わんちゃんの気持ち（を読める女）

　犬の気持ちは人間にはよくわからない。何かを訴えかけているというのがわかる時はあるが、具体的に何を伝えたいのかはわからない。それでは何もわからないのと一緒だ。しかし、世の中にはごく希にではあるが、犬の言葉を完全に理解する人間もいる。

「そうねえ。このわんちゃんはとても賢いわんちゃんだわ。飼い主さんに何か伝えたいことがあるみたいね。どれどれ、えー、そうなの。どうやら散歩に行こうと言っているみたいだわ」
「そうだったんですか。もうそんな時間か」
「そうみたいよ。他にも聞いてみましょう。そうなの。飼い主さんをもっと外に連れ出したいと言っているわ。少し運動不足のようだとみているわ。道に出たら途中でしるしをいっぱいつけたいと言っているわ。へー、そうなの、会いたいわんちゃんがいるのね。それで早く散歩に行こうと言っていたのね。まあとてもお利口さんね。ふむふむ、えー、そう。途中でコンビニに寄るのもいいと言っているわ。飼い主さんがアイスを買うなら、その間は外でおとなしく待っているから大丈夫だよと言っているわ」

チャカチャンチャンチャン♪

「ありがとうございます！　早速散歩に出かけたいと思います」
「えー、そうね。あなたはそうするべきよ。だって、わんちゃんがこんなに待ち望んでいるのだから。えー、そうなの。風をあびたいの。流れる風景が好きなのね。はい、はい、なるほど、気分を変えてみるのもいいわね。今日はもっと遠くへ行ってみようと言っているわ」
「そうですか。最近同じところばかりだったから」
「そのようね。また聞いてちょうだい。通訳料は安くしておくわ」

#犬 #通訳 #創作 #読み

#小説 #散歩 #ショートショート

#本音トーク

#スペック

#エッセイ