だるま食堂の住人 その3
俺の煎れたコーヒーを二人ですすりながら…
「ねえ、満留。土曜日なのに…誰も来ないね……?いつも、こんな感じ?」
俺は…満留がさっき、いつまで続けられるかも解らない……と、言っていた言葉が気になっていた…
「しっかし、失礼な事を平気で訊くねー。美月は!ハハッ。週末は、ポツポツ来るんだけどね……今日は、来ないねー。」
満留は、日付をまたごうとしている時計を見た。
「昼間のお客さんだけじゃ…キツいよ…ね?」
昼間って言っても漁師さん達と源さんで…後は工事の人は、工事が終われば来なくなるだろう。
「夏になるとね。それなりに……お客さんが来てくれる…今は、車中泊の人も多いからね。でも、キツい事に変わりはないか!ハハッ。」
「満留は、ここに来る前は…何してたの?OL?」
「ううん。アパレルだよ。」
「へー…そっか…」――いい機会だ……
俺はね、って続けて話そうとしていた。――
俺は……解っただろうが…携帯小説家だ。
元々、本を読む事が大好きだった。
昔なら……小説家になる事など、不可能だった。
考えてもいなかっただろう。
俺は、その時期、暇だった……とはいえ、人と会うのも、億劫だった。
本か携帯を片手に過ごしていたんだ…
フッと携帯小説を投稿してみようかな?と、思い立ち、携帯を片手にカチカチ始めた。――
初めこそ、数人にしか読まれなかったが、――
有る。一作品を切っ掛けに俺の人生が変わった。
ドラマのオファーが来たんだ。
俺は、大喜びで飛びついていた。
続けて、他の作品で、書籍化の話しも来た……そこで、盗作騒ぎが持ち上がった。
相手が著名人だった為、メディアが騒いだ……
俺は、それまで一切、顔出しはしていなかった。
必要の無い事だから…
盗作騒ぎが切っ掛けで、顔出しを余儀なくされた…
そこからは…散々だった。――女性ファンが増え、それ自体は嬉しい事だが…ろくに、作品も読まずに
写真撮影だ、なんだと、騒がれる。
呆れた事にCMの話しまで出る。――
俺は…俳優さんでもアイドルでも無い。――
小説家なんだ……小説を書く時間も無い。
俺は、小説が書きたかった……静かな場所で……
そんな時だった……ストーカー騒ぎが起きた。
怖かった……人間の異常な執着が、怖かった――
又、メディアが騒ぐ……その人達も怖かった。
マンションの前に待ち伏せ…朝晩問わずに電話を掛けてくる。――こっちが加害者の様に……
どうなってるのか……LINEも、入っててくる……
俺は、ノイローゼ寸前で……
家の前に張り込む奴らの隙をつき逃げ出した。
家から遠ければ、何処でも良かった。
乗り継ぎ…乗り継ぎ、――無人駅で降りた。
余りにも、人気がなさ過ぎた。――
ひたすら歩いて…歩いて……疲れ果てた頃。
満留の「だるま食堂」を見つけたんだ…
「満留。俺はね……」
と、今の話しを切り出した。――
俺が、話し終わると……満留は頷いた……
「知ってる……あられがさっき、電話で…言ってたよ。――言おうか、迷ってたらしいけど…美月を守ってあげてってさっ。」
満留は、知ってたんだ……
だから…居酒屋は…危ないって……
あられさんは、初めから解っていて…俺に変わらず接してくれたんだ。
二人の想いに……感謝した……
「俺……初めから、話さなくて…ごめんなさい。」
「関係ないんだよ。美月が誰でも関係ない。私が、信用していいと思ったから、家に上げたんだもん。泥棒じゃ嫌だけど、――ハハハッ。後は誰でも良いよ。美月は美月じゃない。ねっ。」
満留の言葉に……又、安心していた。
満留は…いつでも俺を安心させてきくれる。
あくまでも…気持ちの上では…だ。
躰の面では……安心など出来たもんじゃあない!
「でも……満留…迷惑を掛けるかもしれないんだ…そんな事になる前に、やっぱり……」
俺は、出て行った方が良いと、又思った……
ここだけは、守りたかったんだ……
絶対に荒らされたくない……俺の聖地だったから…
言い掛ける俺に…満留は小指を立て……
「全部。美月の好きにすればいい。約束でしょ?」
「満留……本当に有難う。俺は、世界一の幸せ者だよ。――俺、満留が居ればそれだけで良い……」
俺は、涙ぐんでしまった。
「美月、明日はお休みだよ。――何がしたい?」
満留が訊いた。
「満留とね。一日中フカフカに居るよ。――でも…満留のフカフカが良いなー。別々じゃあ…詰まらないよ。ねっ。」
「ねっ。じゃないっ!えー。一日中、狭い思いしたいのー?」
満留は、しかめっ面をした。
「うん。狭いの楽しいねっ。満留をギューッてしてるんだ。俺。」
考えただけで……ドックンドクン…発情期か?俺。
「だからー。眠る時はノーブラだってば。」
満留は、サラッと言った。
「満留っ!そんな事言っちゃ駄目!俺…どーしたら良い?くっつきたいし、ヤバいし…自信ないし…」
「美月、風任せで良いでしょ?風任せで、ここに来たんだから。――先の事ばかり考えても…どっちに風は吹くか解らない……ねっ。」
はぁ……又だよ…ねっ。で…俺は、風に任せてみる事にしたんだ……けど…自信無いわー。
「そうだね。風に任せるょ……」
取り敢えず、答えた。
「休みだからさー。豚汁つまみに…今日は、飲もうか?一人……一本づつ!」
満留は、俺を酔わせて眠らせようとしてるのかな…だとしたら、やっぱ…拒絶される……?
「えーっ。半分こで良いよー。俺……益々ヤバい。」
満留と、半分こって言葉が気に入っていたんだ。
「ヤバいってー?どっちの意味?出来なくなる方?」
「で…で…出来なくなるなんて言葉、満留っ!言っちゃ駄目だよっ。その気だって思われる……絶対に他の奴の前で言わないでっ!」
「ふぅ……。この説教坊主は…私を、幾つの小娘だと思ってんだろ?」
「52か53の小娘だよっ!――あー、ちなみに言って無かったけど、俺。32歳だよ。」
俺は、思い出し…言った。
「2歳じゃなくて?」
……確かに…今の俺は、そのレベルに…満留、満留って連呼してるよな…
「満留」って名前が、気に入っていたんだ!
