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個別性と第一線の自律性が重要

[要旨]

セブンイレブンジャパンの実質的な創業者の鈴木敏文さんは、地域ごとの商品需要に応えるためには、第一線の自律性が重要だと考え、どのような品揃えをすべきか、アルバイトスタッフを育成したり、エリアマネージャーが情報を共有したりしています。したがって、同社の強みは、人材育成が鍵となっていることがわかります。


[本文]

今回も、前回に引き続き、慶應義塾大学大学院特任教授の高橋俊介のご著書、「人材マネジメント論-儲かる仕組みの崩壊で変わる人材マネジメント」を読み、私が気づいた部分について述べたいと思います。高橋教授は、セブン-イレブン・ジャパンの強さについて、同社の実質的創業者の、鈴木敏文さんの考え方である、「第一線での自律性」がポイントであると説明しておられます。

「ある海辺のコンビニエンスストアでは、晴れて暑くなりそうな日には、なぜか梅のおにぎりばかりが売れる。実は、この店は、船着場が近くにあって、釣り客が昼ごはん用に、朝、おにぎりを買っていくのだ。それで、暑くなりそうなときは、傷みにくいイメージのある梅干入りのおにぎりが売れるという理屈が成り立つ。そういう釣り客の心理を見抜いたアルバイトが、天気予報を見て、翌日、暑くなりそうだと、梅のおにぎりの発注量を増やし、それが売上増に貢献したという事例が、セブンイレブンでは、実際にあったそうだ。(中略)

セブン-イレブン・ジャパンの実質的創業者である、鈴木敏文氏は、昔から、地域性の強いコンビニエンスストアが、機会損失と廃棄ロスを減らすには、個別性と第一線の自律性が重要であると言い続けているが、まさに、アルバイトの店員が、それを実際に証明してみせたのである。セブンイレブンは、各店舗に、この考え方を徹底させるために、1,200人以上のオペレーション・フィールド・カウンセラー(OFC)と呼ばれる、全国に配置されるエリアマネージャーを活用している。彼らは、毎週、全国から東京に集められ、方針や事例の共有と考え方の浸透を図る。次に、OFCが受け持ちの店舗を、一軒一軒回って、アルバイトと直接対面しながら、ともに仮説検証を繰り返すのだ」(89ページ)

コンビニエンスストアの強みのひとつは、顧客の欲しいものが常に売っているという点ですが、それを実現するために、セブンイレブンでは、アルバイトスタッフを育成したり、OFCを通して情報やノウハウを共有したりしているということが分かります。すなわち、コンビニエンスストアの強みも、人材育成が鍵となっているということです。とはいえ、これも、一朝一夕で実現できるものではないということも事実です。私の知り合いのコンビニエンスストアオーナーから聞いたことですが、アルバイトスタッフに仕入れを任せられるようにするために、オーナーは、あえて、発注の内容に関しては、口を出さないようにしているそうです。

場合によっては、発注データが、明らかに過剰な発注になっていたり、逆に、過小な発注になっていたりすることもあるそうですが、それにオーナーが事前に気づいていても、それが誤りであることにスタッフ自身に気づいてもらうために、手を加えることはしないそうです。ただ、そのような過程を経ないと、鈴木さんのいう、「第一線の自律性」を実現することはできないのでしょう。このような事例からも分かるとおり、精度の高い経営を実践するためには、人材マネジメントの重要性が高まっているということに間違いはないようです。

2022/10/5 No.2121

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