見出し画像

【SUUMO×クックパッド×RoomClip】 5大トレンドから考える、コロナ以降の暮らしと住まい

東日本大震災をきっかけとして2011年に立ち上がったRoomClipは、今年で丸10年を迎えました。この節目に取り組んでいるのが、新たに設立した住文化研究所を中心に進める「暮らしと住まいのリサーチ」です。

この10年間、少子高齢化の進行や激甚化する災害への対応などによって、人々の生活は大きく変わりました。さらに今は新型コロナウイルスの影響もあり、より変化が加速しています。暮らしと住まいのトレンドは、今後どのように推移していくのでしょうか。

住文化研究所設立発表会とあわせて実施したオンライントークセッションでは、株式会社リクルートで 『SUUMO』編集長を務める池本洋一さんと、クックパッド株式会社Japan執行役員の影山由美子さんをお招きし、RoomClip執行役員の川本太郎がモデレーターとなって、「衛生志向」「食」「おうち時間」「在宅ワーク」「収納」の5つのテーマについて語り合いました。

画像10

(登壇者 右から)
◆池本 洋一さん
株式会社リクルート 『SUUMO』編集長
◆影山 由美子さん
クックパッド株式会社 Japan執行役員/Komerco事業責任者
◆川本 太郎 (twitter : @taro_kawa_RC)
ルームクリップ株式会社 執行役員/RoomClip住文化研究所 所長

コロナ禍で高まる「衛生志向」が住環境を変えた

川本:RoomClipではユーザーさんのアクティビティについてのさまざまなデータを蓄積しています。今回は、コロナ禍において顕著な変化が見えたデータをもとに5つのテーマを挙げました。まずは「衛生志向」の高まりです。RoomClipのデータでは2020年3月以降、マスクと除菌アイテムに関連する投稿・検索数が、ともに急速に伸びています。

画像1

画像2

池本:この写真を拝見して驚きました。マスクがお洒落なインテリアとなっているんですね。

川本:私もこの写真を見て「玄関にマスクをぶら下げるスペースを作るのはアリだな」と思いました。工夫して玄関に除菌スペースを作っている例もたくさん見られます。また、コロナをきっかけに加湿器や空気清浄機、掃除機などの家電製品を買い替える人も増えていますね。こうした衛生志向の高まりによって、住まい選びにも影響が出ているのでしょうか?

画像11

池本:私たちはユーザーさんへのアンケートとともに、供給事業者さんへのアンケートも取っています。共通して重視しているポイントの1位はワークスペースですが、次に来るのが、どちらも衛生志向なんです。住み替えを検討している人はもちろん、プロダクトを作る側にも大きな影響を与えていますね。

川本:住宅の供給事業者サイドとしては、衛生志向の高まりへどのように対応しているのでしょうか。

池本:マンションであれば、共用部の除菌は必要不可欠となってきています。加えて事業者さんが取り組んでいるのは「タッチレス」への対応です。オートロックを開ける際や、エレベーターに乗る際には、どうしてもボタン操作が必要ですよね。そうした部分をタッチレスで操作できる設備の導入が、分譲マンションはもとより、賃貸物件でも盛んになってきています。

1人用ニーズの一方、「家族みんなで作る」レシピも人気に

川本:クックパッドの影山さんは、食の観点から、衛生志向の高まりをどのようにご覧になっていますか?

影山:料理の領域では、季節的な食中毒に対する衛生志向がずっと定番としてあるんですね。加えてコロナ禍では大勢で食卓を囲むシチュエーションが減少し、1人用に小分けをする料理や商品が増えています。2020年末には「1人用のおせち」も話題となっていました。また、おうち時間が増えたことによって、家族で楽しめるレシピを探す方も増えていますね。

画像12

川本:RoomClipの調査でも、「おうちでご飯を食べる頻度が増えたか」という設問に対してイエスと答える人が86パーセントに上っています。できるだけ手間と時間を省きたいと考えつつも、キッチン家電や食器のコーディネートにこだわり、なるべく豊かな食生活を送りたいと考える人が増えているように感じます。

画像3

画像4

影山:人間って、創造に満ちていると思うんですよね。ずっと衛生にばかり気を取られていると息苦しくなってきて、料理を通じて心を豊かにしていきたいと思うのが人間なんじゃないかと。クックパッドでは、コロナ前に人気だった「作り置き」系の検索が落ち着き、お子さんと一緒にお菓子を作ったり、お好み焼きなど家族みんなで作ったりするためのレシピが人気となりました。

川本:キッチンやダイニングに関するこだわりも変わってくるでしょうね。

池本:これはコロナ前からそうなんですが、人気のキッチンのタイプが緩やかに変わってきていますね。日本ではいわゆる「対面カウンターキッチン」が王道でしたが、先ほどのお話のように、「より効率的に作れるキッチンを」という志向に変わりつつあるのではないでしょうか。例えば壁にいろいろな器具をかけられるようにしたり、キッチンの向かいではなく並びにテーブルを置いて出し入れを効率化したり。こうした変化が、コロナ禍でより加速しているという感があります。

画像13

RoomClipで注目されている「おうち○○」とは?