「満留っ!怒るよ!大人だって言っただろー?今日は、覚悟しとけよなっ!」
「何を覚悟するのかな?美月ちゃんっ。」
「えっ?何って……あの…色々だよっ!」
真っ赤になった。俺を見て満留は……
「ハハハッ。生意気なっ。」
と、又撫で撫でした。
勿論。俺は、デレデレしたんだ……
「あーあ。もう、閉めようかなー?美月と、ゆっくり……ファー。…したいしねっ。」
変な所で、アクビを…しないで下さい……
したいしねって…無いわー。無い!我慢、我慢。
「美月は?まだ、やるの?」
やるの?って……何を?――はい。仕事ですよね?「嫌…俺も仕上げちゃったから。――お休み取る。」
正直、ここに居ると…まだまだ、書ける…
でも…いつ終わりが来てしまうか解らない……満留との時間が、俺にとっては…一番、大切だから…
満留の牽制を受け。俺が話した事は、本当の気持ちだったから…
俺は、今夜の…満留に凄い期待してるし……誕生日の事も、勿論。実行しようとしてるんだ。
「二階のヒーター入れて来るね。まだ、夜中は寒いよね。」
満留は言いながら…二階に行った。
俺は、一人でソワソワしていた。
ミシミシと階段の音がする。
「さー。お風呂も入れてきたよ。フカフカも、並べてきたしねっ。――店閉めちゃうね!美月、先に行ってる?」
満留が訊いた。
「嫌だ。一緒に行くんだ。俺。」 と、答えた。
「はいはい。待ってね。やれやれ…」
俺は…一人で上に行き、フカフカを見て欲情するのが怖かったんだ……
満留と、一緒ならふざけていられると、思った……
「さー。行こう。豚汁も持ったし。ねっ。」
だから……二階に行く直前に……
ねっ。ってしないでよ……
「さー。行こうっ!」
俺は、落ち着かなきゃ……と、声を出してみた…
ミシミシ…二人で上がった……
「お風呂。ゴシゴシするから、――美月が、先ね。」
ほ…本当にするんだねっ!……腰に巻くの…タオルじゃなく…バスタオルを…お願い致します。――
フカフカがピッタリ並べて敷いてある……
「ゴクンッ。」――ある意味…一組の時より…
イヤラシい……?――連れ込み宿を連想した…
いつの時代だよ!……俺。
「わーい!フカフカ。」――本当にフカフカが、楽しい気持ちはあったが…自分自身を誤魔化す為に……俺は、はしゃいだ…
「ねー。二つフカフカが、有った方が広いでしょ?」
「……でも、満留と、ピッタリ張り付いて寝たいんだ…俺。――な…なんてね!ハハッ。」
「まぁ、気分次第だな。」
「出たよ!満留の気分次第が……」
「いや…美月の気分次第だよ。美月の好きにすれば良いよ。」
……本当に?……えーっ!…い…生きてる?俺。
「ピーピー」――お風呂が沸いてしまった…
「じゃあさー。髪を洗う時になったら、――声を掛けてよ。ねっ。」
…馬鹿!目をみちゃー駄目だ!……頑張れ。俺。
「うん。解った……ふぅー。」
深呼吸をして…俺は、出陣した。
体を良ーく洗い。…意味は無い……よ。
温まりながら、俺は、作戦を立てた。――話しをしていよう。――うん。そーだ……気が紛れるかもしれないし……
「お…満留ー。お願いっ!」
おまるって……頼むよ…俺。
「はーい。」――足音がこっちに来る…当たり前だ。
ジャージと、トレーナーの裾をまくり満留が入ってくる。
「おーっ。温まった?じゃあ、ゴシゴシしようね!」
「う…うん。……」
満留は、俺の髪をシャワーで濡らし、シャンプーを付けてゴシゴシし始める。
気持ちが良かった!心配した事より…ゴシゴシが気持ち良くて、俺は、ご機嫌になっていたんだ。
「ねえ、満留。凄い気持ち良いよっ!」
「はいはい。良かったねー。美月。」
「毎日する!満留もしてあげようか?俺。ハハッ。」
「はぁ……タオル剥がすよ!ガキが…全く。」
「そんな事したら…大変な事になるよ!良いのッ!」
「ああ、どうぞッ!ハハハッ。」
この、魔性系には、裸の俺も効き目が無い様だ……
どうやったら…俺に男を感じてくれるのかな?
余り、変な事を考えるとヤバい事になりそうだからなぁ…話しをしよう…
「ねえ、満留。誕生日いつ?」
薔薇の花束の関係が有り、俺は、訊いた。
「9月だよ。10日。美月は?」
何となく……9月だと、思っていた…やっぱり…
「一緒だっ!9月16日。月系は9月なのかな?」
「中秋の名月…15夜だから…9月なのかな……」
「じゃあさー。9月は二人でお祝いだね!満留。」
俺は、誕生日月が一緒なだけで、運命的な物を感じ、必ず、結婚、出来ると信じた……
っていうか…結婚まで言うんか?…俺。
満留と同じく…自分は……結婚には、興味が無いと思っていたが…
「目出度くもないけどね。この歳じゃ…ハハッ。」
「目出度いよっ!満留と俺の月だもん。」
「君の頭が目出度いよ……美月。――はいっ。出来上がりー。早く、お風呂入りなさい。」
と、満留は俺の裸の背中を叩いた。
「満留のお風呂、覗くからな!覚えてろよ!」
「はいはい。どうぞ。腰抜かすよ!醜くてねっ。ハハハッ。」
すっかり気持ちが良かった、俺は、満足感一杯だ!
「満留。どうぞッ!気持ち良かったー!」
「はぁ……良かったね。じゃあ、入るね!」
満留が、お風呂に入る。
ドライヤーで、髪を乾かして……
俺は、フカフカでゴロゴロ遊んでいた…
勿論。満留のフカフカでだ。
満留の匂いがする。――さっき、バックハグされた時も同じ匂いがした…
シャンプーでも、石鹸でもない、その人の匂いって不思議だな……
「上がったよー!――あー。美月は!人のフカフカでゴロゴロして!」
「満留の匂いがするんだもん。満留といるみたい。」
「全く…何が嬉しいんだかな…?はぁ…さて、ビールにしよう。豚汁温めるねっ!」
「うん。満留の豚汁食べたいッ!」
「はぁ……明日は、何回、満留って呼ぶか数えるかな?……全く……どーなってんだか……」
満留は、又、ブツブツ言いながら…豚汁を温める……
さっき、ドライヤーで髪を乾かす満留を見ていた時もそうだった…
満留が何をしていても…感じてしまう…
髪を梳く手も…少しぽっちゃりした後ろ姿も…
満留が居ると安心する。――自分は…劇的に人生が変わったせいで…ここが聖地に感じ。
聖地の女神像を満留に見ているだけなのか……?
