた満留は……
「おいっ!冗談だよーっ!このガキは……うんっ!って…怖っ!ハハハッ。」 笑う。
「え……冗談……なの?ゴシゴシしないの…?」
「はぁ……もー!全くっ……ゴシゴシしますよっ!でも、ちゃんと腰にタオル巻く事!」
「えっ?お風呂に……一緒に入るんじゃなくて?」
な…何を言う……の。俺。
「はぁーっ?入る訳、無いでしょ!このガキはっ!全くっ……コーヒー煎れて!」
「チェッ。満留がいけないんだよ!紛らわしい言い方するからだろ!色っぽい言い方してさっ!」
「あのねー。一体においてさ……私を、色っぽいく感じる。美月が可笑しいでしょう?」
「ウン…可笑しいって何回も、思ったんだけど……俺……やっぱり堪らなく惹かれるんだ……満留を抱きたい……って思っちゃう。――でも…もし、満留に拒否されたら…って――満留と居たいんだ…それが一番大切だから…お…俺コ…コーヒー煎れる!」
ぶっちゃけ過ぎた俺は……焦って立ち上がり……
そーっと、振り返って……
満留を…満留の反応を見たんだ…
満留は、俺を見て……ニコニコしていた。
「手が止まってるよ―。美月!早くコーヒーでも、飲んで落ち着かなきゃ…凄い告白されちゃって……ドキドキしてるんだからっ!ハハッ。」
ハハッ。の、どこが、ドキドキしてんだよっ!
「満留なんか……全然、ドキドキしてないじゃん!俺ばっかりだよ。テンパっちゃってさー…我慢しなきゃっ…我慢だって…」 コーヒーが落ち…
配りながら俺は、相変わらずの。おこだった…
「俺なんか…もう、心拍数がエラい事になってるんだから!これ以上、魔性系発揮したら……救急車呼ぶ事になるからねっ!知らないよっ!」
満留はどうせ、笑って俺をからかうと思ったんだ…
なのに……
「解った……もう、からかわない。――やっぱり…期待するのは怖い……あんな思いは懲り懲りだ…」
満留は、辛そうに呟いた。
俺は、疲れる程の……そこまでの想いで、人を好きになった事が無かった…
満留に、そこまで想われていた男の事が、唯々……羨ましかった……
俺は……こんなにも自分が満留に惹かれている事を素直に話しても…
まだ、何一つ自分の事を話していない……
もし、満留が正体を知り、俺が逃げてきた人達と同じ様な態度に変わったら……考えると…怖かった…満留だけには…今の、何も持たない…
俺自身だけを愛して欲しかったんだ……
でも……万が一、迷惑を掛ける結果になった時を思うと、――話しておかなくてはならない。
今晩…時間は明日になるが…閉店したら話そう。
自分の話しを……
憂鬱な不在着信と…LINEの山の理由を。――
その3に続く
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