緑青あい

はじめまして 緑青(ろくしょう)あいと申します 物語を創るのが好きで小説を書いてい…

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はじめまして 緑青(ろくしょう)あいと申します 物語を創るのが好きで小説を書いています アルファポリスでも作品を投稿しています 不定期のスローペースで更新していきます 反応は鈍いですがよろしくお願い致します

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物語は要りませんか?-新作についての補足文-

【住劫楽土】の物語を書き始め、【鬼凪座暗躍記】の二作目が終わりました。 読んでくださった方々に、まずは心より感謝申し上げます。 ただ、【住劫楽土】シリーズは漢字量が多く、文章が堅く、内容が重いため、読者の皆さまの中には、とっつきにくい印象を持たれる方も、多くいらっしゃると思います。 そこで、箸休め的に、新たな取り組みをすることに決めました。 以前から温めていて、まだ文章化していない作品の『あらすじ』だけを、この場でご紹介してしていきたいと思うのです。 その名も【物語

    • 【鬼凪座暗躍記】-決別・前編-『其の壱』

      《……鬼灯揺らぐ、六斎日、    泥梨へ誘う十二使鬼……》  戊辰暦十三年の厳冬、北方多聞区・勢至門町『八椚宿』界隈では、六斎日というと決まって気の狂れた物乞い女が出没、街中を徘徊するようになった。  俗に、『黒姫狂女』と呼ばれるこの女。  歳の頃二十六、七。継だらけの喪服姿で、波打つ黒髪は長くザンバラ、垢染みて身形こそ小汚いが、相貌は色白端整な細面だった。  所作も立居も上品なため、元は良家のご息女でないか、と市井の民からは噂されていた。  とくに悪戯するでもな

      • 物語は要りませんか?-あらすじ②-【ダリア】

         仲郷薫は27歳の会社員。職場のひとつ年上の先輩・内海璃子に恋心を抱いていた。  生真面目で完璧主義の璃子は、仕事に一切の妥協がなく、他の同僚からは煙たがられていたが、薫だけはいつでも璃子の味方だった。明るく素直で社交的な薫は、他の女子社員にも好かれていて、「内海さんのことはあきらめな」と、忠告も受けていたが、それでも璃子に告白し続け、そして毎回のように断られ続けていた。  そんなある日、薫は璃子がダリアの花束を抱えて、雨の中を歩いているのを目撃する。  よほど大切な人

        • 【鬼凪座暗躍記】-五悪趣面-『其の七』(最終話)

          「始末がついたようだぜ、朴澣」 「存外に上手くいったな。拍子抜けだ」 「なにを云うか。すべては、有能な座長の筋書き通りじゃろう? そう、謙遜するな」 『吾も今回は、随分と働かされたな……』 「まぁ、一番の功労者は、この私ですがね」  呑気に談笑しつつ、高欄下の惨状を一望する本物の五殺鬼は、【鬼凪座】の面々である。  今回もやはり、裏で糸を引いていたのはこの五人だった。  それぞれ得意の扮装で筋書き通りの演戯をこなし、己の役どころを語り始める。 「允蕉慙……この

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        物語は要りませんか?-新作についての補足文-

          【鬼凪座暗躍記】-五悪趣面-『其の六』

           真志保は、すぐそばで聞いた狂人の嗤い声に、青ざめ震え上がり、カチカチと歯を鳴らした。濃霧は相変わらず、呼吸器官に張りつくような密度で、重苦しく圧しかかってくる。  視界はまったく利かず、手探りながらここまで逃げて来るのが、やっとだった。  閻魔堂と男四人から、かなり遠ざかったつもりが、存外近場で放たれた狂声に、狡猾な女狐からも、勝気な癇症など綺麗さっぱり消し飛んでしまった。  真志保は胸の鼓動を抑え、今はとにかく、無事ここから逃げきる方法を、模索するのに懸命だった。