俺が…本気で無いなら…今の態度は、満留にとって…自分に期待しそうになる恐怖でしかない……
前の別れを痛く…辛く感じている。――二度と同じ思いは、したくないと……
もし…普段の生活を穏便に、送っていたとしても、俺は、満留を選んだのだろうか?――
真剣に考えたんだ……
安心感などでは無く、満留を愛しているのか?と、自分に真剣に問いかけていた……
真剣に。――愛している。
この先…何が起きようとも…俺は、必ず。満留の所に戻ってしまう。と、言い切れた。――
今も…豚汁を温める……ジャージ姿の満留にだ……欲情する自分が居る……
例え…100人の若いモデル張りの女が一緒に居たとしても…俺は…満留だけに欲情するのだろう……
「美月、出来たよー。食べよ。ねっ。」
ぐ…欲情中に…ねっ。が……キター。
本気だからこそ、焦るな!俺。――アルコールを入れ、落ち着こう……それからだ…
「うん。食べよう!飲もう!」――言った。
「乾杯!頂きます。」 二人はグラスを合わせた……
満留の豚汁が俺を徐々に落ち着ける…
ビールも飲み終えた……
「ねえ?美月。やっぱり、もう一本開けない?喉渇いちゃったよー。ねっ。」
満留が、ほんのりと赤い顔で、ねっ。と言う。
満留は…俺を男として見ていない。――先ずは……この状況を打開しなければ先は無い……
「良いよ。本気で、何が有っても知らないけど。」
真顔で答えた。
満留は、立ち上がり…冷蔵庫に向かいながら……
「――出来ないよ。きっと……」 と、呟く…
ビールを注ぎながら…続けて…
「美月が、躰を見て、引くとかじゃ無い。まぁ…それも有りだけどさっ。――女の躰は…歳で、出来なくなるのだよ!ハハッ。そーんな事、何年間もしてないからねもう、出来なくなってる。きっと…ね。ハハッ。」
と、言い。ビールを飲んだ……
俺も…ビールを飲み…満留を見つめていた…
「はぁー。美味しいね。美月。普段…こんなに飲まないから。――」 ビールグラスを回しながら…
満留は、続けた……
「私ね。美月が来て…沢山、楽しんだよ。夕陽をゆっくり見たり…市場に行ったり…話しもした。久しぶりに人と過ごしてさー。温かい気持ちになった。二人で眠ってポカポカだったしね!ハハッ。」
俺は、満留を見ながら……呟く…
「何で……?嫌だって…逃げ出す位に…他の女は近づくのに…何で…満留だけは……近づいてくれないの…?何で……俺を…男として……感じてくれないの…?」
満留は…俺を見返し……
「私が…臆病者だからだよ。」 呟いた……
俺は、決めた……「臆病者さん。俺…予告するよ。」
そして……言う。
「今から、満留を抱きます。」
満留を抱き寄せ……キスをする…フカフカに、満留を倒した……
「だから……」
口を塞ぐ…深く……甘いキスをした。
ノーブラの胸を感じた……トレーナーに手を掛け…胸に唇を這わせる……止まらない欲情を…満留に伝え……感じさせたかった…
「んっ…」 満留の口から漏れる喘ぎに……唇を下に這わせていく……
「嫌……で…電気…消して……」
満留が…囁く……
「駄目だ。消さないよ……」
俺は、電気の明かりの中…満留を抱きたかった……
満留の躰に魅せられている事を…強く伝える様に…
何度も躰中を愛しながら……
「……ゴメン…俺。持って無い…いい?」
「……大丈夫だよ…」
長い時を掛け……俺は、満留を抱いた…
二人は満留の匂いのするフカフカで…暫く無言で…抱き合っていた…お互いの荒い息遣いが交差する…
満留が…沈黙を破る……
「で…出来たけど……痛いーっ!本当に処女膜って再生するんだー。……凄っ。ハハハッ。」
「ハハハッ。俺も…痛いーっ!本当に硬くなるんだね中……凄っ。ハハハッ。」 俺は、満留にキスをして…「――ねえ。満留。これからさ、一生、続けるんだから…俺、ググるよ。――今は、50代のセックスなんて、当たり前なんだ。潤滑ゼリーとか…他にも、色々な物が有るからさッ!ねっ。」
「はぁ……。妙に、熱心ですね。」
「当たり前だよ。やっと満留を手に入れたんだ……ここから、一生、満留しか抱かないんだからねっ。熱心になって、当然だろ?ずーと、の事だもんっ!今度は、二人が…気持ち良いーっ!ってなる様にしようね!ハハハッ。」
満留は…苦笑して…
「終わった後の感想が、痛いーっ!じゃねぇー……」
「プッハハハッ。」
二人で顔を見合わせ笑う。
「満留……お腹空かない?」
いやいや…そこは、……愛してる。…だろ?俺。
「私さー。最中にお腹が鳴ったよ……ビクッとしちゃった…」
「ハハハッ。知らなかった!満留、ムードねぇー。」
「ほぉー。じゃあ、私だけお握り、食ーべよっと。」
「え……。ズルいよ!俺も…満留のお握り食べるんだよっ!半分こは、大好きだけど…お腹空いてるから、一個づつっ!」
「あーあ……抱かれてる時、――美月。凄い…色っぽいな…やっぱり大人の男だ…って思ったのになっ…もう、甘えたに返っちゃったかっ!」
満留は言い…
「甘えたにも、萌えるけどねっ。」
と、キスをして…頭を撫で撫でした。
「い…色っぽい…大人の男…って思ったの?本当?ねぇー。満留……俺に感じた?ねぇー?」
「ふぅ……滅茶苦茶…感じたよ。」
「俺も……堪らなく満留に…感じた。」
二人でキスをした…このまま二回戦…と、「グゥー」
俺の腹が、待ったを掛け……
「ハハハッ。こんな明るい中で抱かれちゃえば…怖い物無しだねっ。二人でシャワー浴びちゃって、お握り食べよ!」
満留が言い…
「満留を見て抱きたかったんだ。期待した通り……凄い色っぽかった!――行こ。」
俺は、少し照れて……満留の手を取り、シャワーを浴びに行った。
満留が握った、美味しいお握りを食べ、ほうじ茶をすすりながら…
「明日、買い物行く?――美月のトランクス買わなきゃ…いつ狐さんがお嫁に行くか…ジャージも短いし…危ないかな……一人で行くか…」
満留が考えながら言う。
「お留守番、嫌だよ!一緒に行くんだ。」
俺は、満留と一緒に居たかった……
それに…他の用事も有ったんだ。
「じゃあ……キャップ深くかぶって…行こ。」
「うん!」――俺は、ご機嫌だった。
二人で歯を磨き…満留のフカフカのシーツを変え、抱き合って寝た。――満留のノーブラの胸に……
二回戦を思った……
可愛い寝顔で満留が眠っていた……チェッ。
発情期の俺も…直ぐに眠っていた……
隣の街に買い物に出掛けた。――出来るだけ速やかに買い物を済ませる…
「何か食べたい所だけど…危ないから、返ろ。」
満留が言い。
「俺、満留のご飯がいいもんっ。」 俺は答えた。
「ラブラブかよ……でも、嬉しい!」
勿論。ラブラブだよ!今晩もねっ……
家に帰り…満留の作った、美味しいお昼ご飯を食べた。――俺は、コーヒーを煎れ…
ミシミシ…コーヒーを手に二階に二人は上がる…
