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経営計画は夢を『逆算』して作る

[要旨]

経営計画は、自社が目指す10年後の姿を逆算し、現在、どういう活動をすべきかを明確にする役割があります。これを着実に実践していくことで、目指す会社に近づくことが可能になります。また、計画と実践した結果に差異が発生したときは、どこをどのように修正すればよいかということを示すモノサシの役割もあります。

[本文]

今回も、公認会計士の安本隆晴さんのご著書、「ユニクロ監査役が書いた強い会社をつくる会計の教科書」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、経理担当と財務担当は、内部統制の観点から、別の人が担わなければならず、もし、両者を同じ人が担当すると、例えば、顧客から売掛金10万円を回収しても、2万円を横領し、8万円だけ回収したと記録することが可能になるからだということを説明しました。これに続いて、安本さんは、経営計画の重要性と役割について述べておられます。

「経営計画には、2つの意味があります。将来に向けた経営者の『絶対にこれだけは売ってやる、という意思』と、行動のための『このような方策で売ればきっと売れる、という仮説』です。行動して結果を出さなければならない経営者にとって、経営計画立案=事前準備は、他人任せにできない最重要な仕事の1つです。また、経営者には、誰しも思い描く夢があるはずです。5年後、10年後にこんな会社にしたい、という夢です。コーポレートストーリーとか、ビッグピクチャーなどとも呼ばれます。

そういう5年後、10年後の姿にするためには、3年後、1年後、そして今日、現時点でどんなことをしていなければならないか、経営計画は、それを『逆算』して作るべきものとも言えます。5年間程度の経営計画を長期経営計画と言い、3年間のものが中期経営計画、1年間のものを短期経営計画、または、『予算』と呼びます。予算は、『未来予想図』と言い換えることができますが、それを頼りに経営の舵取りをすると、どんなことも1度は頭で思い描いているので、途中で危機がきても落ち着いて対処できます。

予算を作る行為そのものが、危機や多くのリスクへの対処法を含めた未来の経営のすべてを思い描くことなのです。予算を作らずに、無鉄砲に仕事をしても、どの程度仕事をすればよいのか、いったいこの程度で満足してもいいのか、どの程度不足なのかなど、比べるべきモノサシや目標がないと、判断のしようがありません。そのモノサシが『予算』です」(56ページ)

この安本さんの説明も、ほとんどの方がご理解されると思います。そして、経営計画にはいろいろな役割がありますが、その中で最も重要な役割は、経営者が描いている10年後の姿を逆算する役割だと、私は考えています。10年後の姿と、現在の姿は異なっている訳ですがら、当然、そこまで発展していくそれぞれのステージで、事業活動の内容も変わって行かなければなりません。そして、経営計画を作ることで、それぞれのステージでの活動の内容を明確にすることができます。

ところが、私がこれまで中小企業の事業改善のお手伝いをしてきた経験から感じることは、事業活動の内容を変えることを避けようとする経営者の方は少なくないということです。顕在意識の部分では、事業を発展させるためには、事業活動の内容を変えて行かなければならないということは理解できていても、潜在意識の部分では、「現状維持バイアス」のようなものがあって、従来の方法を変えることができないという状態を続けてしまうという会社は少なくありません。そこで、そのような会社が経営計画を作っても、計画倒れになってしまいます。

そして、そのような会社は、「経営計画を作っても、実際にそのようにはならないのだから、意味が無い」と批判をします。でも、本当はその逆で、10年後の姿になるための計画を遂行する意思が弱いために、経営計画が無意味になったというべきでしょう。では、そのような会社は発展ができないのかというと、私は、最初は、活動の変化をなだらかにすることで、変化できる機会を増やすことができると思います。たとえ少しの変化でも、変化できたという事実に着目すれば、次に、やや難易度の高い変化も可能にすることができます。いずれにしても、経営計画を作ることから始めなければ、自社を強い会社に変えて行くことはできません。

2024/1/7 No.2580

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