          【鬼凪座暗躍記】-五悪趣面-『其の六』

          【鬼凪座暗躍記】-五悪趣面-『其の五』

           掌酒族の老爺【三界薬師の爾圭】は、胸のつかえに咳きこみ、石塔の影へと身をひそめていた。  濃霧のせいで、視界はまったく覚束ないが、石燈篭の薄明が道標となり、ここは石段登り口付近の馬の背だろうと、己の居所に見当をつけていた。  他の四人は、どこへ逃げたものか。老年の弱った足腰では、彼らのように俊敏な遁走は叶わない。喉の渇きにあえぎつつ、せめて気付けの酒があればと、考えていた爾圭。  そんな老爺の耳へ、不意に間近から、小川のせせらぎが聞こえて来た。  爾圭は重い腰を上げ

          【鬼凪座暗躍記】-五悪趣面-『其の五』

          【鬼凪座暗躍記】-五悪趣面-『其の四』

          【火伏せの玄馬】は、腰帯に差した投げ手斧をかまえ、用心深く濃霧をかき分けて進んだ。  どこかで男の悲鳴がしたようだが、気のせいだろうか。  それにしてもなんの因果で、こんな制裁を十年後の今、受けねばならぬのか?  自問自答を繰り返す玄馬は、疲弊した足を休めるため、手探りで巨岩に腰を降ろした。  赤い蓬髪を汗に濡らす小悪党は、震える手で煙管に煙草をつめ、閻魔堂での凶変を思い返しては、あれこれと考えを廻らしていた。 「十年だぞ……!? クソッたれがぁ! どういう仕掛けか

          【鬼凪座暗躍記】-五悪趣面-『其の四』

          【鬼凪座暗躍記】-五悪趣面-『其の参』

          【楊匡隼】は走り疲れた濃霧の中、かすかな悲鳴を聞いた気がして、思わず身をすくめた。 「なぜだ! 十年も経って、今更……俺がなぜ、こんな目に遭わねばならぬのだぁあ!」  劫貴族の判官は、疲労困憊で地べたに伏し、顔を覆って慟哭した。  最早、高家出身者の自尊心など、微塵も感じられぬ弱々しさだ。 「崔劉蝉……俺は、お前がうらやましかった! お前の持つ人徳、地位と名誉……そしてなにより、美貌の妻女【凛華】殿が、欲しくて、欲しくて、たまらなかった! だから俺は……」  劉蝉に

          【鬼凪座暗躍記】-五悪趣面-『其の参』

          【鬼凪座暗躍記】-五悪趣面-『其の弐』

          ……此度の六斎日を持ちまして、我が主人の命日も十回忌を迎えます。生前一方ならぬ宿縁を頂戴致しました貴殿にも何卒、法要への御列席を賜りたく、いささか不調法とは思いつつも、筆を執らせて頂きました次第…… 『急啓 允蕉慙殿……光陰矢の如しとは申しますが、巧みな妄語讒言を用い、我が主人を謂われなき罪に貶めましたる貴殿が、今や鬼憑き罪人をあぶり出す神祇大臣配下の六官吟味方として、御活躍されるさまを見るにつけ、世の無情を感じずにはいられません……』  髭面壮年の聖真如族文官は、板床に

          【鬼凪座暗躍記】-五悪趣面-『其の弐』

          【鬼凪座暗躍記】-五悪趣面-『其の壱』

           急啓 狐火の真志保殿  此度の六斎日を持ちまして、我が主人の命日も十回忌を迎えます。生前一方ならぬ宿縁を頂戴致しました貴女にも何卒、法要への御列席を賜りたく、いささか不調法とは思いつつも、筆を執らせて頂きました次第。光陰矢の如しとは申しますが、巧みな小手先使いで偸盗を生業にしていた貴女が、今や老舗呉服問屋の後添えに納まり、女将の手腕をふるうさまを見るにつけ、世の無情を感じずにはいられません。我が主人も草葉の陰で臍を噛み、さぞや怨嗟に赤く染まった血の泪をぬぐっていることでし

          【鬼凪座暗躍記】-五悪趣面-『其の壱』

          物語は要りませんか?-あらすじ①-【雪化粧】

           藤崎万里は苦労続きで育ち、何をやっても上手くいかない23歳のフリーター。  父の不倫で両親は離婚、母は万里に執着し、どんどん支配的になり、生活のすべてに指図した。それが嫌で、母と激しい口論になり、彼は母を突き飛ばし、そのまま家出した。  だが、居場所を隠し、独り暮らしを続けて一年後、友人から母が自殺したと聞かされる。  万里は自分を責め、未来を悲観した挙句、ある冬の日、ついに自殺を決行。  睡眠薬を持ち、雪山に足を踏み入れる。  ところが、そこには先客が。宮森冴子