出掛けに、フカフカをしまおうとした満留を俺は、止めた…
「駄目だよー!帰ってから…二人でフカフカするんだからー!」 と、制した。
俺は、満留が食材を買う間に、薬局に行って…
ゼリーを買ってきたんだ。――用事はこれだった。
だから…今夜が楽しみだった……
けど、夜まで待てそうも無い……
はい…発情期です……俺。
コーヒーをすすりながら、フカフカに二人は並んで話しをした。――詳しい俺に起きた事件の経緯を、話したり……
満留が、お金に余裕が有れば、アジアの常夏の地に住みたかったのだと…話しをした。
「良かった!お金に余裕が無くてっ。」
「はぁー?酷く無い?それっ!」
「だって……ここに、満留が居なきゃ…逢えなかった!俺……満留に逢わなきゃ…――とっても、大切な感情を知らないで一生を過ごしたよ…」
満留に逢い、人には抑えられない感情が有る事や、
年齢を超えてでも、愛したい喜びが有る事も……
自分よりも、大切に思う人の存在を知ったんだ……
「美月。大袈裟!でも…私も知った事が有るよ…」
満留が……俺と逢い。知った事が有ると、言われて嬉しくなった。
「それ何?――何?」 是非、訊きたかった。
「人生、何が起こるか解らない。とか…現実は小説より奇なり…って…本当だなー。って。」
真顔で答える。
「……なんだよっ!それっ!――俺、凄い期待したのにー!許さないっ!」
俺は、フカフカに満留の両手を掴み押し倒した……
「美月……ちょ…」
満留をキスで黙らせた……
「ねぇ……キツい?」 耳に…囁く様に訊く…
昨日の今日だ…俺もまだ少し痛いのだから……
「……美月……大丈夫なの?」 満留も囁く…
「したい……抱かせてよ……」
俺は、満留の服を脱がせ躰中を愛した……
「あ…っ…」 満留が喘ぐ……
「……ゼリー買ったんだ…使お。」
キスをして、用意してあったゼリーを使った……
荒い息遣いのまま…俺は言う……
「凄いね…全然……違う。最高に気持ち良かった!
……満留は…どう…?」
「…待って……感じ過ぎてて……喋れない……」
荒い息遣いと…感じ過ぎてて……の言葉に……
俺は……欲情した…抑えが効かず……
又、満留に唇を這わせた……
暫くはさすがに二人とも無言で、息を整える……
満留が……
「はぁ…美月…二回連続って……この歳で…こんな……幸せが有ると思わなかった……」
俺を抱きしめキスをする…
「はぁ……幸せ…なんて言うと……三回目いくよ…」
満留は、目を剥き……
「覚えたての……高校生……かよ?」
「そーだよ。……覚えたて…本当に愛した人を…抱く事を覚えたて……」
俺もキスをして……マジで…ヤバい…
どーした…俺。――今まで…こんな事ないだろ…
と…考えながら……満留の胸に唇を這わせる…
「おいっ!少年っ!冗談でしょー…こらっ!待てってー。又、夜の……お.た.の.し.み。ねっ。」
えー。……仕方ないか…まだ…満留の胸に頭を乗せたまま……
「絶対!絶ー対に、――約束だよ?」
俺は、少し拗ねて……言った……
マジで……どーしたのさ…俺。
「もーっ!はい。約束。」
満留が小指を出し。――俺も絡める……
「あーっ!したいっ!どーにかしてよ。本当にさ!可笑しいって、俺。――満留の…体のせいだよっ!もーっ!嫌だっ!したーいっ!」
「ハハハッ。美月の言葉は…嬉しい事ばっかり!」
満留は俺にキスをして……
「軽く、シャワーしよっ。夜の為に……ハハッ。」
「ちょ…風呂場で襲うよっ!」
俺は…自分で言って…風呂場で…に欲情した!
本当の自分自身が抑えられなくなってるよ…俺。
シャワーを終えた俺達は…お茶を、すすりながら…
話す……話しが途切れた時……
俺は、言おうと、決めていた事を言い出す……
「ねえ、満留。――俺の仕事って…携帯が、有りさえすれば…何処でも出来るんだよね。」
満留は、突然、話しが変わった事に不思議顔で……
「はぁ……。」 と、答える。
「俺は、中途半端になってる問題も、――自宅も全てをキチンと整理して、ここに戻るよ。」
「はぁ……。」 同じ答えだ。
「婚姻届持ってくる。――満留と結婚するんだ。」
俺は、結婚してくれる?とは言わなかった……
満留に対して……海の事も…満留を、抱いた事も…俺は、自分だけの意思で言ってきた。
結婚だって同じ言い方にするっ!
「はあーっ?」 今度は違った。――当たり前だ……
が…俺は、続けた…
「満留と結婚するよ。それで、考えたんだけど……冬はさー、この店も混まないし…アジアの常夏の地に別荘を買って、そこに居ようね。冬の間、店の管理は、管理会社に依頼する。――夏には、別荘の管理を向こうの管理会社に依頼する。夏が好きな満留の為にそうしようよ。」――満留を抱くと決めた時に、もう、考えていたんだ……
この先、満留を幸せにする計画を…考えていた。
「はぁ……。」 又、戻った。
「少し時間は、掛かるけど、そう決めたから。――無駄に金持ちなんだよね。俺。――他には……満留は、何か…質問有る?」
「はあーっ?」 又、だよ。
「満留ー!はぁ……はぁ……って、止めてよ。又したくなるじゃん。」
「じゃ…じゃん。じゃねーよっ!い…今のはプロポーズだよ!」
「そうだよ。」
「そ…そうだよ。じゃないっ!冗談も程々にしてくれって!可笑しいって思ったけど…頭までかっ!」
満留が、信じずに怒る事は想定内だったよ。
「冗談じゃない。人のプロポーズを、冗談にしないでよ。――俺が満留を…ただの欲望や興味で、抱いたと思ったの?」 満留に本気を伝える……
「明かりの中で抱いたのは…真剣に――ここから先を向き合って行くって…俺が惚れて抱きたいと思ったのは、今の満留だって、伝える為だよ。」
満留は、首を振り……
「無理だ…私、53歳だよ。美月の人生狂わせる様な事、出来る訳ないでしょっ!」
これも、実は想定内だったよ。
俺は、小説家なんだ……台詞はよめるさ。
「日本人の平均寿命は、今、男が約81歳。女は約87歳だ。この先…もっと差は開く。――ここからの、30年以上を……俺は、満留と過ごすんだ。」
満留を見つめる…
「他の人とじゃ、俺の50年近い時は、過ごせない。
――満留に言ったでしょ?薔薇を毎年送るって……痛く無い方法を考える時も。ここから一生続けるんだから。って……ここから、一生、満留しか抱かないんだからってね。あの時点で完全に…プロポーズだって……思えよ。――」
譲れない気持ちを強く、伝える……
「俺は、満留と結婚するよ。」どうせ、満留は色々と理由をこねて、断るだろう。
俺は、勿論。諦める気は微塵も無いっ。
「駄目。」
ほら、キタよ……
「アジアの常夏の地だけじゃ、駄目。観光客の来ない…ここみたいな海が近くになきゃ嫌だよ。――私、夏の海が大好きなのっ!後……美月もねっ!」
はっ?えーっ!マジかっ……
げ…げ…現実は小説より奇なり!……やられたっ!
