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そのさよなら、代行します:シナオリオ案#テレ東ドラマシナリオ

◆タイトル:さよならメッセンジャー


◆第一話:勘当娘のさよなら

◆主要キャスト
・三竿優斗(28歳)…主人公。さよなら代行業『さよならメッセンジャー』運営
・本山芽衣(22歳)…第一話ヒロイン
・本山照雄(53歳)…芽衣の父
・近所の主婦…本山家のご近所さん
・受付嬢
・医師


◆あらすじ

本山芽衣はポストに入っていたチラシ『さよならメッセンジャー』に電話をかけ事務所に行く。事務所にはさよならメッセンジャーこと、三竿優斗が居た。芽衣は、父子家庭で一人娘であった事、4年前に好きな男と駆け落ちして父親に勘当された事、今度、その男と結婚するので芽衣から絶縁のさよならを父親に届けて欲しいと優斗に依頼する。

10日後。優斗は、芽衣の父親・照雄が末期癌で瀕死である事を伝え、死ぬ前に一度だけ会いたいと書かれた手紙を芽衣に渡す。

二人で病室に行くと、昏睡状態の芽衣の父、照雄の姿が。父親に抱きつきながら泣く芽衣。すると、奇跡的に意識を取り戻した父、照雄が芽衣に「おめでとう…」と呟き、そして、再び昏睡状態に。
優斗は泣く芽衣に、照雄から手紙を預かっている事を伝える。手紙には芽衣の幸せを願ってやまない、愛情にあふれた父親からの言葉が綴られていた。
泣き崩れる芽衣。
病室から静かに出て事務所に戻る優斗であった。


◆シナリオ本編 案


〇マンションの入り口(夜)

仕事帰りの本山芽衣(22歳)、ポストを開ける。中にはチラシが何枚も入っている。雑に見極めて備え付けのゴミ箱に捨てていく。
一枚のチラシに手が止まる。チラシには『【さよならメッセンジャー】あなたのさよなら、代行致します!』との文字と電話番号が記載されている。

芽衣「さよならを代行する…?」

チラシを見つめ、暫く考え、スマホを取り出し電話をかける芽衣。

芽衣「もしもし。今チラシを見て電話をしているんですけど。はい。ええ。初めてです。ところで、さよならを代行するって、何ですか?」

入口で話し続ける芽衣。


〇オープニング


〇六本木にある雑居ビルの2階(昼)

芽衣「ここかな?」

チャイムを鳴らす芽衣。中から、三竿優斗(28)が出てくる。

優斗「はい」
芽衣「あの、私、昨日電話した本山と申しますが…」
優斗「だと思いました。どうぞ、中へ」


〇事務所の応接室(昼)

テーブルの上にはコーヒー。向かい合う優斗と芽衣。申込用紙を書き終わり優斗に渡す芽衣。

優斗「(申込書を受け取る)ご記入、有り難うございます。本山芽衣さん、22歳。お住まいは、葛西」
芽衣「ええ、婚約した彼と二人で暮らしています」
優斗「ご実家はどちらです?」
芽衣「(一瞬、躊躇して)埼玉県の秩父です。」
優斗「(芽衣の表情の変化に気付いて)最近、ご実家には帰っていますか?」
芽衣「(少し苛ついて)いいえ」