          物語は要りませんか?-あらすじ①-【雪化粧】

          【鬼凪座暗躍記】-最期の宴-『其の九』(最終話)

          ――さぁさぁ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい! 巷説世間を騒がせた、神出鬼没の夜盗一味【刃顰党】が、ついに捕縛されたよぉ! 影の功労者は『七宝屋』の生き残り! 発狂死したはずの宅守だってよぉ! この宅守、後難を恐れて、気が狂れたフリをしてたらしいんだが、刑部省に匿われ、身の安全を保障された上で、到頭【刃顰党】捕縛につながる重大な情報を明かしたそうだ! ところがどっこい情報に従って、刑部省配下治安部隊と、左衛士府の軍部が共同で向かった『十六夜亭』! ここで見つかった七人は、な

          【鬼凪座暗躍記】-最期の宴-『其の九』(最終話)

          【鬼凪座暗躍記】-最期の宴-『其の八』

           南方増長区・虚空蔵門町、吉隠宿の外れにある、清閑な三昧堂墓地。  昼尚暗い木立の一隅には、真新しい御影の墓石が並んでいる。その前でうずくまり、合掌する若い女は、近づく五つの人影に、ハッと振り向き立ち上がった。 「待たせたな、麻那さん。『十六夜亭』の方は、万事つつがなく、始末をつけて来たぜ」  最初に声をかけたのは、左半身が爛れた悪相琥珀眼の男、【癋見の朴澣】座長だった。 「あなたがたの身に、累が及ぶような不始末はありません。どうぞ、ご安心ください」 【夜叉面冠者】

          【鬼凪座暗躍記】-最期の宴-『其の八』

          【鬼凪座暗躍記】-最期の宴-『其の七』

          〔劫初内禁裏光禄王家本邸於父子邂逅之段〕 ――光禄王! 若さまがお戻りになりました! ――おおっ、待ちかねたぞ、圭琳! 無事でなによりじゃ! しかし寿命が縮んだわい! ――お久しぶりでございます、光禄王君。 ――なにを他人行儀な……哈哈。けどまぁ、此度は災難であったな、圭琳。まさか、悪友どもが夜盗一味として捕縛……いや、すでに処罰されたらしいのう。実は過日、左大臣・竜王から招請を受けてな、例の、愚息連中の父王六名も同席じゃ。愚にもつかん会合じゃよ。まったくもって、莫迦

          【鬼凪座暗躍記】-最期の宴-『其の七』

          【鬼凪座暗躍記】-最期の宴-『其の六』

          「……信じたく、なかった」  唇を震わすニセ圭琳の瞳から、大粒の泪がこぼれ落ちる。  そんな彼を、麻那がかたわらで支える。  圭琳はわけが判らず、怪訝な表情で、今にも泣き崩れそうなニセ者を凝視した。  すると男は泪をぬぐい、圭琳に驚愕の真実を明かしたのだ。 「私たちの、大事な父さんを、殺した貴様が、双子の兄だなんて……信じたくなかった!」  圭琳は一瞬、我が耳を疑った。ニセ者が放ったセリフを、しばらく嚥下できなかった。 「……双子の、兄……だと!?」  腑抜け

          【鬼凪座暗躍記】-最期の宴-『其の六』

          【鬼凪座暗躍記】-最期の宴-『其の五』

          ――皆さまがたには賢明なるご理解とご決断を頂き、あらためて敬服致します。また、かくも長く苦痛に満ちた会合へのご列席を賜りましたこと、かさねて深謝致します。後始末は我ら護国団におまかせください。決して、皆さまがたの名誉と体面、この英断を傷つけるような不手際は起きません。本日中にも、ことの決着がつくでしょう。 ――やむを得ません……自業自得です。 ――面白半分に殺された民草の無念を思えば、これ以上……奴らに甘い顔はできません。 ――せめて、この失態……秘密裏に処理して頂ける

          【鬼凪座暗躍記】-最期の宴-『其の五』