「満留ーっ!そうだ!海も買うよ!プライベートビーチならさー。人も来ないよ!ねっ。」
俺は、舞い上がっていた……
「美月!その金持ち発言も止める事。そんな事を言う美月には、興味無くなるよっ!」
満留は、悪戯っ子を嗜める様に言った…
「嫌だっ!一生、満留に興味を持たれたいんだよ。海の近くに別荘を買おう!そうに、決まってるよ!うん。うん。」
「ハハハッ。調子良いのっ!」
「そうなんだ!調子が……満留っ!今晩、覚悟しろよなっ!何連続もするからなっ!」
「ええーっ!明日、仕事にならないよー!ハハッ。発情期の少年、お腹空いたね!何、食べる。」
満留は、楽しそうに言った……
「胸が一杯で食べれない。……けど……満留の豚汁と夜の為にっ。焼き肉だなっ!ハハッ。」
「何処が…食べれないだよ…夜の為……怖っ!……ハハハッ。作るよっ!」
美味しい豚汁と焼き肉に満足しながら…
「俺。明後日位には……一旦、家に戻るよ。――全てを片付けたら……直ぐに戻るから。絶対に待っててね。浮気は駄目だよっ!満留は…隙があるから…気を付けてよっ。」
俺は、心配だった……源とかさぁ…不安……
「はぁ……始まったか…説教坊主…絶対に大丈夫。浮気って……私が心配するなら解るけど…ねぇ…」
「馬鹿だなー。今日と…明日で10回はするからー。
そんな体力残らないっ!ハハハッ。」
「ブッ。じゅ…10回っ?……まんざら…冗談に聞こえない所が……怖っ!」
満留は、吹き出して言った。
「冗談なもんかっ。その位やらなきゃ…冗談抜きで結構…満留に迷惑を掛けない様に、片を付けまで…時間が掛かると思うから……」
「やりだめか?」
「や…って…満留!女の子がそんな事言っちゃ駄目だよ!」
「……女の子ってねぇ……はぁ…はいはい。面倒くさい亭主になりそうだ…考えるかな……」
「いや……駄目っ!俺は、面倒くさくないって……有名だよっ!」
「何だそれ?ハハハッ。有名か!ハハッ。」
満留は、俺の頭を撫でて、笑った。
その後は…俺が、騒いで頼んだら、満留が一緒にお風呂に入ってくれた!
俺は、その後…三回!満留を抱いた……四回目には叱られたよ……俺。
朝、起きたら…満留は居なかった。
一階に耳を澄まし……音がする事に又、安心する。
支度をして…ミシミシ――一階に降りた。
満留が、振り返り。――「お早う。美月。」
と、微笑む……くっ…堪らんっ!
「お早う。満留っ!」――駈け寄り、キスをする。
「お客様……」
「存じております!――大人しくしてるよっ。俺。」
「ハハハッ。ご飯、食べちゃおっ。」
二人で並んでご飯を食べる。――食べながらも……
じーっと、見つめる俺に…満留は笑いながら…
「ハハハッ。――顔に穴が開くわっ!ちゃんと食べなさいっ!」 と、嗜める。
愉快な気持ちが、俺の躰をフワフワさせる。
食後のお茶をすすりながら……
俺は、携帯を操作し始める……手帳の必要さえも無くなった…次々、言葉もアイデアも溢れる……
お昼になった。――今日も、漁師さん達と、あられさん…少し遅れて源が来た……
俺は、皆に挨拶だけをして…大人しく、仕事をしていたんだ…
あられさんが、源と仲直りした様で安心した。
と。――外に車が何台も入って来た。
それは…気付いてから……一瞬の出来事だった……
ガラガラ――扉が開くと…メディアの人々が、雪崩込んできたんだ…
ヤバいっ!――俺は、咄嗟に立ち上がった。
逃げるのでは無く、店に迷惑を掛けない為に……
満留を守る為に……
わーわーと、俺に質問を投げ掛け…マイクを突き付けてくる。――
調度、源のご飯を運び出て来ていた満留に一人がぶつかった!――「きゃっ。」 ガシャーン
満留が、倒れた……
源が、慌てて…満留を立たせた……そのまま、俺の方に来て……
「お前なーっ!」 と、俺を殴る。――
「源ちゃん!止めてっ!美月は悪くないっ!」
満留が、源に怒鳴った…あられさんも源を止める。
俺は、切れた口をトレーナーで拭い…益々、がなり立てる奴らに……
「お願いですから、出て下さい。――俺も行きますから。――出てってくれよっ!」と、叫んでいた。
店の外に、全員が出た。――
俺は、店の皆に向かい――「済みませんでした。」
頭を下げ……満留に向かい…声を掛け様とした…
「出てけよっ!早くっ出てけ!二度と迷惑掛けに来るなよっ!満留に怪我までさせてっ!」
源が、怒鳴る……見ると満留の額に血が流れていた……直ぐに駈け寄りたかった……
源の言葉に行けない自分がいた……迷惑掛けた…
「源ちゃん!止めて――美月。大丈夫だよ。ねっ。なーんにも…心配ない。大丈夫。」
満留が微笑み。――俺に優しく言った。
俺は、頭をもう一度、深々と下げた……両目から涙が溢れる。
店先の奴らに…家に戻り、質問に答えると伝え……
車に同乗させられた。――
俺は……「だるま食堂の住人」では…なくなった。
自宅に着き、ストーカー騒ぎからの質問攻めにあった。――買い物に出た街で、俺を見掛けた人が、運悪く…満留を知っていた様だ……
俺は…怒りを抑え質問に淡々と答える。
仮面を被り…何も感じずに――そうじゃ無いだろ?
