リーダーシップは全員に必要
[要旨]
外資系企業では、従業員全員にリーダーシップを求めますが、それは、全員がリーダーシップをもつ組織は、一部の人だけがリーダーシップをもつ組織より、圧倒的に高い成果を出しやすいからです。これは、外資系企業では、リーダーにはチームの使命を達成するために必要なことをやる人と考えられているためです。
[本文]
マッキンゼー・アンド・カンパニー・ジャパンOGで、経営コンサルタントの伊賀泰代さんのご著書、「採用基準-地頭より論理的思考力より大切なもの」を拝読しました。この本のタイトルは「採用基準」ですが、マッキンゼーでは、グローバルに通用するリーダーシップを持っている人材を基準に採用活動をしていることから、この本の内容は、そのグローバルに通用するリーダーシップについて書かれています。そして、伊賀さんによれば、そのようなリーダーシップは、リーダーだけでなく、組織の構成員の全員に必要だと説明しておられます。「日本人の多くは、『リーダーは、ひとつの組織に1人か2人いればいいもの」と考えています。
その他の人はあまり強い主張をせず、リーダーの指示に従って粛々と動く方が、組織全体としていい結果につながると考えているのです。(中略)このため、『組織においては、ごく一部の人がリーダーシップをもっていればいいのに、なぜ、外資系企業や欧米の大学では、採用面接や大学入試において、全員にリーダーシップを求めるのか』と不思議がられるのです。(中略)この質問に対する私の答えは極めてシンプルで、全員がリーダーシップをもつ組織は、一部の人だけがリーダーシップをもつ組織より、圧倒的に高い成果を出しやすいからです。(中略)本来のリーダーとは、『チームの使命を達成するために必要なことをやる人』です。
(仮に)プロジェクトリーダーである自分の意見より、ずっと若いメンバーの意見が正しいと考えれば、すぐに自分の意見を捨て、その若者の意見をチームの結論として採用するのがリーダーです。さらに、『そんな若造の意見を採用するなんて!』と不満を持つメンバーを納得させ、チームをまとめていくのがリーダーです。チーム内にリーダーが複数いることは決してマイナスではなく、むしろ、全メンバーがリーダーとしての自覚をもって活動するチームは、『1人がリーダー、その他はみんなフォロアー』というチームより、明らかに高い成果を出すことができます」(69ページ)
いわゆる「リーダーシップ」のある人が、仮に、組織の構成員全員であれば、みな、自立的、かつ、能動的に行動するので、そういう観点では、全員がリーダーシップをもっていることは望ましいということは、すぐに理解できます。そして、もうひとつ大切な観点は、リーダーは、「チームの使命を達成するために必要なことをやる人」ということだと思います。日本の会社の場合、組織の中で複数の意見が出た場合、足して2で割るような意思決定(いわゆる、ソーシャルコヒージョン)をしたり、上席者の意見に従ったりするということが、しばしば、行われます。
しかし、これは、組織の中の和を乱さないことが目的になっていて、必ずしも「チームの使命を達成すること」が目的になっているとは限りません。そして、私は、これまで、リーダーとは、組織を率いる役割と考えていたのですが、伊賀さんの本を読んで、「チームの使命を達成すること」もリーダーの役割として考えなければならないと感じました。組織を率いる役割だけに焦点を当てていれば、リーダーは1人でもよいと考えることができますが、「チームの使命を達成すること」もリーダーの役割と考えれば、全員がリーダーシップをもっていることが望ましいということが、よく理解できます。
2022/6/19 No.2013
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