見出し画像

【公立高校】探究学習による先生方の変容のステップ Before・After紹介

これまでroku youのnoteでは、SELを取り入れたことによる生徒たちの変化を多く取り上げてきました。今回は、先生方の変容に焦点を当ててご紹介します。先生方が取り組みの本質的な価値を理解し、自走していけるようになれば、学校教育は大きくアップデートされます。本事例を、その姿にたどり着くヒントにしていただけますと嬉しいです。

沖縄県の公立高校において、探究学習を導入した当初と現在を比較すると、先生方の生徒への関わり方に大きな変化がありました。
大きな変化とは具体的にどういったものなのか、また、先生方にどのような変容が起きていったのでしょうか。

*前回の記事をまだご覧になっていない方は、ぜひこちらをご覧ください。

■先生方の大きな変化

〜「ふざけている生徒を注意しに行く」だけの関わり方から「積極的に介入」する関わり方へ〜

画像1

【Before】

関わり始めた当初は、探究学習の導入に対してすべての先生が「探究学習ってそもそも何?」といったような、一歩引いているような状態でした。
そのため、先生方の関わり方は「生徒がきちんと取り組んでいるか覗く」「ふざけている生徒を注意しにいく」といったことが中心となっていました。

しかし、 根底では"もう少し生徒に寄り添って自分たちができることをやりたい" という意欲を持っている先生も多くいらっしゃいました。議論を重ねる中で思いが伝播し、徐々に変容が見られ始めました。

【After】

回数を重ねるごとに、先生方に「グループワークへの積極的な働きかけ」と「コミュニケーションの質の向上」という変化が起きていきました。
「生徒に問いを投げかける」「話が停滞しているグループの様子を伺い、ファシリテーションし、つまずいている点や困りごとを共に解決する」というような、積極的に関わる姿勢が見られるようになったのです。

こうした変容は一気に起こったわけではありません。少しずつ小さな変化が積み重なり、結実したといえます。変容プロセスは下記の通りです。

<教員の生徒への関わり方の変容プロセス>
①ふざけている生徒を注意しにいく
 ▼
②注意する目的ではなく、支援する目的で満遍なく目を配る
 ▼
困っている生徒に「こんなふうにすればいい」といった断定的な声かけではなく、生徒の困りごとや意思、興味を引き出す質問をする

■先生の変容はどのように起こったのか?

先生の変容に重要なのは、どのようなことだったのでしょう。ここでは、roku youメンバーがどう働きかけを行ったのか、そのステップの一部をお届けします。

【roku youメンバーの働きかけ】
(ステップ1) 授業で生徒との関わり方を体現する
(ステップ2) ”先生に対して”関わり方を伝える
(ステップ3) 「助けて」と言い合える関係性を築く

1. 授業で生徒との関わり方を体現する

roku youのメンバーは主に3つのことを大切に生徒と関わるようにしていました。

1つ目は、フィードバック。
黙々と机間巡視するのではなく、生徒たちの「素敵だな」と思ったところに対して素直に「すごく面白いね」「いい視点だね」というフィードバックを行いました。

2つ目は、背中を押す・投げかけ。
うまくいっている子どもたちに対して、より思考が深まるように「こういう人に話を聞いてみたら?」「こういうところまでできるんじゃない?」と背中を押したり、次のアクションを支援するような投げかけを行いました。

3つ目は、ストッパーを外す・掘り下げる・整理する。
手が止まっている子や消極的な生徒に声をかけ、「何に困っているのか」聞いた上で、ストッパー(制約)を外していきました。また、選択肢が多くて迷子になっているような生徒には、「どこに一番興味を持っているか(ワクワクしているか)」を掘り下げます。さらに、思考がまとまっていない生徒には、整理するようなサポートをしました。

この3つの関わり方をroku youメンバーと先生方が行っていくことで、生徒に対してこうした関わりが重要なのだという理解が学校で広がっていきました。

2. ”先生に対して”生徒への関わり方を伝える

先生方とrokyu youのメンバーとで、「生徒とこういう関わりをすると有効」「こんな話に食いついていました」といった関わり方を共有していくことを大事にしました。roku youメンバーがきっかけをつくり、先生方と知見をシェアしていくことで、次の指導への意欲を高め、積極的に関わる先生方が増えていきました。

3. 「助けて」と言い合える関係性を築く

信頼関係がないと、「助けて」と声をかけてもらうことは難しいものです。roku youでは信頼関係を大事にし「何か困ったことがあったらすぐに教えてくださいね」と伝えていました。
時には「どう関わるか見ていてください」と、OJT的に関わり方をご覧いただき、指導に取り入れていただくこともあります。

先生方の関わり方が変容していくと、一つ一つのワークの進み方が明らかに変わりました。対話にエネルギーが向かい、生徒たちのプロジェクトが俄然進んでいきました。

画像2

■なぜこのアプローチを行ったのか

【図】教員マインドセット変容ステップ

当時、先生の授業中の生徒への関わり方は、ふざけている生徒を注意することだけでした。その背景には、先生方の様々な葛藤(「もう少し生徒に寄り添って自分たちができることをやりたいけれどできない」、あるいは「そもそもやり方が分からない」など)があることがわかってきました。

これを上記図の「教員マインドセット変容ステップ」と照らし合わせると、「自分の中の感情や思考に気づく」までは至っていたものの、「自分の感情や思考を(他者に)表現するようになる」まではできていない状態にあったと推測できます。

そのため、次なるステップとして「これまで伝えてこなかった、自分の感情や思考を表現するようになる」ためのアプローチを行いました。

「表現する」ことへのストッパーがなくなると、変容のサイクルがぐるぐると回り出し、少しずつ教員一人ひとりの「もう少し生徒に寄り添って自分たちができることをしたい」という行動が表れ始めました。先生方の姿勢が、生徒の困りごとや意思、興味を引き出す質問をするといった、積極的に介入する関わり方へと変容していったのです。

■【振り返り】rokuyouの関わり

<rokuyouが大切にしたこと>
・うまく学びを深められている生徒にも、うまくいっていない生徒にも現在の状態をきちんと聞く
・先生方に寄り添う(先生方の状況を聞き、対話をする)

同校の「総合的な探究の時間」では、うまく学びを深められている生徒にも、うまくいっていない生徒にも、現状をきちんと聞くあり方を大切にしました。

うまく学びを深められていない場合には、「なぜ進まないのか」「どうしてやる気が起きないのか」をヒアリングしました。やる気が起きていないことが悪いわけではありません。大切なことは、「なぜ今の状態が起きているのか」「どうしたらそれを乗り越えられるのか」のヒントを得ること。
そのヒントが得られるように、生徒へ「こうしたらどう?」「もしかしたらこんなことを大事にしているんじゃない?」といったファシリテーションやコーチングにつながる声かけを行いました。

また、先生たちに寄り添い、関係性を築くことも大切にしました。
先生方の状況を伺い困っていらっしゃる先生のご相談に乗ったり、困ったらすぐに教えてくださいねと声かけを行ったりしました。

<roku youが先生と対話を続けてきた内容>
・「生徒と話をしてみて回答しづらかったり、説明しにくいところはありますか?」
・「どういう困りごとが多く出ていますか?」
・「こういうふうに関わったらより話が広がりやすいですよ(深まりやすいですよ)」 など

先生とのやりとりを増やしたことで、現場の先生方とrokuyouの関係性はグッと深まりました。先生方と直接話したり現場の感覚を聞いたりしながら、フィードバックをすることで距離が近づき信頼関係が育まれ、先生の変容につながったと考えています。

【あわせてこちらもご覧ください】


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?