満留は…言った……「悲しいつくった笑顔は、して欲しくない。」 と……
俺は、満留に逢い、変わったんだ……
人を本気で愛し……強い意思を持ったんだろっ!
「大丈夫。なーんにも…心配無い。」――
満留の言葉は…私がついているんから…ねっ。
と、言ってくれてたんだ……
「どうして、あちらのお店に…?――店の方とのご関係は…?」
メディアが騒ぎ立て…訊く
息を深く吸った……頭の中で…満留の大好きな…
夏の潮風を感じる……
俺は、満面の笑顔で答えた……
「――俺がやっとの思いで手に入れた。堪らなく、大好きな…愛妻です。」
――俺は、心のままに話す……
「離れて居られないから…俺。一緒に住む為に、行ってました。ハハッ…」 照れて……
「俺…満留――あ…女房の名前です。…の前では、滅茶苦茶、「甘えた」で…いつも…怒られてばっかりなんです…ハハハッ。」
真っ赤になり…
「もし…俺達を見掛けたら…満留って声を掛けてみて下さい。きっと…俺が惚れ込んだ…飛び切りの笑顔が返ってくる……大好きな笑顔が…ねっ。」
俺も、飛び切りの笑い顔で言った。――
その後は……勿論。大騒ぎだった。
「良い顔!」 満留の声が聞こえた気がした。
その後…俺は、今後一切、小説家以外の仕事もしなければ、メディアに出る事も無い事を伝えた…
俺がした、結婚宣言は…意外な反応だった。
どうせ…バッシングの嵐だ。ほっておけばいい…
位に思っていたのだが……
「堪らなく、大好きな…愛妻」に……
世間は…萌た…?様で。――
「幸せそう。」と、言ってくれる人が多かった……
騒動をやっと…終了させた。――
俺の、マンションを空にするには……
満留の家では無理だ…
処分出来る物以外は、貸し倉庫に預ける…
これから、満留と決める別荘に送るまではだ。
服類だけを、満留の家には持って行けばいい。
さてー。仕上げだ!婚姻届を貰って来た。
実は…その足で…ハイビスカスの水着も、買ったんだっ。――
明日、俺は、満留の店に帰れる!
マスコミ騒ぎの夜、――俺は…満留の店が心配で、電話を掛けたんだ…
「ちょっとさー!いくら何でも…予告無し結婚宣言するか―!全く…クソガキッ!…恥ずかしくて……美月、無しじゃ、外も歩けないっ!――早く…帰って来て……ねっ。」
「……あーっ!満留を抱きたいっ!今直ぐ…抱きたいよ……満留。」
甘々のままかと思いきや……
「あのさー。それに…私。まだ女房じゃ無いけど。」
満留は…一転。又、苦情だ……
「だってー。言いたかったんだもん!――え…女房に…なるよね?満留……なるよね?」
「全国放送しといて…今更、違ってました…って言えないでしょ!美月の好きで良いよっ!はぁ……」
「うん。好きにするよ!約束したんだもん。」
「チッ!エラい、約束しちゃったよ……全く。こんな目に合うなんて……」
満留は…相変わらずのブツブツ病で…
俺は、多分。ずーと、満留の前では…「甘えた」なんだろう。―――
「だるま食堂の住人」に戻る為の帰路を行く。――
満留に聞いた最寄りの駅は…俺の降り立った駅ではなかった。――今だ…駅は不明だ……
タクシーを国道沿いで降りた。――海沿いを、歩いて行きたかった。
始まりとは違い…大きなトランクを引きながら……
「だるま食堂」の看板が潮風に揺れる。
俺は、庭のベンチに腰を降ろしてみる…
このベンチが俺の人生を変えてくれたんだ……
ガラガラ……
目の前には――愛する人がいた……
「お帰り…美月。」
満留が、微笑みながら……初めて俺に会った時の様に立っていた…
俺は……「満留。ただいまっ!」
駈け寄り抱きしめ…キスをした……
「会いたかったっ!ねえ、満留も、同じ?ねえっ。俺に会いたかった?」
「はぁ……はいはい。会いたかったよ。」
俺は、満留に纏わり付き……又キスをした……
「お客様…営業中なんデスがっ!」
言いながら…満留が顎で店を指す。――
「存じておりま……えーっ!……」
何と……店内から、いつもの皆が見ていたっ!
「ハハハッ。皆がね、美月を心配してたんだよっ。顔、見せに行こっ!」
「満留……言ってよっ!見られてたなんてさ。……照れるよ…俺。」
真っ赤な顔の俺を見て…満留は…
「ハハハッ。美月は、まだ、照れるのか…ハハッ。」
と、頭を撫でる。
ガラガラ――店に入る…先ず俺は……
「お騒がせして…」――言い掛けた…が…
漁師さん達が……
「兄ちゃん!会見。カッコ良かったぞっ!ハハッ。」
「おうっ。良い顔してたっ!」
「始めと終わりじゃ、別人の顔だっ!カッコ良かったぜっ!ハハハッ。」
と、笑いながら言ってくれた……
心配だった源が……
「テレビであんな事言われちゃなっ。もう…満留が幸せなら良いよ……。あられっ。今晩、飲みに付き合え!やけ酒だっ!」 言った……
「え…っ――つ…付き合ってあげても良いよ。私。」
あられさんが、満面の笑みで……ツンデレる…
俺は、又、この店に……この店の皆に……
愉快な気持ちで…体中がフワフワしていた。――
満留が…俺に…感動的な言葉を投げ掛ける……
「美月……コーヒー。」
そう。これで良いんだ……何も…誰も…ここでは変わらない……それが最高だ!
「うん。満留。アメリカンじゃないね。昔話の時間じゃない!――夜も眠られたら困るしねっ!」
俺だって、言う時は言うんだっ!