しばしの沈黙。芽衣を見つめる優斗。目線を外す芽衣。

優斗「本題に入りましょう。誰に、どんな『さよなら』を伝えればいいですか?」
芽衣「父に、絶縁することを伝えて欲しいんです」
優斗「親子の縁を切るって事ですか?」
芽衣「ええ」
優斗「どうしてお父様と縁を切りたいんですか?」
芽衣「それ、話さなければいけません?」
優斗「できれば」
芽衣「なぜです?」
優斗「今回のご依頼は縁切りですよね、それも、お父様との」
芽衣「ええ」
優斗「だとすれば、お話しいただいた方が円滑にお父様と『さよなら』できると思います。というのも、私が貴女のお父様にメッセージを伝える時、どうして貴女が縁を切りたいのか説明できたほうがお父さんに納得してもらえるので」
芽衣「(悩ましい顔で)うーん」
優斗「無論、どうしても話したくないということでしたらお話し頂かなくても結構です。ただ…」
芽衣「ただ?」
優斗「ただ、こういったケースの場合、『さよなら』の意志だけ伝えても、伝えた相手、今回でいうとあなたのお父様からメッセージを頂く可能性があります」
芽衣「仮に父からメッセージが来たとして」
優斗「はい」
芽衣「私は、それを読んだり聞いたりしなければいけないんですか?」
優斗「いいえ、あくまでも今回のご依頼主は芽衣さん、貴女になりますので拒否することは出来ます」
芽衣「拒否した場合は?」
優斗「お父様にメッセージを戻します。しかし、あまりスッキリしない『さよなら』になります、多分、お互い」
芽衣「…はい」
優斗「お話、頂けませんか?」
芽衣「(小さな溜息)…分かりました。実は私、父から勘当されているんです」
優斗「勘当って、お父様から絶縁されているってことですか?」
芽衣「はい」
優斗「お父様とは普段から仲が悪かったとか?」
芽衣「いいえ、一緒に住んでいる時は仲は良かったですが…。実は、4年前、駆け落ちを…」
優斗「4年前って、18歳で駆け落ち?」
芽衣「はい、父の希望を無視して駆け落ちしました」

以下、二人のセリフとともにと本山家と彼氏の思い出が回想される。

芽衣「私、一人っ子なんです。母は私が6歳の時に病気で死んでしまって。そこから父が一人で私を育ててくれて。中学高校と私立の進学校に通いました。父は、私の大学進学を望んでいたんですけれど。でも、17歳になった時に今の彼に会って」
優斗「彼というのは今一緒に住んでいる方?」
芽衣「はい。10歳年上なんですけど、出会った当時は彼、インターネットの会社を立ち上げたばかりで毎日夜遅くまで仕事して、お金も全然無い生活で。私、どうしても彼の力になりたくて、彼と一緒になると、父に言ったんです。父は猛反対で」
優斗「今の彼氏さんはその当時何と?」
芽衣「自分は待てると。ただ、私が待てなかった。彼のそばに居たい、彼の力になりたいという気持ちが強かった。あと、なんというか、運命を感じたんです、この機会を逃がしてしまったら、私、多分、一生後悔するって」
優斗「で、最終的に駆け落ちを」
芽衣「駆け落ちなんてしたくなかった。でも、どうしようもなかった。二人で住み始めから1年間、手紙も出したし電話もし続けた。彼と二人で父に許しを請いに何度も実家に行った。でも行くと、出ていけ、二度と顔も見たくない!ってひどくののしられて。戸籍まで抜かれたのが分かった時には大喧嘩になって」

回想、終了。

優斗「なるほど。でも、何故このタイミングで、さよならメッセンジャーのサービスをお使いになろうと?」
芽衣「来月、結婚式を挙げる予定なんです。それで、気持ちの整理をつけたいんです」
優斗「分かりました。では、本山さんのメッセージの内容を教えてください」
芽衣「(深呼吸して意を決する)『嫁に行きます。本当に、さよなら。二度と会わないし連絡もしない』とだけ、伝えてもらえますか」
優斗「本山さん、確認です。本当にそのメッセージで大丈夫ですか?」
芽衣「はい」
優斗「本当に、本当に大丈夫ですか?」
芽衣「大丈夫です!」
優斗「(芽衣をじっと見つめ一拍置き)承知しました。実家のご住所と、お父様の勤め先を教えて頂けますか?」


〇T「3日後」 芽衣の父親、照雄の勤務先の受付(昼)

優斗「だから、実の娘さんから正式に依頼を受けてるの!」
受付嬢「申し訳ございません、どのような理由であれ、弊社社員の個人情報に関わることはお教えできません。お引き取り下さい」
優斗「(机の上に紙を置く)ほら、これ、委任状!本山さんの娘さんからちゃんと貰っているんだ。本山さんが今、オフィスにいるかどうかくらい教えてくれたっていいでしょ?」
受付嬢「出来かねます。お引き取り下さい」
優斗「仕方ない」

