スポーツと眼について ~メガネは運動ができない証明ではない~
【前置き】
今回は‘‘目‘‘とスポーツを関連付けた研究を紹介します。「メガネ君は運動ができない」という偏見を持っている小中学生は多いと思います。でもその偏見は間違ってます。あることをすれば、運動能力向上につながるはずです。
【本題】
スポーツに関する目に能力というと動体視力、視野などですね。何かしらのスポーツをしている皆さんはご存じだと思います。ほかにも様々なスポーツに生かされる機能があるのでご紹介します。
静止視力 ➡ 一般的に、「視力」と呼ばれるもの
KVA動体視力 ➡ 前後方向に動いている目標を識別する能力
DVA動体視力 ➡ 横方向に動いている目標を識別する能力
コントラスト感度 ➡ 明暗の識別
深視力 ➡ 前後の距離感覚
瞬間視 ➡ 瞬間的に多くの情報
眼球運動 ➡ 動くものを目で追う
手と眼の協応動作 ➡ 視覚情報を素早く手で反応(もしくは足)
周辺視力 ➡網膜における周辺部で感受する刺激に対する視機能
視覚化能力 ➡次に起こる状況をイメージにより視覚的に予測する能力
アメリカの視機能の連盟によるとしたのスコアのように重要度が位置付けられています。スキーなどは除き、目の大切さは 球技>非球技 のようです。
ほかにも野球、サッカー、バスケとかも載っているので見てください!また、自分が関わっている競技に「この視機能、本当に必要?」と感じるものがあったら是非教えてください!
*2)の論文参照して作成しました↓
じゃあ他の競技は目を使わなくていいの?、そんなわけはありません。たとえばバスケなら「目で追えないほど速いボールはあまり来ない分、パスやシュートするためのリングや味方の位置を把握するための距離感をつかむ力がより求められる」というように必要な能力に特化する、という形になります。
ちなみにテニスは「ほぼすべての視機能をまんべんなく使い、それぞれに高い能力が求められる」という感じです。
部活動をしている中高生の皆さんは自分の競技の視機能重要度を今日はぜひ覚えていってください。「目」とひとくくりにするのではなく、分別することで練習中の「気づき」や「意識を向ける方向」に役立つことがあります。
上のグラフは文部科学省の統計調査で「裸眼視力1.0未満の者」の割合を年代別に表したグラフです。これを見ると年々視力が低い児童、生徒が増加傾向にあります。視力低下(近視の場合)の原因は学習時間の増加,読書時間の増加,テレビ視聴距離2m未満),睡眠時間の減少,外遊び時間の減少,テレビ視聴時間や電子ゲーム接触時間の増加などが関係しているとなど報告がありますが正確な関連性についてはまだわかりません
また、静止視力と動体視力には正の相関がみられます。
つまり視力が高い人は動体視力も高く、視力が低いと動体視力も低い傾向があるということです。
何が言いたいかというと「視力低下させる習慣が競技力低下につながっているかもしれない」ということです。特に中高生の皆さんにこの情報は届いてほしいと思います。
反対に、自分が見た研究の中に眼鏡やコンタクトを調節、新調したところ競技成績が大幅に伸びた。以前より速いボールが見えるようになった。という事例があります。アスリートのレーシック手術もその例ですね。
また、視力は20~25歳でピークを迎え、それ以降は低下していきます。ですが成長させることはできます。野球のチームで2軍(若い選手)の視力は1軍(ベテラン集団)より高いが、KVA動体視力(前後方向の動体視力)はベテラン選手のほうが高い。という事例もあるように、訓練次第です。
【最後に】
なぜかボールが取れない、早いボールに対応できない、といった人やお子さんがいらっしゃったら「才能がない」「苦手だから」と思う前に目に関心を向けてみてはいかがでしょうか。今回は視機能に対するアプローチは予防程度のものしか紹介していないですが、この記事の反応が良ければ視機能向上トレーニングなどを紹介しようと思います。
〈参考文献〉
1)和田ら ジュニアテニスの視機能と球技能力に対する研究
2)清水ら スポーツ競技者の視覚認知とパフォーマンスとの関係 ―バドミントン選手の動体視力とパフォーマンス変数を指標とした検討―