あられさんが、振り返り……
「勘弁しろよっ!こっちが照れるよ!幾つだと…」
「53歳だよ!」――満留がくい気味に言って……
「ハハハハッ。」――全員で大笑いした。
皆が帰り……満留と二人になった。
「満留……ゴメンね…結局、俺…迷惑掛け……」
「美月!お腹空いたねっ!何にする?」
満留は…俺の言葉を遮り訊く。
そんな言葉が、この店には必要の無い事を知った…
「勿論。――満留の豚汁っ!から揚げも。全ー部、満留にね。あーん。して貰うよっ。」
満留は…
「はぁ……いつまでも…甘えたじゃ困りますよっ!旦那様っ。」
言い。俺にキスをする。
「え…っ……旦那様って…何だよー。もー。え…」
俺は……今まで以上にデレデレして……
「あっ!満留。これ…今、書いて!直ぐにねっ!」
と、婚姻届を出し…自分のハンコも出した。
「今?ここで?…」――満留が驚く。
「そう。一緒に書きたくて…俺も書いてないんだ。本当は、ゆっくり二階で……って思ったけど…一分一秒後に満留の気が変わったら困るからねっ。」
俺は、早く二人の婚姻届が見たかったんだ…
自分の人生を変えた女と夫婦になれる証を……
「変われないよ!……全く…はいはい。書くよ!」
二人は、――出会い…静かな時を過ごし…ふざけ合い…ゆっくりとしたお茶の時間を共にした…
この、カウンターで婚姻届を書いた。
二階には…甘い思い出が多い……でも…
ここが一番、相応しい場所にも感じたんだ…
お互いに顔を見合わせ……長いキスを交わす……
相変わらずの美味しご飯を食べた…騒ぎ立てる俺に唐揚げだけは……満留が…あーん。してくれたっ!
俺は、鳥の雛みたいに、あーん。してパクパク食べたんだ…
満留は…「可愛いなー。」と、ほっぺにキスをした…
「……あーっ!フカフカに行きたいっ!もーっ!」
満留に張り付く俺を…
「早く、食べなさいっ!はぁ……大丈夫かね…」
怒りながら、満留は、首を振る。
何度となく…叱られながら、食べ終わり……
満留の入れる、美味しお茶をすすり…
「はい。次はねっ。別荘をチョイスしてみたから、選らぼうね。はい。」
俺は、タブレットを取り出し…満留に言い掛けた…
「ちょ…ちょっとさー。待ってよ!飴やガム買う訳じゃないんだからっ!――閉店してから、ゆっくりとさ。選ばせて……」
と…俺を遮る満留を、俺は、又遮り……
「駄目っ!閉店してからは……駄目だよ…だって…満留とフカフカでさ……だから……駄目だよ。」
モジモジと……言ったんだ…
「はぁ……先が思いやられる……全く…別荘だよ…別荘を買うってのに……もーっ!見せてっ!」
ブツブツ言い、タブレットをやけ気味にむしり取って…「全く……これから、幾らでも出来るじゃん!」
「で…満留っ!出来るなんて言っちゃ駄目だよー!一体において…」
「こらっ!ウルサいな……説教坊主っ!――もー!私、真剣なんだから、黙って仕事でもしてなっ。」
「えーっ!……二人で選ばないの?」
まだ、駄々をこねる俺に……
「私はね。ウチの旦那様が私の選んだ場所にしてくれるのが解ってるのっ!――凄っい。…愛されてるから……ねっ。」
……出たよ。ねっ。が…俺は、目を見てしまった…
満留を抱き寄せ……深く…甘いキスをした……ら!
最後。止まらなそうだから…キスをした。
「そう…全部。満留の好きにすれば良いよ。」
と……満留の真似をした…
仕方がなく……でも、カチカチと順調に仕事をこなしていく。
満留は、見た事も無い程、真剣な顔でタブレットを見つめている。
数時間が経ち、――キリが付いたので手を止めた。
満留は、一人で何かに深く頷き……俺を見た。
「決めた!ここにするっ。」
タブレットを俺に渡した……
予想外だった。――満留の選んだ場所は……昔、リゾート地として栄えたが…ブームも過ぎ去り、今では…ストリップや怪しげな店が立ち並ぶ繁華街と…古びたホテルや民家が犇めく様な、――海も飛び切り綺麗とは言い難い地で…少し先に別荘が海沿いにポツポツ有る中の一つだった。――勿論。安い。
「えっ?――海が、綺麗じゃないよ…店は有るけど…日本の百貨店とかも無いし…買い物とか…良いの?」
俺は、満留が…海外では暮らし易い様な、高級リゾート地の、滅多な人が来られない所を選ぶと、思っていたんだ…
驚く俺に…満留はキラキラした目で言う……
「興味が湧くよ!昼間から開けてる、いかがわしい感じのバーにも、土地の人が共に暮らす所にも!」本当にワクワクして…
「日本の百貨店?冗談やめてよー。私はね、海外でも、行った地の人達と同じ物を食べ。同じ店で買い。朱に交わり生活をするって決めてるの!」
満留は自分で頷き……
「一歩、入った時から、日本の経済レベルは、捨てる!普通の人々と同じ感覚でいたい。せっかく、日本じゃ無い所に居るのに…その生活を味わいもせずに…日本の百貨店なんて…そんな詰まらない所に行ってる時間が勿体ないよ!ねっ。」
ねっ。は…好きだけど……
エラい事に巻き込まれそうだな……
「ちなみに、私、バックパッカーだったから!」
満留は…アッサリと言って除けた……
えーっ!聞いてないょ…それで……アジアの地か…
「あの……俺…鼠とか…芋虫は…食べれないよ……」
俺は、段々……しり込みをしていた……
「ハハハッ。私も食べないよ!普通だって。土地の人達と同じ屋台で食べるのは…最高に美味いよ!」
市場と同じだ……満留の話しを聞いてると……行きたくなるんだ…見て…同じ体感をしたくなるっ!
「よし!決めよっ。」――俺は…覚悟した…!
「本当に……良いの?美月…日本の生活は、出来ないよ……」
「満留が…俺を…「悲しいつくった笑顔」から、救い出してくれたんだ。――俺だって…同じ思い。満留には、今みたいなキラキラした笑顔でいて欲しいんだよ。」
だって…今の俺は……
「満留が笑って…一緒に居れば、俺は、いつだって笑顔でいられる。――満留の興味が無い場所で、普通の生活をしたって…俺もつまらないんだよ。」
と、思うんだ……
「私……世界一の幸せ者だ……」
涙ぐむのを隠そうと、下を向いた表情に…
堪らない…愛しさを感じた……
「満留……」
迫ろうとした俺に……
「旦那様!営業中デスがっ!――ハハハハッ。」
言い……いつもの満留に戻ってしまった…
「存じております…奥様っ!チェッ。ハハハッ。」
俺達は、満留の決めた別荘を買った。
そこからの、夏は、忙しかった。――
俺のテレビ発言の影響も有ったと思われるが…騒ぎになる事はなかった……
皆は、騒がずに…見守ってくれたんだ…
「満留…?」 彼女を見掛けた人達が声を掛ける…
満留は…始め…少し照れた様にして……その後…
飛びっ切りの笑顔を見せた。
俺には……
「あ…美月だ!お手伝いしてる…幸せそうだねー。」
と、声が聞こえる程度で…ニヤニヤする位だった…
昼間からお客さんが、絶えず来た。「満留。」と…
庭には、ビーチパラソルを立てた、テーブルまでが設置され…
暑い中でも豚汁は飛ぶ様に売れる。
俺は、勿論。あられさんや源までが、店を手伝う。
「美月、忙しかったら良いんだよー。自分の仕事してなよ。」
満留が声を掛けてくる……
「嫌だ!満留と、一緒にお手伝いするんだ。俺。」
俺は、大きな声で返す……
お客様が、顔を見合わせ…「本当に甘えただね。」
と、クスクス笑う……
満留が、肩をすくめ…皆に向かい…飛び切りの笑顔じゃなく……苦笑する。
「はぁ……はいはい。好きにすれば良いよ…全く!」
仕事をしてない訳じゃ無い…こうしながらも…アイデアやストーリーを組み立てている。
ここに居れば無限に仕事は捗るんだ……
あられさんが、沢山の豚汁を持ち、歩いて来た……
「あられ…重いから俺が運ぶよっ!」
源が…あられさんに言う。
「あ…有難うっ!」
あられさんは嬉しいそうに微笑む。
……へーっ。そんな感じなの……?