一万円を受付嬢に渡す優斗。

受付嬢「何ですかこれ?」
優斗「これで何とか!本山さんが会社にいるかどうかだけでも教えて、お願い!」
受付嬢「(ひきつった顔で)これ以上ここに居続けるつもりなら、警察に通報します。どうか、お引き取り下さい!」
優斗「(苦々しい顔で)ハイハイ、分かりました!」

会社の正面出口を出る優斗。

優斗「やっぱり会社はガードが固いか。よし、秩父に行こう」


〇秩父の本山邸の前(夕)

タクシーを降りて家々の表札を見て廻る優斗。

優斗「住所でいうとこのあたり…。あった、本山さん。ここだ」

本山家の呼び鈴を何度も鳴らす優斗。

優斗「ん?」

異変に気付く優斗。平屋一軒家の雨戸が全部閉まり、埃がかかった状態。ポストはチラシで満たされている。

優斗のN「妙だな。人が住んでいる気配が全く無い…」

家の周りを行き来し、呼び鈴を鳴らす優斗。

優斗のN「(目を凝らす)電気メーターが動いていない。ここ、今、空き家だ…。」
近所の主婦「ちょっと、あなた、どなた?」

驚いて振り向く優斗。

優斗「はい?」
近所の主婦「あれ、芽衣ちゃんの彼氏さんとは違う人ね。本山さんの知り合い?」
優斗「(取り繕いながら)そ、そうですね。本山さんが出張に来られた時にお世話になって。今日、たまたま仕事で秩父に来たものですから」
近所の主婦「(少し怪しんで)でも、あんた、何で本山さんの家がわかったのよ?」
優斗「以前、家に招待されたことがあったんです」
近所の主婦「あら、そうなの!やだ、私、泥棒かと思ったわよ。家の前うろうろしているし」
優斗「怪しかったですかね。申し訳ございません」

偽の名刺を近所の主婦に渡す優斗。

優斗「私、三竿と申します。ところで、本山さん、お引越しでもされたんですか?」
近所の主婦「引っ越し?」
優斗「ええ、なんだか、シーンとしていて空き家になっている感じが…」
近所の主婦「あなた、本山さんの事、何も聞いてないの?」
優斗「ええ。本山さんから最近連絡が無くて。うちの会社の社員みんなが心配しているんですよ」
近所の主婦「そう…。」

考え込む近所の主婦。心配そうに見つめる優斗。

優斗「本山さんに何かあったんですか?」
近所の主婦「うん…。」
優斗「あったんですね」

あたりをキョロキョロ見回す近所の主婦。

近所の主婦「貴方、私から聞いたって絶対言わない?」                   優斗「言いません!」            近所の主婦「絶対内緒よ」
優斗「約束します!」
近所の主婦「本山さん、実は4ヶ月前から入院しているの」
優斗「入院?4か月も前から?」
近所の主婦「そうよ」
優斗「何か、重い病気になってしまったのですか、本山さん?」
近所の主婦「あれは重いと思うわ。私達も心配で2か月前にお見舞いに行ったんだけど…。あまり良くないみたい」
優斗「もし差しさわり無ければ、教えて頂けませんか、病名」

再びあたりをキョロキョロ見回す近所の主婦。

近所の主婦「これは人づてに聞いた話なんだけど」                    優斗「はい」
近所の主婦「絶対秘密よ。本山さん、癌なんですって」
優斗「癌…」
近所の主婦「それも、悪性らしいの、肝臓がん」
優斗「悪性の肝臓がん…最悪ですね」
近所の主婦「本山さん、本当に可哀想よ!一人で生活して一人で病気になって。そうだ、貴方、娘の芽衣ちゃんご存知?」
優斗「娘がいたけど出て行った、という話は1度だけ聞いたことがあります」
近所の主婦「そう。じゃ、芽衣ちゃんの居場所なんて分からないわよね」
優斗「ちょっと、分からないですね」
近所の主婦「幾ら喧嘩別れしたって言ったって、そこは親子でしょ。本山さん、いつどうなるか分からないし。芽衣ちゃん、本山さんと会った方が良いんじゃないかなって、私は思うのよ」
優斗「そうですね。すいません、もしよろしければ、本山さんが入院している病院、教えて頂けませんか。どうしてもお見舞いに行きたいんです」
近所の主婦「誰から聞いたって思われないかしら?」
優斗「会社の方から色々お聞きしたって事にしますので。どちらに入院されているんです、本山さん?」