川本:次のテーマは、今の話につながる部分でもあります。「おうち時間」投稿で見えてきた暇つぶしの再定義や再構築について考えてみたいと思います。2020年は「おうち○○」として、ステイホームでさまざまな活動をすることに関心が集まっていました。RoomClipが調べている中では、コロナをきっかけに新しく始めたこととして圧倒的に多いのが「料理」。また、家の中での運動やダイエットなどの「宅トレ」や、DIY、ガーデニングなどに関心を持つ人も増えています。

画像5

影山:コロナ以降はZoomを活用したオンライン料理教室も盛んですよね。私自身も、普段料理をしない一人暮らしの女友達からの依頼で、Zoomをつないでパーソナルレッスンのようなことをしています。

川本:個人間でもそうした動きが増えているのかもしれないですね。住環境としては、家の中のアクティビティスペースを充実させていく動きもいろいろ起きているのではないでしょうか。

池本:東京の場合は住宅空間が狭いので、限られた場所にどうやってテレワークスペースを作るかが最初は課題となっていました。ここで一番目立ったのはバルコニーですね。仕事はもちろん、おうち時間全体を楽しむために、バルコニーというスペースをどう活用していくのか。事業者さんからの商品供給でも、バルコニーの幅を広げるといった変化が起きているんですよ。

画像17

「雑音を遮るワークスペース」としてクローゼットを活用する例も

川本:興味深いですね。今話題に上った在宅ワークも本日の重要なテーマの一つで、RoomClipのデータとしても顕著な変化がありました。面白い写真を取り上げると、例えば押し入れをワークスペースに改造したり、リビングダイニングにワークスペースを作ったりといったものがあります。先ほどはZoomの話も出ていましたが、オンラインでつながるようになり、家の中をカメラで映すことが当たり前になってきている中で、住環境や設備もどんどん変わっていくのではないでしょうか。

画像6

画像7

池本:多くの人が気づいたこととして、音の問題があると思います。オンラインの会議では、「いかに雑音を遮るか」が重要じゃないですか。そのため、住み替えをする人たちの多くは、遮音できる環境をいかに作るかを真剣に考える傾向がありますね。ちなみにワークスペースって、1.5畳から2畳ほどのスペースがあれば事足りるんですよ。例えばウォークイン・クローゼットのスペースも活用できる。そうした工夫も増えてきています。

川本:みなさん試行錯誤して、設備に手を入れなくても済むところから工夫を始めているんですね。ちなみに影山さんは、在宅ワークにどのように対応していますか?

画像17

影山:私は、たまたま数年前にダイニングの壁を変えていたんですよ。白壁から、ちょっとダークな色の壁に変えたので、背景としてはうまく活用できています。ちなみにクックパッドではリモートワークを開始してから、ワーキングチェアやデスクを必要とする社員へ会社が貸与しているのですが、もともと入れる予定のなかったデスクとチェアなので、配置などに苦労している人も多いですね。

川本:たしかに、「異物が来る感」はありますよね。会社と自宅のワークスペースとしての接続も、今後は課題になっていくのかもしれません。

コロナ以降のキーワードは「災害に強い住環境」「備蓄」

川本:続いては「収納」、そしてセットで考えるべき「整理整頓」について取り上げたいと思います。収納に関しては、以前からRoomClipではずっと人気トピックなんです。中でも最近特に注目されているのは食品をストックするための収納。買い物の頻度が減り、食品や日用品をストックする量が増えたことにより、それを置くための場所についても試行錯誤が始まっているのかな、と思います。

画像8

画像9

影山:料理にまつわる家事の時短という観点で、割と論点になりがちなのは「食洗機の設置場所」ですね。ビルトインされているものならいいのですが、後付けの場合だと、キッチンの収納能力にかなり影響を与えてしまうことがあります。キッチン家電でも便利で魅力的なものが増えていて、「うちにもほしい!」と思うんですけど、設置や収納も含めて計画的に考えないといけないので難しいですよね。

画像16

川本:たしかに、キッチン家電はここ数年、魅力的なアイテムが増え続けていますね。おうちごはんへの関心の高まりと合わせて、RoomClipでもキッチン家電へのリサーチを深めていきたいと思っています。ちなみに池本さんは、住環境と収納について、最近感じている変化はありますか?

池本:大きな変化としては「アウトストレージの利用」が広がっていることが挙げられると思います。自宅の空間に限界があるなら外部を活用しよう、という発想ですね。また備蓄の話で言うと、たしかにストックするべきものが増えてきていると感じます。家にいる時間が長いことに加え、台風や地震など災害リスクへの備えの意識も高まっている。最近の分譲マンションでは、マンションとしての備蓄能力を以前より強固に打ち出して販売するケースも増えています。

画像17

川本:そうですよね。話題としては新型コロナでかすみがちですが、2010年代の住環境の大きなテーマは、激甚化する災害への対応だったはずなんです。備蓄への意識の高まりもそうですよね。コロナによる変化を経て、そうした部分への注目がさらに高まっていくことになるのかもしれません。RoomClipとしても、SUUMOさんやクックパッドさんという業界の大先輩から知見をいただきながら、今後もリサーチを深めていきたいと思います。

関連情報

このオンライントークセッションに掲載されているデータの掲載元調査レポート:新型コロナで変わった暮らしと住まい:前編後編

RoomClip住文化研究所のwebサイトはこちら

お問い合わせはこちら


この記事が参加している募集

おうち時間を工夫で楽しく