あられさんに、近寄り……
「良かったねっ!」 俺は、言う。
「美月のお陰!有難うねっ!嫌だっ!照れるよっ!」
バシッ!と俺の背中を引っ叩いた……
いやいや……俺みたいに…大人しく、照れてよ……
お盆を過ぎる頃……賑わいは収まって来た…
夜のお客様も減り。――俺も定位置で仕事が出来る様になった。
カチカチと、――仕上げに掛かる。
有り難い事に…俺の小説も順調に売れ続けている。
送信……終わった。――隣で、大人しくコーヒーをすすっていた、満留をフッと見た。
満留は、こっちを向いて…じーっと、俺を見てた…
「えっ……?可愛い顔して、どーしたの?」
まだ……言うんだよ……俺。
「ハハ。夏になって、考える暇も無く今まできちゃったけど…こんな素敵な人が私の旦那なんだな…」
満留は…優しい笑顔を見せる……
「な…何だよ。いきなり……」 照れていた…
「手伝いまで、して貰って…愛されてて…こんなに、幸せで良いのかな?私は。ってさ…」
「俺……楽しかたよ!お手伝いして…こんなに、楽しかった夏は…久しぶり!」
「美月…これからだよ!今度の日曜は…休んで、海だよっ!お弁当持って……」
「ほ…本当に!やったー!じゃあ、明日の朝は…市場デートして、浮き輪を買うよ。」
「だから。沈むって…」 満留は苦笑した……
俺は、忙しさに忘れていた事を思い出し言った…
「満留!俺、水着を買ったよ!」
「ほぉ。ピチピチのビキニか?」
「ち…違うよっ!満留と、同じハイビスカスの!」
「あ…ゴメンね…私のヒマワリだった……」
「……えーっ!じゃあ、俺もヒマワリ……」
「ハハハッ。ハイビスカスだよ。同じ!」
「満留。今夜は……」
「はいはい。覚悟してます。旦那様!ハハハッ。」
俺のほっぺにキスをする。
「覚悟してるなら良いけどさ……ヘヘッ…」
いい加減。デレデレしないっ!……俺。
9月に入り、10日には、満留に薔薇を54本送ってお祝いした。――満留は照れながらも…喜んでいた。
俺達は、クラゲに注意しながら…9月の半ば位までは…海で遊んだ。
二人とも真っ黒に日焼けして…
10月に入り…満留の選んだ別荘に行く。
身軽な旅だ。大きな、荷物の運び込みは、終わっていた。――
「服なんかね、殆ど、あっちで買えば良いよ!」
満留が言ったので…簡単な荷物にハイビスカスを二人で持ち、旅立った。
機内で、満留が…「毎年…この時期になると…人が減って、寂しくなったの。冬の事考えると憂鬱になった……神経痛も出るし…ハハッ。こんなに、秋が楽しみだったのは……何年ぶりだろう…」
独り言の様に囁く……
「私…店をやる前…死にたくなった時期があった…生きてて……良かったな。――美月に、逢えたから…ねっ?」
ねっ?と、ニッコリ笑う。
この顔にやられたんだ……俺が綺麗な顔…って思っていたら…ニッコリとした時、可愛いに変わった…その時に俺は、可笑しくなり出し…魅せられた……
「本当に…良かった。満留に、逢えて。」
俺は、言い……満留の手を握った……
現地に着いた瞬間から…本当に満留は厳しかった…
「タクシー拾うね。」 俺は、言う。
「駄目!バスと、ここの乗り物で、行くよ!」
と、こうだ……
終いには、ヒッチハイクで……やっと別荘に、たどり着く……
俺は、疲れていた…が…
「うわー!素敵っ。最高!美月!私達の新居だよ!入ろうっ。うわー!」
見た事も無い程に、はしゃぐ満留を見ていたら…
愉快になってきた!
「カッコ良いねっ!ねえっ!満留!見て!見て!海だよーっ!うわー!」
さすがの満留も…
「はい。荷物、片付けるよっ!」 とは、言わず……
「ねえっ!凄い!最高ッ!ハハハッ。」
二人で手を繋ぎ……海に向かい全面がガラスに、なった部屋に立ち、興奮した。
そこからの、毎日は…厳しい満留の方針で……
自転車を買い……近所をまわる…
市場で、買い物をしたり、屋台でご飯を食べた…
尻込みををしていた俺だったが……
その生活が意外な程、性に合っていたんだ!
小説のネタも環境の変化に刺激され……
どんどん浮かび、書けた……
ここでも…満留の言った通りだったんだ……
屋台で現地の人々と隣同士で食べる物の全てが美味しくて、最高だった…
「でしょーっ!」 満留が得意げに言う。
毎日、通う俺達に、挨拶の声が、掛かる様にまでなってきたんだ…
人々の生活の中に有る…笑顔の素晴らしい事っ!
俺は、今まで、いかに詰まらない旅行をしてきたのか……と、痛感した。――
夜は波の音を聞きながら……満留を愛し……
「もう、1回駄目?」 発情期は…止まらない…俺。
朝……波の音で抱き合う二人は目覚め……
自転車で、南国の風を肌に感じ…市場に、向かう…
ハイビスカスの水着で、海に戯れ二人遊ぶ…
そして。――6月の始め頃。
一ヶ月先の、繁忙期を、店の仲間の笑顔と共に、
経て……
夏のわずかな残りを、満留と二人で……
あの、大きな夕陽の海で過ごすのを楽しみに…
「だるま食堂の住人」に……戻りる為……旅立つ。――
俺は、定位置に座り…携帯を手にする…
タイトルを入れた。――「だるま食堂の住人」と…
「いらっしゃいませー。」 満留の明るい声が響く。
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