〇T「7日後」 事務所の応接室(昼)

テーブルの上にはコーヒー。10日前と同じように向かい合う優斗と芽衣。

優斗「ご足労頂き有り難うございます」

優斗に現金の入った封筒を渡す芽衣。

芽衣「父にさよならを伝えて頂けましたか」

封筒を見て、芽衣に視線を移す優斗

優斗「はい。お父様に直接会って、間違いなく伝えしました」
芽衣「父は納得していましたか?」
優斗「はい」
芽衣「そうですか。お陰様でスッキリしました。本当に有り難うございました。では、失礼します」

上着を手に持って帰ろうとする芽衣。

優斗「本山さん、お父様からメッセージを預かっております」

びくっとしながら優斗を見つめる芽衣。両者、しばしの沈黙。

優斗「私は商売柄、お客様のプライベートな部分には立ち入らないようにしています。ただ、今回は例外です」

黙って優斗を見つめ続ける芽衣。厳しい表情の優斗。

優斗「本山さん、お父様からのメッセージ、ご覧になりませんか?」

怯えるように席を立つ芽衣。

芽衣「私の要件は終わりました。失礼します」

急ぎ足で事務所を出ようとする芽衣。立ち上がる優斗。

優斗「貴方のお父さん!末期の癌ですよ!」

事務所のドアに手をかけながら優斗の方を振り返る芽衣。

芽衣「え…?」
優斗「(諭すように)貴方のお父様、本山照雄さんは末期の肝臓がんです。それも、癌が全身に転移して余命が殆どありません」

ドアの前で硬直する芽衣。芽衣の前まで歩いて行き、芽衣の父・照雄の二つ折りのメモを芽衣に差し出す優斗。

優斗「お代は要りません。その代わり、お父様のこのメッセージ、見てもらえませんか?見た後は、本山さん、貴女にお任せします」

二つ折りメモを見つめる芽衣。じっと待つ優斗。沈黙のあと、メモを手に取り内容を確認する芽衣。メモには照雄が必死に書いた8文字が。

芽衣「死ぬ前に…あいたい…!」
優斗「メッセージを見て頂き、有り難うございます」

芽衣の目が涙で潤みだす。沈黙。じっと待つ優斗。

芽衣「…三竿さん」
優斗「はい」
芽衣「父は、父は、今、どこに居ますか?」


〇病院(夕方)

照雄の緩和ケア病室の前まで歩いて来る優斗と芽衣。

優斗「ここです。この中にあなたのお父様、照雄さんが居ます」


〇照雄の緩和ケア病室(夕方)

病室に入ってくる芽衣。ワンテンポ遅れて入ってくる優斗。                 優斗、室内にあるベッドの近くのソファーに座る。

芽衣「失礼します。(驚きで声が出る)お父さん!」

ベッドに横たわる照雄を診察する医師と看護師。照雄、酸素マスクをつけて昏睡状態。
照雄に駆け寄る芽衣。呆然と見つめた後、ベッドにしがみつく。

芽衣「(泣きながら)お父さん!お父さん!ごめんなさい、ごめんなさい、お父さん!」

父のそばで泣き続ける芽衣。落ち着くのを待つ医師。

医師「失礼ですが、ご家族の方ですか?」
芽衣「はい、私は、本山照雄の娘です!」
医師「良かった。本山さん、ずっと一人で治療されていていたから」
芽衣「父は、どうなんですか、先生?」

芽衣を見て、優斗を見て、再び芽衣を見て話しだす医師。

医師「ソファーの男性がここに来られたのが1週間前。その時は意識がはっきりしていて」
芽衣「はい」
医師「我々にも『まだ生きなければならない、死ねない』と仰っていました。恐らく、貴女がここに来ることを待っていたんだと思います。一時的にですが、回復傾向も見られました」
芽衣「じゃあ、父は、父は、助かるんですよね?ね、先生!」

芽衣を見つめ、静かに、ゆっくり首を横に振る医師。

医師「3日前から本山さんの病状は急激に悪化しました」
芽衣「え…」
医師「現状、手の施しようが、ありません。意識もなく、昏睡状態です。いつ、何があっても不思議ではありません」
芽衣「嘘よ、そんなの、嘘よ!」
医師「我々も出来る限りの事はしますが、今、こうして命を保っておられるのも奇跡に近い」
芽衣「そんな…」
医師「出来るだけ、お父さんのそばに居てあげてください。何かあったら、すぐにそこのブザーを鳴らしてください」

看護師に目配せして病室を出る医師。後に続く看護師。
父・照雄の手を取って泣く芽衣。静かに見守る優斗。

芽衣「おとうさん!私よ、芽衣よ!」

反応が無い照雄。子供の様に泣き続ける芽衣。

芽衣「おとうさん、そばに居るから、ずっとそばに居るから!」

反応が無い照雄。泣き続ける芽衣。

芽衣「治るから、絶対治る!おとうさん、おとうさん!」

泣きながら照雄を呼び続ける芽衣。
しばらくして、瞼を少し動かす照雄。
その変化にいち早く気付きソファーから立ち上がる優斗。

優斗「本山さん、お父さん、瞼、動いている!」
芽衣「え?」

照雄の顔をじっと見る芽衣。

優斗「本山さんの声に反応しているんだ!本山さん、もっと呼び掛けて!」
芽衣「おとうさん!私よ、芽衣よ!おとうさん!おとうさん!」

うっすらと目を開く照雄。顔を見つめる芽衣。芽衣の後ろに立つ優斗。

芽衣「おとうさん、芽衣よ!分かる?」

頷く照雄。泣きじゃくる芽衣。静かに二人を見つめる優斗。
暫く見つめ合う照雄と芽衣。照雄の眼には涙が。
そして、照雄の唇が動いていることに気付く優斗。

優斗「本山さん、お父さん、何か喋っている!」
芽衣「おとうさん!」

照雄の顔に近づく芽衣。口を動かしている照雄。
芽衣は照雄の酸素マスクを外し、照雄の口元に自分の耳を持っていく。

照雄「(途切れ途切れのかすれた声で)お…めで…とう…。お…めで…とう…。」
芽衣「(号泣しながら)あ、あ、ありがとう、おとうさん。おとうさん…。」

芽衣を見つめる照雄、一瞬笑みを浮かべた後、静かに目をつむって再び昏睡状態に。動転する芽衣。

芽衣「おとうさん!目を覚まして、ねぇ、もっと話したいよ!ねぇ!目を覚まして!おとうさん!」

酸素マスクを元に戻す優斗。優斗を見て、照雄を見つめて泣く芽衣。
脈拍計などの器機をみてから、芽衣に話しかける。

優斗「大丈夫、眠られただけです。力を振り絞ったのでしょう」               芽衣「…はい」

ジャケットの内ポケットから封筒を取り出し、芽衣に差し出す優斗。

優斗「本山さん、実は、もう一通、照雄さんからメッセージを受け取っています」
芽衣「えっ?」
優斗「本当は、自分が死んでからと照雄さんは仰っていたのですが、私の独断で、今、お渡しします。どうぞ」

震える手で封筒を受け取り、便箋を取り出す芽衣。
便箋には弱々しい照雄の字が並んでいる。

芽衣「芽衣へ。すまなかった。許して…欲しい…。ふたり、幸せ…に…なるん…だよ。ずっと…母さんと…ずっと、お前たちを…見守って…いる…から」

照雄の手を取り号泣する芽衣。

「おとうさん!ごめんなさい。おとうさん!さよならなんて、したくないよ!!おとうさん…!」

泣き続ける芽衣。しばらく見つめ、その後、病室から出る優斗。

病院の廊下に芽衣の鳴き声がかすかに聞こえる。

泣くのをこらえながら、病院の廊下を歩く優斗。


〇エンディング

(了)

※文字数が足りない場合は、本山照雄の所在を調べるために同僚がよく行く居酒屋でリサーチするシーンと、入院場所が分かって三竿優斗が病院を訪ねるシーンを加えていきたいと思います。


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